*A week・プロローグ(2)

T.MIYAKAWA



 敵国に到着したのは夜が明けた頃だった。
 二人の女性は馬を降りると、王子をすぐに城の王宮内へと
連れていった。

 「どこへ連れて行くんだ?」
 王子は二人の間に挟まれた形で歩かされていた。
 「これから王宮にある玉座の間へ行くのよ。」
 「そこで女王様に会わせるつもりよ。」
 そう言って、二人は王子の質問に答えた。
 突然、一本の矢が馬車に目掛けて飛んできた。
 その後、王子は無口になり歩く速さも次第に遅くなってきた。
 「コラ。」
 「歩くのが遅いよ、早く来なさい。」
 二人は王子に早く来させるよう両腕を引っ張り、
今度は遅れないように体を密着させながらそのまま腕をからみつくような形で
抱える事にした。
 王子は左右から二人の大きな胸に押し付けられながら歩いていた。
 廊下を歩いているうちにやがて大きな扉が目の前に見えてきた。
 見張りの兵士がその扉を開けると、そのまま歩いていった。

 (こ、これは…)
 王宮の間に入った王子は床から天井までもが白で統一された
広大な空間み驚きが隠せなかった。
 王子は目をキョロキョロと動かしながら、白いに敷かれた赤い
絨毯の真ん中まで歩いたところで二人は立ち止まりその場でひざまついた。
 「スカーレット並びにプラム、只今帰還しました。」
 スカーレットと名乗った女隊長の言葉にさっきまで俯いていた王子は
思わず顔を上げてしまった。
 王子の目には部屋の奥にある玉座に座っている女性が映っていた。
 その女性が敵国の女王であった。
 「二人共、ご苦労でした。
 特に敵国の王子を捕らえたプラムは大手柄よ。」
 女王は王子の方を見ながら、スカーレットとプラムの二人をねぎらった。
 一方、王子の方は緊張のためか立ち止まって動けないままでいた。
 「それじゃあ、王子様にはもう少し来ていただこうかしら?」
 女王のその言葉に王子は戸惑っていたが、隣にいたスカーレットが
ズボンの裾を引っ張ったことで我に返り、言われた通り歩き始めた。
 王子が玉座の前にある階段の手前まで歩いた時、待ちきれなかったのか
女王が目の前に立っていた。

 女王は王子をしばらく見つめると、突然笑顔を浮かばせた。
 「やっぱり、私の好みの子ね、気に入ったわ。」
 女王は目を輝かせながらこう呟いた。
 「手柄を立てたあなた方には褒美を与えることにしましょう。
 何を望んでいるのかしら?」
 女王はスカーレットとプラムの二人の方を見ながら、機嫌のよい顔で
言ってきた。
 「プラム、あなたが言いなさいよ。」
 「はい隊長、お気遣いありがとうございます。」
 スカーレットにそう言われて、プラムは静かに立ち上がった。
 「女王様、無理を承知で言わせていただきます。
 こちらにいる王子を一日で構いませんからこちらに預からせていただきたいのです。」
 プラムの願いというのは、他でもなく王子を自分の相手にしたいということだったのだ。
 もちろんそんな事は聞き入れてくれないだろうとプラムは思っていた。
 「そんなのでいいの?
 わかったわ、それでは明日から1週間王子をあなた達の自由にしていいわよ。」
 女王は意外にもプラムの願いを快く聞き入れてくれたのだった。
 「私達の願いを聞き入れて頂いてありがとうございます。」
 二人はそう言いながら頭を深々と下げながら、女王に感謝したのだ。
 「それじゃあ、早速王子を部屋に案内させなさい。」
 女王に命じられた兵士は王子を連れていった。
 「フフフ、1週間後が楽しみね。」
 女王は王子が玉座の間を去っていく姿を見ながらこう呟いていた。


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