皇国の姫君に忍び寄る陵辱の影(1)2

kinshisho


「う、うう〜ん、ここは一体……」
 長い間意識を失っていたのだろうか、ボンヤリした状態からなかなか戻れない。
 やがて意識を取戻すと、飛鳥姫の視界に何か見覚えのあるような光景が飛び込んでくる。だが、どうにも思い出せない。
「ここは一体何処なの?」
「お目覚めかな?飛鳥姫」
 飛鳥姫の目前に、突如見覚えのある男の顔が飛び込んでくる。そしてはたと思い出す。アスメイラ合衆国大統領、エイブラハム・ルーズウェルドである。
「な、何で私がここにいるのです?私は即位の礼のパーティーで京都御所にいたはず」
 ここが合衆国の最高意思決定機関 、アイボリーハウスであることを大統領の顔を見て思い出す。しかし、何故自分がここにいるのかわからない。
「キミがここにいる理由は一つしかないじゃないか。私がCIAに拉致するように指示したのだよ」
「なっ、ら、拉致ですって?!」
 拉致と聞いて聡明な飛鳥姫は全てを理解する。あの時視界が暗転したのはクロロホルムを嗅がされたためであった。
 遂に飛鳥姫がアイボリーハウスに拉致されてしまった。そして、極悪大統領コンビの醜悪な顔が飛鳥姫に迫る。
「や……いや……こ、こないで……」
 飛鳥姫は既に半ベソ状態。それも無理からぬことだろう。婚約者であるフェルディナンド陛下とは容姿に月とスッポンほどの差がある。まるで小動物のように怯える飛鳥姫。そう、普段は国防大臣として国民の前では毅然と振舞ってはいるが、素顔はか弱い少女でしかない。
幼少期は病弱のため、深窓の御姫様としてあまり外出もさせてもらえなかった。そのことが彼女の人格形成にも大きな影響を与えている。このため3人の姉姫は各軍の最高司令官として現場の最高責任者となったのに対し、飛鳥姫は最高司令官には不適格であったことや政治面に才能があったことから軍の政治的最高責任者としての道を歩んだ。
「何をそんなに怯えているのかね。何も怖がる必要などないではないか。ただフェルディナンド陛下にしていることを我々に再現してくれるだけでいいのだよ」
  フェルディナンド陛下にしていること……大統領にそう言われて、飛鳥姫の顔が途端に紅潮する。
「な、な、何のことですか。し、知りません、そんなこと」
 首を横に振って強く否定する飛鳥姫。性知識など皆無の普通の国のお姫様のように。だが、その様子を見て、大統領は陰湿な笑みを浮かべる。
「そうか、あくまでシラを切るつもりなら、こちらも相応の用意があるぞ」
 大統領はマホガニーの重厚な扉に目配せを送ると、扉が開き、現れた人物に驚愕を隠せない飛鳥姫。
「ま、ま、まさか、お姉ちゃん……」
 二人の側近に拘束されて現れたのは、何と有璃紗姫であった。大元帥姿(有璃紗姫は後にその突出した軍功により海軍の瑞穂姫とともに皇族軍人として初めて大元帥に列せられている)ではあったが、歴戦の司令官の証である勲章類は全て剥奪され、何処か間が抜けて見える。
そう、正装というのは勲章類があって初めて威厳と風格が備わるものなのである。
「大元帥も、こうなるとただみすぼらしいだけだな。あの威厳溢れる姿も所詮は張子の虎というわけか。皇女もただの人の子にまで落ちると惨めなものだな。どれ、人としての情けだ。もっと惨めに貶めてやろう」
 勲章を全て剥ぎ取られ、惨めな姿を晒す有璃紗姫を嘲笑う大統領。そして、無慈悲にも有璃紗姫の大礼服の立襟を掴むと、一気に引き降ろした。西陣織の最上級の毛織生地で作られた大礼服が、無惨な音を立てて引裂かれる。
 ビリイイィッ!!
「い、いやああっ!!」
 引裂かれた服の間からは、清楚な姫君のイメージからは意外な黒のアダルトな下着が露わとなる。
「ほお〜。何と、国民の間では清楚なイメージで知られる有璃紗姫はこんな退廃的な下着を着けていたとはな」
 自分の黒い下着に大統領のいやらしい視線が注がれているのを感じて目を逸らす有璃紗姫。
「どれ、こっちも拝見するとしよう」
 だが、そんな有璃紗姫の視線を黙殺するかのように白のスカートに手を伸ばす大統領。スカートを捲り上げると、ブラジャーとお揃いの黒レースのパンティーが露わとなる。
「これは驚いたな。こんなレースいっぱいの下着など初めて見たぞ。しかもこの質感はシルクだな。さすがにお姫様ともなると庶民とは下着のグレードも段違いというわけか」
 自分の下着を見ていいのはストラトス王太子だけと決めていたのに、それを彼以外の男に見られて屈辱感に涙がボロボロ零れ落ちる有璃紗姫。
「お、お姉ちゃんをこれ以上辱めるのはやめて!!」
 姉姫が好奇の視線に晒されているのに耐えかねて涙声で叫ぶ飛鳥姫。
「フフフ。ようやくその気になったか。最初から素直に応じればいいものを。まったく手間をかけさせおって。なら、まずはスカートを捲ってみせろ、飛鳥姫」
「は……はい……」
 震える指でスカートを掴むと、恥かしそうに少しずつスカートを捲り上げていく。姉姫をこれ以上恥かしい目に遭わせるわけにはいかない。だが、自分だって下着を見られていいと誓ったのは世界でフェルディナンド陛下ただ一人。それを、よりによって最も見られたくない相手に見られるなんて。そう思った瞬間、飛鳥姫の手の動きが止まる。
「ほら、手が止まっているだろ。また姉姫が恥かしいめに遭ってもいいのかね!!」
 大統領に叱咤されて、二重の屈辱に涙をこぼしながら飛鳥姫はスカートを徐々に上へと捲り上げていく。そして、飛鳥姫お気に入りの淡いピンクレースの可憐なパンティーが顔を覗かせる。
「ほう、こちらはイメージどおりのピンクか。だが、庶民はこんな淫乱なパンティーははかないだろうな。少し透けておるではないか」
 大統領の言葉責めに、恥かしさで顔を赤らめる飛鳥姫。これまで姫君の嗜みとして何の疑問も抱かずレースの下着を身に着けてきた。それが実は恥かしい下着だと知って口から心臓が飛び出しそうになる。
「こ、これ以上、私たちを辱めないでください……」
 震えの混じった消え入りそうな声で懇願する飛鳥姫。こんな目に遭えば普通の女性でも耐えられないであろう。だが、皇女である二人の場合はそれ以上の屈辱感に違いなかった。しかし、大統領はそんな願いを一笑に付す。
「何を言っておるのだね。今のはほんの前菜だ。これからがメインディッシュではないか。もっと我々を楽しませてくれたまえ。さあ、次は服を脱ぐんだ」
 服を脱げと言われて躊躇する飛鳥姫。その様子に苛立ちを隠せない大統領。
「脱ぐんだ。それとも貴様の姉姫がどうなってもいいのかね!!」
 姉姫を人質にとられていることを思い直し、怯えた表情で大臣服に手をかけていく飛鳥姫。その表情は屈辱感でいっぱいであった。それも当然であろう。いくらおしとやかな性格とはいえ世界中の王族と同じように皇族としてのプライドは当然のようにある。そのプライドがこういう形でズタズタに引裂かれているのだ。並の人間以上の屈辱感であろう。 
 金糸をふんだんに使った華麗な唐草模様の大臣服が、ベストが、スカートが舞い落ち、タキシードに着るのと同じフリルいっぱいのブラウスも脱ぎさると、飛鳥姫のイメージ通りの淡いピンクの下着が大統領たちの視線に晒される。
「ムフフ。さすがに可憐なイメージが世界中に浸透しているだけあって下着だけになっても清楚なイメージは変わらんな。さすがは飛鳥姫だ。さあ、今度は下着を脱いでスッポンポンになりたまえ」
「そ、そんな……こ、これ以上は……」
 とめどなく涙を流して懇願する飛鳥姫。もう死にそうなくらい恥かしくてたまらない。だが……
「ほらそれだ。女は都合が悪くなるとすぐに泣きおる。我々に泣き落としが通用するとでも思っているのかね。それとも、また貴様の身代わりにでもなっておもらうか」
 そう言って陰気な視線を有璃紗姫に向ける大統領。
 有璃紗姫に視線が向けられたのを察して背中に腕を回し、ブラジャーのホックに手をかける。
「だ……だめ……や、やっぱり恥かしい……」
 しかし、消え入りそうな声で呟く飛鳥姫は、これ以上手が動こうとしない。最早恥かしさが限界に達してしまっていたのである。
「じれったい奴だ。ドルームマン、羽交い絞めにしろ」
 とうとうシビレを切らした大統領。近くにいた副大統領ドルームマンが、飛鳥姫を後ろから羽交い絞めにし、そして大統領がにじり寄ると、ブラジャーを掴んで毟り取る。
 ブチイイイッ!!
「い、いやあああああ!!」
 ブラジャーが剥ぎ取られた瞬間、プルルンと飛鳥姫のたわわな果実が揺れる。こう見えて飛鳥姫も88のEカップであった。
「おおお、可愛らしい顔立ちからは想像もつかない立派な果実だな。それもまた何ときめ細かい餅肌だ。まるで手に吸い付くようだぞ。これでフェルディナンド陛下を篭絡させたのかね。まったく油断もならないな、女というのは」
「そんな、違う」
 しかし、大統領の視線から見れば飛鳥姫のたわわな果実は男を篭絡させる道具にしか見えない。そのたわわな果実を弄ぶ。
「い、いやあ、触っていいのはフェルディナンド様だけなのにいい」
 だが、そんな思いとは裏腹に、飛鳥姫の可愛らしい唇から喘ぎ声が漏れ始める。
「あ、ああ、いや、いやなのお、あん、あはあ、ああん」
「おおっ、飛鳥姫は陵辱されているというのに感じておるのか。何と淫乱な」
 淫乱と言われて目を背ける飛鳥姫。そんな様子を嘲笑うかのように容赦なく弄ぶ大統領。
「わ、私は淫乱なんかじゃ……あはうっ」
 しかし、フェルディナンド陛下によって開発されたことが災いして身体は素直に反応してしまう。
「いくらその可憐な唇で上品ぶったところで身体は正直なものだな。どれ、コチラも調べてみるか」
 大統領の手が今度は飛鳥姫のパンティーに伸びていく。
「い、いやあ、そ、それだけはだめえ、み、見ないで、だめ、だめ、だめえええ!!」
 だが、抵抗空しく無情にもパンティーは引き摺り下ろされ、皇国のトップシークレットが大統領の眼前に晒される。飛鳥姫のトップシークレットを見て、驚きを隠せない大統領。
「おおお、な、な、何と、皇国の皇女は噂のとおりパイパンだったのか」
 そう、皇室のトップシークレットの一つ、皇女は代々パイパンなのである。言い換えれば髪以外の無駄毛が一切ない美しい裸体とも言える。しかもこのパイパンは超優性遺伝であり、皇国の皇女が他国に嫁いだ場合は産まれて来る女の子は確実にパイパンになる。そして、その遺伝子は子々孫々にまで受継がれることになるのだ。
「ああ……皇室のトップシークレットが……」
 飛鳥姫は抵抗もむなしく大統領にトップシークレットを見られ、その瞳から輝きが失われていく。その様子を見ていた有璃紗姫も力尽きたかのようにうな垂れる。大統領の前に完全敗北した瞬間であった。
「さて、ここから総仕上といくぞ。この瞬間、皇国の権威は地に堕ちることとなり、我が合衆国は名実ともに世界最強の国家として君臨するのだああ〜!!」
 ドルームマンが後ろから飛鳥姫の脚を抱え上げ、前後から挿入する3P状態となる。
「い、いやあ〜。そ、そんなに入らない〜、やめて、やめて、やめてええ〜!!」
 挿入されると悟って、再び泣叫んで激しく抵抗する飛鳥姫。
「見苦しいぞ、飛鳥姫!!」
 パシィッ!!
 あまりにも未練がましく抵抗するのを見て容赦なく平手打を浴びせる鬼畜大統領。
「うっ、うっ……ひ、ひどい……ど、どうして何も悪いことしてないのにぶたれなくちゃいけないの? 悪いことしてるのは大統領なのにいい〜」
 トップシークレットを見られた精神的ショックで幼児退行している飛鳥姫。しかし、そんなことで手を緩める二人ではない。
「キミにはわからんだろうが、これがオトナの世界というものなのだよ。キミは大臣を務めるには少し幼すぎたのだ。では、イクぞ、覚悟はいいな、飛鳥姫」
 そして、遂に前後の貞操が極悪大統領コンビの手で容赦なく蹂躙される。
「あああああぐううううう〜〜〜〜ッ!!」
「おおお、こ、これは稀に見る名器だ。ワシのモノを容赦なく締付おって。しかしその具合は最高だぞ。今までにない名器がワシの征服欲を掻き立ておる」
「あああ、い、痛い、痛い、そんなに激しくしないで。あああ、鬼、悪魔、人でなし〜〜〜!!お、お腹が苦しいい〜〜。お腹が裂けちゃうウ〜〜、お、お姉ちゃん、痛いよお〜〜助けてえええ!!」
 ひたすら有璃紗姫に助けを請う飛鳥姫。ショックのあまり彼女から平静な思考が失われてしまっているのだ。よほど苦しいのだろう、額には脂汗が滲み、前髪が濡れて張り付いている。
「閣下、コチラも最高ですぞ、飛鳥姫は後ろの穴も最高の名器です、うおおお、も、もう限界が!!」
「あああ、あ、飛鳥ああ〜!!そ、そんな、どうして飛鳥がそんなヒドイ仕打を受けなければいけないの?」
 妹姫に対するあまりにも残酷な仕打に有璃紗姫はたまらず泣叫ぶ。だが、そんな有璃紗姫に対する回答は容赦ないものであった。
「フフフ。軍の最高司令官ともあろうものがそんなこともわからんのかね。所詮は貴様もそこらへんの王室の夢見がちなお姫様と同じか。これが国際社会の過酷な現実なのだよ。私もまた合衆国の国益のために必死なのだよ。そ、国益のためなら他国の権威を地に貶めることも厭わない。それがこの社会の現実なのだ。それより妹姫のことよりもまず自分の身の回りを心配したらどうかね?」
「な、何ですって?!」
 有璃紗姫の背後から現れたのは、大統領の許で数々の新兵器開発を手がけてきたマッドサイエンティスト、ランドルフ教授であった。
「ウヒャヒャヒャヒャ。まったくその通りじゃ、有璃紗姫。貴様はこの改良型洗脳マシーンの最初の実験台になってもらうぞ。そして、私にストラトス王太子にしていることを存分にしてもらうのじゃああああ!!」
「い、いやああ〜〜こ、来ないで、わ、私に何をしようというのですか!!」
 だが、激しく抵抗するも取り押えられて有璃紗姫は頭にヘッドギアを被せられ、そして数分後……
「ああ……フィアさま……」
 そう言ってランドルフ教授に縋りつく有璃紗姫。しかし、その穢れなき瞳から輝きは失われ、虚ろである。
「さあ、有璃紗姫、キミの自慢のテクニックで、私をイカせておくれ」
 ランドルフ教授は自らの汚い(ピー)を有璃紗姫に突きつける。だが、有璃紗姫はそれを疑問にも思わず喉の奥まで銜え込む。
「おおお、な、な、何と言う気持ちよさじゃあああ。あ、有璃紗姫の舌が絡み付いてきおるぞ。こ、こんな超絶テクニックは初めてじゃあああ。こ、コレはたまらん!!」
 そう、皇国の皇女は魔族を祖先に持つだけあり舌が長く、20cm以上もあるのだ。このため(ピー)に舌を巻きつけることなど造作もない。それだけではなく有璃紗姫はフ○ラも絶品であった。
唇を窄めたり緩めたり深く、或いは浅く銜え込んだり頭を前後するスピードも緩急をつけるなど、それもタイミングが実に絶妙なのだ。
「な、な、何と、有璃紗姫は普段ストラトス王太子とあんなことをしておるのか。こ、これは世界的なスキャンダルだぞ!!」
 絶品フェ○テクに大統領も驚きを隠せない。
 舌が巻きつき、しかもバキュームするかのような○ェラテクの前に、ランドルフ教授もあっという間に限界に達してしまう。
「おお、お、わ、私ももう限界なのじゃあああ、イクぞ、有璃紗姫〜」
「はい、フィアさま〜」
 ラストスパートとばかりに激しく頭を前後に揺さぶりこれでもかと扱きたてる有璃紗姫。長く美しい艶やかな栗色の髪も揺れる。
 そして、ランドルフ教授が限界に達すると有璃紗姫の美しい顔が、あっという間に白く染め上げられていく。
 ビュ〜ビュ〜ビュルビュルッ、ビチャッ!!
「ああ……フィアさまってば、こんなにいっぱい……余ほどたまっておられたのですね」
「おおお、こ、これが有璃紗姫の本性か。清楚な顔立ちからは想像もできぬ淫乱振りだな」
 有璃紗姫「を見ていて、二人も急速に限界を迎える。
「フハッ、フハッ、フハハハハッ。もう我々も限界だ、さあ、とくとイキたまえ、淫乱な妹姫め!!」
「は…はひ、はいい……わ、私も、イキそうですう、私の中に、たっぷり注ぎこんでくらはいませえへへ〜」
 いつの間にか理性が湧き上がる性欲の前に駆逐され、というより陵辱のショックで狂ってしまった飛鳥姫は、白目を剥いて壊れてしまった。そして、二人の白濁が飛鳥姫の前後に注ぎ込まれる。
「ひゃあ、あ、あああああ〜い、イク、何度でもイクウウウ〜!!」
 白目を剥きながら激しくのけぞる飛鳥姫。最早かつての清純な姫君の姿はそこにはなかった……。更に有璃紗姫もまだ足りないとばかりにいつの間にか全てを脱ぎ去ってランドルフ教授と騎乗位であえいでいたのであった……。
 やがて有璃紗姫も絶頂を迎える。
 こうして激しい陵辱を受けた二人は意識を失っていった……。

                                           (3)

「……す……か、あすか、飛鳥……」
「う、うう〜〜ん」
 誰かの声で目を醒ます飛鳥姫。ボンヤリしていた視界と思考が徐々にはっきりしてくると、そこには心配そうな三人の姉姫の顔。そしてはたと気付く。
「もう、いきなり倒れちゃうからどうしたのかと思ったのよ。よく見たら御酒をジュースと間違えて飲んじゃって」
 有璃紗姫が心配そうに飛鳥姫の顔を覗き込みながら言う。
 事の真相はこうだ。即位の礼の後の晩餐会でうっかりフルーツジュースか何かと間違えて実はフルーツパンチを一気飲み、当然未成年でアルコールに免疫のない飛鳥姫は酔って
ぶっ倒れてしまった。そして隣の控え室で目が覚めるまで姉姫たちに看病されながら寝ていたというわけである。
「ほら、今日は一生に一度立ち会えるかどうかの即位の礼なんだから、もう少ししっかりなさい。貴方は大臣でしょ。まったくもう」
 怒ったような言い方の愛璃姫であるが、その目は怒ってなどいない。ただうっかりアルコールを口にして倒れた妹姫が心配なのである。その時、改めて有璃紗姫の顔を見た飛鳥姫が
突然涙ぐみ、そして縋り付いて幼子のように泣きじゃくる。そう、あの時の悪夢を思い出してしまったのだ。
「う、うわあああああ〜〜〜〜ん、お姉ちゃああああああん!!」
「ちょ、ちょっと、どうしたの、飛鳥」
 急に泣き出す飛鳥姫を見て戸惑う有璃紗姫。
「やれやれまったく昔から手のかかる末っ子だわ。大方悪い夢か何かでも見たのね」
 呆れた様子の綾奈姫。だが、そんな末っ子でもかわいい妹姫には違いない。だが、綾奈姫はこういう時の対処法も心得ていた。
「ほら、いつまでも泣かないの。今日はフェルディナンド陛下も来ているんだから。そんな泣き顔だと嫌われるわよ。婚約者の前では笑顔でね」
 フェルディナンド陛下が来ている。それを聞いて泣き止む飛鳥姫。そう、フェルディナンド様の前でみっともない顔を見せるわけにはいかない。
「綾奈お姉様、パーティーは始まってどのくらいかしら」
「まだ始まったばかりよ。フェルディナンド陛下は飛鳥はまだかと待っているわ。早く陛下のところへ行ってらっしゃい」
 そう聞いていても立ってもいられずフェルディナンド陛下のところへ向かう飛鳥姫であった。その様子に三人の姉姫も安心した様子だ。
 この後、飛鳥姫はフェルディナンド陛下と久々の再会と相成り、いつもの飛鳥姫からは想像もつかないほどに饒舌に熱っぽく歓談していたのであった。
 いくら国防大臣を務める聡明な姫君といっても中身はやはり相応の多感な乙女真盛りの少女なのである。そんな末っ子を傍らで優しく見守る三人の姉姫。
 しかし、そんな末っ子に姉姫たちも精神的に救われていることも事実であった。
 いずれはそれぞれの国へ嫁ぎ、離れ離れになる姉妹。だが、彼女たちの絆は終生変わることはない。
 いつかその日は必ず来る。だが、今はまだ一緒にいられる。しかし、時代はまだ姉妹を引き離す時期には来ていなかった。
 これから先、日本皇国は建国以来最大の危機に立ち向かう運命が待ち受けていたのである。太平洋を隔てて東から来る巨大なる野望に立塞がるのは、可憐なる姫君たち。
 皇国の要職に姫君が大挙して就く時、それは皇国が歴史上稀に見る国難に遭遇する時である。それ故に姫君たちは皇国の守護神として、勝利の女神として国民からは畏敬され、
そして崇拝の対象であり続けた。
 だが、今はまだその時ではない。束の間の平穏な日々……。
 晩餐会は、そんな平穏の象徴であるかのように盛り上がっていた……。

 
 (完)

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