黄金の日輪*白銀の月
 第6話/告白

Female Trouble


 苛酷な責めからようやく解放されて、姉妹は再び地下牢の中で二人きりになった。今
が昼か夜かもわからない地底深くの牢獄の寒気が、全裸に剥かれた少女たちの素肌を苛
んだ。姉妹は涙も涸れ果てて、ただ嗚咽を漏らしながら、互いに抱き合って暖めあって
いた。

「…ごめんね、ごめんね、クレア…」
 姉のつぶやきに、王女はアンヌの瞳の奥をのぞき込んだ。
「お姉さま…?」
「なんて無力なんだろう、わたし…。クレアを守ることだけが、わたしの全てなのに…。
クレアが酷いことされてたのに、わたし、なんにもできなかった…。わたし…」
「お姉さま!…もう何も言わないで…」
 クレアの腕に力がこもった。うつむいて涙をこらえる姉を、さらに強く抱きしめた。

「…お姉さま、聞いてる?」
「うん」
「私、言いたいことがあるの。はしたないって思うでしょうけれど、許して」
「なに?」
「…私、今、とても幸せなの」
「……!?」
「こうして、お姉さまに抱かれていて…。お姉さま、好き…」
「わたしだって、好きよ、クレア」
「そうじゃなくて!」
 クレアは顔を上げて、アンヌと見つめ合った。

「愛してます、お姉さま。心から」

 ハッとして、アンヌは妹の顔をまじまじと見つめた。瞳を潤ませて見つめるクレアの
顔は、恋する少女のそれだった。
「な、なにを言って…!」
「本当よ、お姉さま。女同士でも、姉妹でも、関係ないの。私、もう自分の心を抑えら
れない…」
「やめて、クレア」
「ずっと前から、好きだったの、でも、言えなかった。言えるはずなかった」
「クレア…」
「だって、お姉さまだもの。許されるはずがないもの。でも、ずっと、ずっと、好きだ
ったの…」
「…」

 クレアがアンヌに身体を寄せた。二人の肌がさらに密着し、互いの乳房がぎゅっと押
しつけ合わさった。
「わかる、お姉さま?お姉さまの手、お姉さまの腕に抱かれて…、お姉さまの肩、そし
て、乳房…。私、心臓がドキドキしてるの。胸の奥がきゅんっとなって、熱くなってる
の」
「わかるよ、クレア。すごく響いてくる、クレアの鼓動が…」
「ここなら、誰の邪魔も入らないわ…。人の世では許されないことだけど、ここでなら、
言えるの、私…」

「ずるいわ。クレア!」
 妹の言葉を遮るように、アンヌは叫んだ。
「わたしだって、わたしだって…愛してる。愛してるのに、クレア!」
「…お姉さま!」
「そうよクレア、わたしだって…。ずっと、ずっと、クレアを独り占めにしたかった。
誰にも渡したくなかった。でもいくら願っても、そんなことかなえられるはずない…」
「…」
「だって、クレアは聖なる王女。そんなこと、口が裂けたって言えるはずないじゃない。
同性の、しかも妹に、よこしまな思いを抱いている自分への後ろめたさを振り捨てよう
と、わたしは戦いに没頭した。クレアのために、王国のために働いているんだと、自分
に思いこませて…」

「…じゃあ、お姉さま。私たち、互いに想い合っていたのね。そしてそれを互いに気づ
かずに、二人とも隠していたのね」
「クレア…」
「…この、神からも見捨てられた地の奥底で、私たち、愛し合ってもいいのね、お姉さ
ま…?」
「もっと、早く、伝えられたらよかったのに…、クレアの気持ちに応えられていたら…」
「今だって、遅くないわ。お姉さま、お願い、抱いて…。私を、愛して…。お姉さまが
心の奥にしまっておいたことを、して…。私も、したい…」
「ああ、クレア、大好きよ、わたしの妹…!」

 姉妹は顔を寄せた。互いの息づかいが頬をくすぐった。
 二人は目を閉じ、そっと唇を触れ合わせるように重ねた。最初はこわごわと。でも、
羽毛が触れた程度のファーストキスが、二人の全身にすさまじいほどの電流を走らせた。
 アンヌは今度は激しく妹の唇をむさぼるように吸った。クレアもそれに応えて姉の唇
にむしゃぶりつく。互いの舌が絡み合う感触に、姉妹は全てを忘れた。愛する者と悦び
を分かち合うこと以外の全てのことを。

 ひかりごけの仄暗い光の中で、二人の少女の裸身が、狂おしく重なり、絡み合ってい
った。




(つづく)
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