*A week・第1日目(5)
T.MIYAKAWA
王子はこの国での最初の夜を迎えた。
夕食の後、彼は窓から夜空を眺めていた。
大きな満月が照らされ、星々が散りばめられていたが、捕らわれの身の彼にとって、
これらの美しさを満喫できる余裕はなかった。
(これからボクはどうなるんだ…)
今の彼の心境は不安でいっぱいだった。
一週間後には、彼はこの国の女王に引き渡されてしまうからだ。
そして、その1日目がまもなく終わろうとするのだ。
コン、コン
王子のいる部屋のドアからノックをする音が聞こえた。
「…どうぞ。」
返事をしたと同時に、ドアが開き1人の女性が入ってきた。
プラムである。
「何をしているの、王子様?」
プラムは笑顔でたずねた。
彼女の服装は、黒いシャツとスパッツといった下着に近い姿である。
先程風呂に入っていたのか、体は赤く火照っていた。
「そういうあなたこそ、ボクに何の用ですか?」
王子はプラムを横目で見ながらたずねた。
「何って、決まっているでしょ。
今夜は王子様と一緒に寝る事をしたのよ。
でも、まだ消灯時間じゃないからそれまで何かしようよ。
時間は有効利用しないとね。」
プラムは笑いながら答えた。
彼女の言う「何か」という言葉に王子は戸惑いを隠せなかった。
(一体、何をする気だ?)
プラムは王子が起きてからずっと付き添っていた。
彼が食事をする時でさえ、彼女は彼から離れようとはしなかったのだ。
そればかりか、彼女は半強制的に彼を連れて外出したりもしたのだ。
「だから、朝までとことん付き合ってもらうからね。」
その言葉を聞いた王子はやっぱり、と溜息をつきながら思った。
そうしているうちに、王子の世話係のメイドが酒の入ったボトルを持ってやって来た。
「どうも。」
プラムはボトルを受け取ると、大きめのグラスに並々と注いだ。
そして、それをごくりごくりと、大きな音をたてて飲み、あっという間に
飲み干した。
「んーっ、やっぱり風呂上りの一杯は最高よねっ!」
プラムは大げさに言った後、2杯目を注いだ。
「…。」
プラムは2杯目をすぐ飲まず、王子の顔を見つめていた。
なぜかその表情はさっきとは違い少し沈んでいた。
「ど、どうしたの?」
驚いた王子は自分をじっと見つめているプラムにたずねた。
「…君を見ているとね、昔を思い出しちゃってね。」
「え、昔?」
彼女の意外な言葉に、彼はまた驚いた。
「ねぇ、私の話をちょっと聞いてくれる?」
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