大和古伝、桜花姫ヨシノの物語 (ヨシノ姫とアマノウズメの外伝♪)後編
ムーンライズ
(5) 桜花姫復活!!女神の愛は全てを癒す・・・
悪のナマコが成敗され、浜辺に元の静けさが戻っていた。だが、哀れなるかヨシノ姫は、激しい陵辱と恐怖で正気を失ってしまっていた・・・
「はうう・・・やめて・・・わたしをたべないで・・・おねがい・・・イジメないで・・・」
全身をヒクヒクと震わせ、虚ろな眼で横たわるヨシノ姫の手を、深い悲しみの涙を浮かべて握りしめているアマノウズメ。
「・・・ヨシノちゃん、ごめんなさい・・・私がもっと早くあなたに気付いていれば、こんな事にはならなかったのに・・・ごめんなさい・・・」
ヨシノ姫がいる事に、もっと早く気付いていればよかったのに・・・
それに、ナマコを侮って虐待した事がそもそもの要因でもある。全ては自分の責任だと、アマノウズメは自分を責めた。
でもいくら自分を責めても、ヨシノ姫の汚れた身体は元に戻らない。
彼女を元に戻すには、アマテラス、スサノオ、ツクヨミに匹敵する、三主神並の神力が必要になる。
如何に大和でも高名なアマノウズメであろうとも、ヨシノ姫を元に戻すのは不可能だ。
無論、三主神に懇願すれば願いは叶えてくれるかもしれないが、こればかりは誰にも頼りたくないとアマノウズメは思っていた。
如何なる苦労があろうとも、ヨシノ姫を元に戻して見せる。これが彼女の想いだった。
「ヨシノちゃん、私があなたを助けてあげるから、必ず助けてあげるから・・・」
汚れない悲しみの涙が、ヨシノ姫の頬に落ちる。
その時、ふと・・・アマノウズメは自分の手が淡い光を放っている事に気付いた。
先程、聖なる声の主から授かった月の力が、僅かだが残っていたのだ。
少しでもいい、これでヨシノ姫を救う事になれば・・・そう思って、力の全てをヨシノ姫に注ごうとした。
すると・・・淡い光が徐々に強くなり、やがてアマノウズメの身体が再び金色に光り始めたのだ。
「これはなに・・・?使い切ったはずの力が、なんで元に戻るの?」
アマノウズメ自身も、理解できない事であった。
何にせよ、この力を使ってヨシノ姫を救わねばならない。ためらうまもなく、アマノウズメは月の力と、そして自分自身の神力を全て込め、ヨシノ姫に注いだ。
徐々にではあるが、確実に、ヨシノ姫の身体が元に戻り始める。
「ヨシノちゃんっ、大好きよっ・・・私の声に応えて・・・目を覚ましてっ・・・」
切なる願いを唱え、愛する友達を抱きしめ続けた・・・ずっと、ずっと・・・
どれぐらい時間が経ったであろうか・・・?
全身全霊で神力を使い尽くしたアマノウズメは、激しい疲労で気を失いそうになる。
「・・・ヨシノちゃん・・・よし・・・の・・・ちゃ・・・」
薄れ行く意識の中で、懸命にヨシノ姫の名を呼び続けていた。
そのアマノウズメの手を、ヨシノ姫が握り返した。
「・・・ウズメさん・・・?」
「あ・・・ヨシノちゃん・・・ヨシノちゃん!?」
一気に意識を取り戻したアマノウズメの目に映ったのは、美しい裸身を輝かせる、愛すべき友達の姿であった・・・
アマノウズメは己が目を疑った。あれほど汚されていたヨシノ姫が、完全に元の姿に戻っていたのだ。
身体も心も・・・そして純潔までも、全て元通りになっている。
これは夢か幻か・・・だが、ヨシノ姫の復活は紛れもない事実だ。
奇跡・・・そう、それはまさに奇跡であった。
「ウズメさん・・・わたしは一体・・・なぜウズメさんがここに?」
陵辱された時の記憶も消えているらしく、戸惑ったような表情でヨシノ姫はアマノウズメを見つめている。
そんな友達を、涙を流して喜びながら抱きしめるアマノウズメであった。
「・・・今は何も考えちゃダメよ。今夜は私が、あなたを思いっきり愛しちゃうんだから・・・♪」
「え・・・?いやあの・・・ウズメさん・・・あっ・・・そんなこと・・・ああ・・・もっと・・・」
美しい裸身で抱きあい、女神と姫君は愛し合った・・・
唇を重ね合わせ、そっと胸を撫であう。
ただ純粋に、熱き想いを委ね合い、愛を確かめる2人。
その睦み合いは、誰にも邪魔できぬほど神々しく、そして汚れないものであった・・・
ヨシノ姫とアマノウズメが愛し合う浜辺を一望できる岩場。その頂上に、1人の男が佇んでいる。
真っ黒な衣装と黒頭巾で身を固めたその男は、まさに(夜の存在)と言うべき者であった。
黒衣の男は、静かに、そして聖なる眼でヨシノ姫達の睦み合いを見守っていた。
「やれやれ、世話の焼ける奴らだ。」
そう呟き、背を向けようとした黒衣の男に、若く美しい女神が声をかけてきた。
「ツクヨミ、やはりそなたでしたか。」
声をかけてきた女神は、なんと、大和を統べる最高神アマテラスであった。
女神アマテラスを前にして、黒衣の男は黒頭巾を外して一礼する。
「これは姉上、お久しぶりです。」
黒頭巾の下から現れたのは、アマテラスと酷似する麗しき美青年の素顔。
アマテラスを姉上と呼ぶ美青年・・・
その正体はアマテラスの弟神であり、三主神の1人である月読之命であった。
太陽と昼を司るアマテラスと、月と夜を司るツクヨミ。
相反する地を統べる姉弟神が、なぜにこの場所にいるのか?
2人は、ヨシノ姫の危機を救うべく、別々にこの地に現れていたのであった。
先程、アマノウズメに月の力を与えた(聖なる声の主)こそが、ツクヨミだったのだ。
アマテラスは弟神に、この度の事の礼を述べる。
「ヨシノ姫を救ってくれたのは、そなたですわね。感謝しますわ。そなたがいてくれなかったら、ヨシノ姫を助ける事はできなかったでしょうから。」
そんな姉神の言葉に、愛想のない返答するツクヨミ。
「私はヨシノ姫を助けた覚えはありませんよ。アマノウズメがヨシノ姫を気に入っていたみたいなので、力をくれてやったに過ぎません。」
無感情で淡々と語るツクヨミであったが、そんな弟神の心の中を、アマテラスはすでに見抜いていた。
「まあ、そんな事を言って。本当は自分が助けに行きたかったけど、手柄を横取りしたらアマノウズメに悪いから、力を貸してあげた・・・そうでしょ?」
姉神に笑顔で言われ、溜息をついて本音を語るツクヨミ。
「そう思って下さってけっこうですよ。まったく、姉上に隠し事はできませんね。」
少し照れているのか、言葉も少なげだ。
そして、なぜかツクヨミは頻りに鼻を手拭いで拭いており、アマテラスはそれを気にして尋ねた。
「鼻をどうかしましたか?もしかして・・・鼻血?」
「あ、いえっ。なんでもありませんよ、なんでも。」
ごまかすツクヨミであったが、姉神の目はごまかせなかった。
「ははあ、アマノウズメとヨシノ姫の睦み合いを見て、鼻血を出してしまったのではありませんか?そなたは昔からそうでしたもの、純情さんなのは変わってませんね。」
「か、からかわんでください姉上。」
そのツクヨミの顔が、姉神に笑われて赤くなっているのであった。
夜の世界に身を置き、絶対なる正義と厳格なる裁きにて悪を滅するツクヨミ・・・
妥協を許さぬ徹底した厳しさゆえ、神々からも畏怖されているツクヨミであったが、本来の彼はとても心優しく、誰よりも愛を尊ぶ善の神なのだ。
その純情な振舞いこそが、ツクヨミの誠の姿。
優しさ変わらぬ弟神の姿に、アマテラスは微笑みを浮かべる。
「夜の平和はそなたの活躍があってこそですわ。これからも悪から民を守ってくださいね。」
「ええ、それが私の勤めでありますから。それにしても・・・」
ツクヨミは姉神に視線を移す。アマテラスは、なんと・・・鎧兜で身を固め、剣と弓で武装していたのである。
「姉上こそ、その格好はなんですか。戦神の真似事なんかして。いくらヨシノ姫を助けに来たからって、太陽の女神が真夜中に独りで大立ち回りなんかしたら、他の神々に示しがつきませんよ。」
「はいはい、その小言癖も相変わらずですわね。わらわだってヨシノ姫を助けたかったのですもの、少しくらい多めに見てくださいな。」
見つめ合い、笑い会う姉弟神・・・
「では姉上、私はこれにて・・・」
「ええ、また会いましょう。」
こうして、太陽の女神と月の神は元の場所へと戻って行った。
後には、浜辺にて身体を重ね合う姫君と女神が静かに眠るのみであった・・・
次の日の朝、寝室からヨシノ姫の姿が消えて、屋敷は蜂の巣を突っ付いたような大騒ぎになっていた。
酒を飲まされて爆睡していたタケノタツメが、大岩も吹き飛ばんばかりの声で悲鳴を上げている。そして他の侍女達も血相を変えて右往左往している。
「ひ、ひ、姫さまがいなぁいい〜っ!!ど、ど、どこにおられるのですか姫さま〜っ!?」
「は、早く姫さまを見つけないと・・・大変ですわ〜っ!!」
収拾のつかない状態で、懸命にヨシノ姫を探すが、いくら探してもヨシノ姫は見つからない。
そして昼前まで大騒ぎしていた一同は、疲れ果てて延びてしまった。
「ああ・・・姫さまは何処に〜?」
そんな侍女達の目に・・・浜辺で踊る、裸の女神と姫君の姿が映った・・・
「あ、あれは姫さまっ、それにアマノウズメさまっ?」
一糸纏わぬ姿で踊る2人を、侍女達も女兵士達も、呆然と見つめ続けた。
あまりにも美しく、そして汚れない裸体の舞は、あらゆる者を魅了するのであった・・・
その後、ヨシノ姫の休暇は、アマノウズメも加わって賑やかに、そして華やかに過ぎて行った。
自由奔放に生きるアマノウズメの影響もあって、真面目で融通の効かない性格だったヨシノ姫は、極めて開放的な性格になったのである。
何事にも積極的になったヨシノ姫。侍女のカレンとハルカ、そしてタケノタツメと女兵士達まで(スッポンポン)にしてしまった。
「みんなも、ウズメさんを見習わねばなりませんわ。嘘偽りなく、自分の全てを曝け出す事が大事ですのよ、隠し事は厳禁ですわ。」
「あ、あのおお・・・隠し事とスッポンポンは関係ないと思いますです〜。」
こうして一同は休み中、産まれたままの姿で過ごしたのであった・・・
そして休暇が終わり、ヨシノ姫一行は、桜の女帝である聖桜母の元に戻った。
聖桜母は、明るい笑顔のヨシノ姫を見て安堵の表情を浮かべる。
「まあ、随分と日に焼けましたわね。休暇は楽しく過ごせましたか?」
「はい聖桜母さまっ。おかげで楽しい休暇になりましたわ、こんなに元気になりましたし♪」
明るく笑うヨシノ姫の後ろでは、なにやら侍女達や女兵士達が心配そうに呟いている。
「ね、ねえタツメさん、姫さま元気になり過ぎちゃいましたから、ちょっと心配ですわ〜。」
「アマノウズメさまに感化されたのがマズイわよねえ。聖桜母さまの前で(とんでもない事)しなけりゃいいですけどお・・・」
彼女達が心配してる(とんでもない事)とは・・・
そんな一同の元に、1人の農夫が大慌てで飛び込んできた。
「せ、せ、聖桜母さまっ、桜花姫さま〜。オラの村を救ってくだせえ〜。日照りで山も畑も荒れ放題ですだ〜。」
枯れ果てた村に、萌えの力で緑を復活させる・・・これが桜花姫ヨシノの力だ。
早速、ヨシノ姫は村人を救うべく立ち上がった!!
「お任せくださいな、この桜花姫ヨシノが、あなたの村を救って見せましょう!!」
そう言うなり、いきなり(スッポンポン)になって舞踊り始めたのであった!!
大地が萌える、山河が萌える、精霊が萌える、そして天空が萌え、恵みの雨をもたらして、緑の萌えを促したのである。
アマノウズメから伝授?された可憐なる(全裸の舞)で、あらゆるものを(萌え)させ、見事に草木を蘇らせるヨシノ姫・・・
村人は目を(はーと形)にして大喜び。
「ありがとうごぜえますだ、ヨシノ姫さま〜。これでオラの村は救われましただ〜。」
これにて一件落着・・・と言いたいところだが・・・スッポンポンのヨシノ姫を見て、聖桜母は・・・目を点にして固まったのであった。
「・・・こ、これわどーゆーことですの・・・これっ。カレン、ハルカ、タケノタツメ〜っ。説明なさーいっ!!」
「きゃ〜っ!!こ、これは私達のせいじゃないですううっ〜。アマノウズメさまが・・・わ〜ん。」
心配してた事が的中し、聖桜母からたっぷりとお目玉を喰らう侍女と女兵士。
こうして・・・桜花姫の夏は華やかに過ぎる。
今日もまた、ヨシノ姫は桜花姫としての勤めを果たすべく、美しい(萌え)の舞を踊る。
そして、多くの人々を救うのであった・・・
大和古伝、桜花姫ヨシノの物語 (ヨシノ姫とアマノウズメの外伝♪)後編
お・わ・り♪
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