*A week・プロローグ(4)
T.MIYAKAWA
その頃の王子は兵士の案内で城にある塔の中まで連れてこられた。
最上階まで階段を登ると、王子はドアで閉ざされた部屋を見つけた。
「ここがお前の部屋だ。」
兵士にそう言われて王子はそのドアを開けてみた。
部屋の内部を見渡す、そこには小さいベッドとテーブル、そして二人分の
椅子が置かれているだけだった。
また壁には頭がようやく入るくらいの大きさの窓があるだった。
王子は牢獄へ連れて行かれると思っていたが、そうでなかったことに驚いた。
「それから、お前の世話はここにいる女が行う。」
王子は兵士が指を指す方向を見てみると、そこには一人のメイドが立っていた。
間もなくして兵士は部屋を出ていったころには、王子と世話役のメイドの
二人だけが残されていた。
「はじめまして、今日からあなたのお世話をする事になりました
エスメラルダと申します。
どうかよろしくお願いします。」
「こ、こちらこそよろしく。」
エスメラルダと名乗ったメイドと王子は互いに挨拶を交わした。
「随分とお疲れでしょ。
すぐにお食事の準備をいたしますから、ゆっくり休んでいてください。」
そう言ってエスメラルダは部屋を出て行った。
王子は食事ができるまでしばらく休むことにした。
日が沈み始める頃になって、エスメラルダが食事を持って戻ってきた。
「どうぞ召し上がれ。」
エスメラルダが見守る中で王子は食事を始めた。
王子にとってこの国での最初の食事だった。
「お口に合いますか?」
エスメラルダは夢中になって食べている王子にこう尋ねた。
「とてもおいしいよ、朝から何も食べてないからより一層というところかな。」
こうして夜は静かに更けていったが、これから起こる出来事を
このときの王子はまだ知る由もなかった。
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