テッサリアの女王 3
宴の始まり
ムーンライズ
レイディアのいた部屋から、薄暗い階段を降りた地下室に宴の間はあった。 厚い壁に閉ざされたその部屋は、窓がひとつもなく、外部とは完全に遮断された密室 であった。10数m四方ある宴の間の隅に6本の赤々と燃えるたいまつが据えられ、宴 の間を照らしていた。宴の間の中央は、円形状に一段高くなっており、その上には、太 い木の柱が水平にぶら下げられている。 宴の間には、レイディアの下僕たちが20人ほど集まっており、部屋に入ってきたレ イディアを歓喜の声で迎えた。台の上にのぼったレイディアが、中央に立った。 「皆の者、今宵の生贄は罪深き魔女である。見るが良い。エルクスのリネアだ!!」 レイディアの前に立った2人の衛兵が、高々とリネアの体を持ち上げる。下僕たちの 間から、おぉっと言う声が上がる。レイディアはリネアを指差して叫んだ。 「この者は、己自身を太陽神の巫女と称し、多くの民どもを惑わせてきた。それのみ ならず、崇高なる前女王陛下を、卑劣な手段を用いて暗殺したのだっ。神をも恐れぬこ の所業、断じて許すまじ!!」 「おおっ、悪しき魔女、エルクスのリネアの所業、許すまじ!!」 レイディアは、なおも叫ぶ 「前女王陛下の怨念は、恐るべき災厄となりて、テッサリア王国の全土を覆い尽くす であろう。災厄を防ぐ手だては、ただひとつ。この邪悪なる魔女を生贄とし、前女王陛 下の魂を静めることであるっ。我等の手で、亡き女王陛下のご無念を晴らそうぞ!!」 「魔女に裁きをっ、我等の手で裁きを!!」 連呼する下僕たちの喚声が部屋を揺るがした。 「これより宴を始める。リネアを吊るせっ!!」 レイディアの声に、衛兵は天井からぶら下げられた木の柱の両端に、リネアの両手首 を荒縄で縛りつけた。そして、なおも抵抗しようとするリネアの美しい素足を鎖で縛る と鎖の端を床の金具にくくりつけた。 両手足の自由を奪われ、抵抗する全ての術を無くしたリネアの前に、レイディアは薄 笑いを浮かべながら立った。 「クックック・・リネア、どう?これから美しいその体を汚される気分は。どんなにあ がこうとお前に希望なんてありはしないのよ。この場で自分は魔女だと言うことを宣言 して、私に許しを請えば、苦痛を少しだけ和らげてあげるわ。」 レイディアはそう言うと、リネアの両肩に残されたブラウスの切れ端を、ゆっくりと 破り捨てた。 「わっ、私はあなたに許しを請うような真似はしませんっ、たとえ私の命があなたに 奪われようとも、私はあなたに屈しないっ、全ての正義と真実が私に味方するでしょう 。法があなたを許しても、神はあなたを許しませんっ、いずれ天罰が下るわ!!」 こみ上げる恐怖を、かろうじて振り払い、リネアはレイディアに抵抗した。 だが、レイディアは、そんなリネアのささやかな抵抗を一笑した。 「意気地なしのお嬢ちゃんだと思っていたけど、思ったより根性座ってるのね。まあ 、それぐらいのほうが痛めつけ概があるわ。先の女王候補の2人より、楽しませてくれ そうね。」 「・・えっ・・それは、一体・・」 「言ったはずよ、2人は私の生贄になってもらったって。2人ともヒイヒイ泣き喚いて 、わたしに許しを請ってきたわ。全てをあなたに捧げます、一生あなたの下僕になります 、だからお許しをってね。」 「あ・・あなたという人は・・」 レイディアの両手が、リネアのスカートを掴んだ。 「そして、お前は3人目の生贄となるのよ。この私の野望達成の為にね!!」 レイディアの両手が、リネアのスカートと、ショ−ツを同時に引き裂いた。それにより 、リネアの全身に残された全ての衣服が奪われた。 「あ・・」 美しく、気高いリネアの一糸纏わぬ裸身が、明々と燃える松明の炎に照らされた。 一片の染みも曇りも無い雪のように白い肌に、豊満な乳房、くびれたウエスト、しな やかな手足、成熟した肉体は17歳とは思えぬほどの見事なプロポーションであった。 天井から吊り下げられた木の柱に、両手を広げた状態で拘束されたリネアの姿は、ま るで罪人の十字架にかけられた、純真なる天使そのものだった。 下僕たちは、食い入るような目でリネアの美しい裸身に見入っていた。 リネアは、恐怖のあまり、全身が小刻みに震え、声を出すことも出来ない。止めど無 くあふれる涙が頬を伝い、白い胸の上に滴り落ちた。 涙に濡れたリネアの瞳に、下僕たちの血に飢えた顔が映る。リネアは正に野獣の群れ の中に放り出された、哀れな子羊だっだ。 リネアの傍らに野獣達の主、レイディアが、松明を片手に立った。 「まずは火攻めからよ。」 松明の燃え盛る炎が、リネアの胸の前に翳された。パチパチと飛び散る火の粉が、白 い肌に落ちる。 「あ・・熱いっ!!」 思わずのけぞるリネア。素足を縛っている鎖が、ジャラジャラと音を立てた。 「この程度で悲鳴を上げたら駄目よ。」 レイディアは、松明を左右に動かしながら、胸を炙った。炎がリネアの乳房を舐める。 炎が素早く動いているために、火傷こそしないまでも、その熱さは尋常ではない。産毛が チリチリと焼ける。 「ほらほら、下手に動くと大ヤケドするわよ。」 リネアは不意に、背中にも激しい熱さを感じた。いつのまにかレイディアは、もう片 手に松明を握り、リネアの背中を炙っていたのだ。 前と後ろから炎で責め立てられているため、身じろぎすることも出来ない。炎はさら に全身を舐め尽くし、リネアの素肌は見る見るうちに赤く火照っていった。 「火攻めはこれくらいね。」 松明を床に置いたレイディアは、後ろに控えている下僕に向かって右手を差し出した 。下僕は、うやうやしく一礼して、レイディアに黒い鞭を渡した。 「お次は鞭攻めよ!!」 レイディアの右手に握られた鞭が鋭く空を切り、リネアの背中を打った。 「うっ、ああっ!!」 鞭はリネアの背中に、胸に、尻に、太ももに、容赦なく襲いかかる。 「やっ・・やめっ・・う・・アゥッ・・いっ・・いたっ・・あっ・・あぁっ!!」 火攻めによって赤く火照った肌に、切り裂くような鞭の連打が浴びせられるのだから 堪らない。鞭に打たれるたび、短い悲鳴がリネアの口から漏れた。 「さあっ、もっとお泣き!!泣き喚いて、私を楽しませて頂戴!!」 狂気と快楽が入り混じった凄まじい形相のレイディアが、狂ったようにリネアを責め 立てた。 「もっと泣けっ、もっと叫べ!!苦しめ、魔女めっ」 周りの下僕たちも、レイディアの声につられて嬉々とした喚声を上げる。激しい鞭攻 めは10数分にわたって続いた。 「・・フッ・・もう声も出なくなったのね・・」 さすがに疲れたのか、レイディアは荒い息をついて鞭を床に放り投げた。だが、それ 以上にリネアの疲労のほうが激しかった。激しい鞭攻めで、全身にミミズ腫れが無数に 出来ており、悲鳴も上げられない状態で、ぐったりと首をうなだれていた。 「眠るんじゃないわよっ、宴はこれからなのよッ。」 リネアの頬にレイディアの平手打ちが飛んだ。 「う・・ん・・」 レイディアはリネアの前髪を掴んで顔を引き起こした。 「これを見なさい。」 リネアの眼前に金色の細長い針があった。20cm程の純金製の針だ。鋭くとがった 先端が不気味に光っている。 「毒蜂の女王・・このあだ名を、お前は聞いたことがあるかしら。」 「どくばちの・・女王?」 「私は裏の世界ではそう呼ばれているのよ。もっとも表の世界の連中は誰もこの名前 を知らないでしょうけどね。」 レイディアは、黄金の針をスッと下ろすと、リネアの胸の谷間に針の先端を軽く押し 当てた。そして、左の乳房の上に出来たミミズ腫れをなぞりながら、針の先を移動させ ていく。 「わが一族は、昔から裏の世界で幅を利かせてきたのよ。無論この私もね。政略結婚 をくり返し、初代女王の血脈を利用して巨万の富を得てきたわが一族は、富と共に様々 な闇の知恵も吸収した。毒薬、媚薬、その他の薬の調合法、そして拷問術。私はそれら を利用して、数多の人間を闇に蹴落としてきたわ。そして私はいつしか、毒蜂の女王と 呼ばれるようになったのよ。」 レイディアはしゃべりながら黄金の針の先端を左腕まで動かすと、そこで止めた。 「私は何人もの人間を拷問にかけてきたわ。だから、人間が最も痛みを感じるツボが どこにあるのか、全て知っているわよ。」 レイディアの口元に薄笑いが浮かぶ。 「さぁ・・味わうがいいわ、女王蜂の毒針をね。」 黄金の針がゆっくりと、リネアの腕に突き刺さっていく。 「う・・くっ・・あうぅっ」 傷口から鮮血が流れ、リネアの顔が苦痛に歪んだ。喉が枯れているため、声を上げる 事が出来ない。針は、なおも腕に深く食い込んでゆき、ついには腕を貫通してしまった。 レイディアは後ろを向くと、下僕が持っている四角い鉄の皿に手をやった。その上には 、まだ7本の黄金の針が乗っている。 「フッフッフ・・何本まで耐えられるかしら・・」 黄金の針を舐めたレイディアは、右腕に2本目の針を突き立てた。 周りの下僕たちは、恍惚とした表情で、静かに残酷なる拷問劇を鑑賞していた。宴の 間の中には、ただ、リネアの苦悶の声だけが響いていた・・ 「私の拷問をここまで耐えたのは、女ではお前が始めてよ。誉めてあげるわ。」 下僕に水のはいったグラスを受け取ったレイディアは、水を飲みながらリネアに向き 直った。 リネアの両腕、両手首、太もも、ふくらはぎに合計8本の黄金の針が、突き刺さって いる。それぞれの傷口からは、おびただしい血が流れ、床を赤く染めていた。 「わ・・私を殺したいのなら・・殺しなさい・・私が死んでも・・あなたは・・女王 になんかなれないわ・・テッサリアの民があなたを求めるはずは・・ありません。」 激痛に耐えながら、レイディアを睨むリネア 「まだそんなこと言ってられるのね。大した小娘だ事。その根性だけは見とめるわ。 まぁ、次の拷問に耐えられたらの話だけど。」 レイディアはグラスに残った水をリネアの頭にかけた。 「次の拷問は、大の男でも気絶する強烈なものよ。未だかつてこれに耐えたものはい ないわ。」 レイディアは右手の指をパチンと鳴らした。 先程の2人の衛兵が、何やら大きな箱を抱えて現れた。 箱は約1m四方の立方体で、全体が茶色の樹脂のようなもので覆われており、中がど うなっているのか、見ることは出来ない。箱の上には鉄製のレバーが取り付けられ、そ の脇に、6本の薄い樹脂でコーティングされたワイヤーが伸びており、ワイヤーの先端 には、それぞれワニ口のクリップがつけられている。 「これはね、古の文明を築いた古代人が使っていた(えれき)と言うものを発生する 箱なのよ。古代人はこれを使って明かりを点していたとか文献には書いていたわ。でも 私は、そんなつまらない事にこの箱を利用する気は無かった。学者たちに研究させて、 更に強力な(えれき)を発生するように改良したわ。何しろ・・私の知る限り人間の体 に最も苦痛をあじあわせることの出来るものは、この、(えれき)なのよ。」 レイディアの足元には、ネズミを入れた、鉄製の籠が置かれている。レイディアは、 箱のレバーを倒すと、ゴムの手袋をはめて、ワイヤーのクリップを手に取った。 「見るのよ、リネア、このすばらしい拷問道具の威力を。」 レイディアは、両手に持ったクリップを、籠の端に取り付けた。すると、籠から火花 が飛び散り、中のネズミが全身の毛を逆立てて暴れ出した。 「・・こっ、これは・・」 けたたましい鳴き声を上げ、かごの中で狂った様にもだえるネズミを見て、リネアの 顔から、見る見るうちに血の気が失せていった。 やがて、口からブクブクと泡を吹いたネズミは、体を痙攣させながら絶命した。台の 周りの下僕たちも皆、青ざめた表情になって息を呑んだ。 「さあ、次はお前の番よ。」 レイディアの冷酷な目が、リネアに向けられる。 素足と両手の指に、6つあるクリップのうち4つが取り付けられた。 「リネア、これが最後のチャンスよ。自分は魔女だと言いなさい。そして、私に許し を請うのよ。さもなければ・・」 残り2つのクリップをリネアの眼前にかざすレイディア。 「わ・・わたしは・・わたしは・・」 「わたしは・・なに?」 「わたしは魔女なんかじゃないっ・・」 リネアの最後の抵抗だった。だが、それがレイディアの怒りを増大させてしまった。 「バカな娘・・わたしを本気で怒らせたわね!?」 カッと目を見開いたレイディアは、2つのクリップで淡いピンク色の乳首をはさんだ。 「あっ・・」 ツカツカと箱に近づき、レバーを手にするレイディア。 リネアは恐怖に震え、懇願するような目つきになって、首を横に振った。 「ひっ・・いや・・いやあぁぁッ・・やめて・・やめてぇ!!」 リネアの恐怖が絶頂に達し、黄金の針で貫かれた激痛も忘れて手足を激しく揺り動か した。だが、両手足の自由を奪われている彼女には、無駄な抵抗だった。 「フン、今更泣きを入れても遅いわよ。死ぬがいいっ、リネア!!」 レイディアの声と共に、非情にもレバーが下ろされた。 「きゃああああっ!!いっ、いやあああぁああ!!」 クリップから、青白い火花が飛び散り、リネアの絶叫が辺りにこだまする。 「やぁめてええええぇっ!!おおお、おねがあああいいいっ!!」 全身が激しく痙攣し、白い乳房がビクンビクンと跳ねた。 リネアの苦しむ様を見て、青ざめていた下僕たちが再び歓喜の声を上げた。 「あははっ!!苦しむがいいっ、この私に逆らうものは、みんな地獄に落ちるのよッ 、あーははははっ!!」 再び鞭を手にしたレイディアが、悶え苦しむリネアの背中を鞭打った。 「さあ、言うのよ、自分は魔女だってねっ、そして、この私に許しを請うのよッ!!」 「ひいぃっ!!いっ、いいますっ、わっ、わたしはまじょですっ・・たっ、たすけて っ、ゆっ、ゆるしてっ・・ああああっ!!・・あ・・」 悲鳴が急に途切れ、リネアの首が前にガクンと倒れた。 箱のレバーを戻したレイディアは、気を失い、ひきつけを起こしているリネアを見る なり、勝ち誇った声を上げた。 「聞いたか、皆聞いたか!?魔女はついに我等の前にひざまずいたっ、正義は我等に ありっ!!」 「正義は我等にッ、レイディア様こそ正義なりッ!!」 レイディアの狂った野望の前に、リネアの純真な心は、あがらう術もなく引き裂かれ てしまった。もはや、レイディアの暴走を止める事は不可能となった。
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