*A week・プロローグ(3)

T.MIYAKAWA



 女王の謁見の後、スカーレットらは会議室へ移動した。
 会議室に着くと、女王から与えられた1週間についての打ち合わせを始めた。
 「さあて、どう決めたらいいかしらね。」
 スカーレットは天井見上げながらこう呟いていた。
 その口調は明るく目は輝いていた。
 「あなたの今の発言、聞き捨てになりませんわね。
 まるで自分達だけの手柄のように聞こえるのですから。」
 そんなスカーレットの様子を見て同席していた魔導師のイザベラが口を挟んできた。
 「本当よね。
 あなた達の手柄は私達の協力があったからこそじゃない。」
 「その事を忘れないでほしいわ。」
 イザベラと同じく一緒にいたディルと天海の二人も彼女に続いて会話に参加してきた。

 天海とディルは「青の部隊」と呼ばれる傭兵部隊と、獣人だけで
組織された「牙の部隊」とよばれる部隊の指揮をそれぞれ執っていた。
 ちなみにスカーレットは正規軍の「赤の部隊」の隊長、プラムは
その副隊長である。

 「わかってるわよ。
 協力してくれたことはとても感謝してるじゃない。」
 スカーレットは3人に半分あきらめた口調で返事をした。
 今回の戦いは天海らの協力があったとはいえ、主に活躍をしたのは
自分達だと反論したいのがスカーレットの本心だったが、仮に反論しても
聞き入れないことはわかりきっていた。
 プラムも何か言いたがったのだが、スカーレットはそれを押しとどめさせた。
 「あなた達、ここで何を話しているのかしら。
 まさか私をのけ者にしようと考えてるんじゃないでしょうね?」
 突然のこの声にスカーレットらは驚いた。
 彼女らは声のする方へ目を向けると、一人の女性がドアの側に立っていた。
 「あら、カサンドラさんじゃありませんか。」
 イザベラが声を掛けた女性、カサンドラは女王を護衛する親衛隊
の隊長である。
 階級の高さ等から、スカーレット達は彼女を快く思っていなかった。
 「あなた達が何をしているのか、私が知らないと思っているの?」
 カサンドラはスカーレットら二人が女王に謁見をしていた時、女王の護衛任務で
玉座の間にいたので捕虜の王子の存在を知っていた。
 「そんなことはありませんよ。
 私達は何もあなたを仲間はずれにしようなんて思ってませんよ。」
 イザベラは笑顔でカサンドラに返答をした。
 その言葉をスカーレット達は自分達の分け前が減ると
言いたげな顔で二人、特にカサンドラを見つめながら黙って聞いていた。

 こうしてカサンドラが話に参加してから1時間余り経過してから話は
ようやくまとまった。
 1週間の1日おきに彼女達が王子の相手をする事になった。
 最初の1日目は王子を捕らえたプラムが、そして後の5人はくじで残りの順番を
決めることにした。
 最後の7日目についてはその日まで取っておくことにしたのだ。
 「早く私の出番の日にならないかなあ。」
 スカーレットらはそんな言葉を交わしながら会議室を後にした。
 こうして王子が知らない間に彼女達はこのような話を進めいていたのである。


次のページへ MENUへ 前のページへ