ネイロスの3戦姫 3姉妹、愛の休息
最終話その.4 悪夢の終焉
「えすめらるだあ〜、まぁあてええ・・・」 漆黒の闇の中から、セルドックの不気味な声が響いてくる。エスメラルダは、その声か ら逃れようと足掻いていた。 「ハアハア・・・助けて・・・誰か・・・」 いくら走っても不気味な声は背後から迫ってくる。そして、逃げる前方から女狂戦士の 2人が姿を現した。 「キャ〜ハハッ、逃げられるとでも思ってンのかあい〜。」 「グゥフフ・・・イジメてあげるよぉ〜、ボーヤァ・・・」 凶悪に歪んだ面構えのギルベロと、醜く崩れた顔のラーガが待ち構える。 「いやあーっ。」 女狂戦士達に背を向けて逃げようとした。だが、その彼女の体を、無数の手が捉えた。 「ぎひひ〜、にぃげるなあ〜、お前は永遠にオレ様のドレイだああ・・・」 そして闇の中からセルドックのサディスティックな顔がいくつも出現した。 「ひ、ひいいっ。」 泣き叫ぶエスメラルダの背中に、鋭い鞭が飛ぶ。 「う、うああっ。」 「さ〜あ、もっと泣きなあ〜。」 ギルベロの鞭が容赦なくエスメラルダの体を痛めつけた。 「グフフ・・・よくもあたしの顔をつぶしてくれたねぇ〜。」 エスメラルダの前に、戦闘用ハンマーをかざしたラーガが憎悪に歪んだ顔でエスメラル ダを見た。 「あたしと同じ醜い顔にしてやるうう・・・覚悟しろおお、ボーヤアア・・・」 ものすごい勢いでエスメラルダの顔にハンマーを叩きつけるラーガ。 「いやああーっ!!」 大量の鮮血が飛び散り、絶叫が漆黒の闇に響いた・・・ 「わああーっ!!」 悲鳴を上げたエスメラルダが、ベッドから飛び起きる。 「ハアハア・・・まただ・・・」 全身汗だくになりながら、荒い息をつくエスメラルダ。おぞましい悪夢にうなされてい た彼女は、苦悶の溜息をついて顔を手で覆った。 「姉様・・・ルナ・・・」 今の叫び声で、エリアスとルナが起きたのではと思ったエスメラルダは、2人の方に目 を向けた。 「よかった、まだ寝てる。」 傍らの姉と妹は何事もなかったかのように眠っている。 ふう、と吐息を漏らしたエスメラルダは、床に裸足で下りるとペタペタと足音を鳴らし ながら廊下を歩いて行った。 「三日月か・・・」 別荘の扉を開けたエスメラルダは、夜空に浮かぶ三日月を見て呟いた。そしてランタン と火種を手にした彼女は、庭に出るとランタンの明かりの元で、棒術の稽古を始めた。 「えい、えいっ。」 手ごろな棒を使って素振りをしていると、悪夢の恐怖が僅かだけ紛れた。疲れればぐっ すり眠れるだろうと思ったエスメラルダは無心で素振りを続けた。 「えい、やっ。えいっ。え・・・!?」 不意に風が吹き、ランタンの火が消えた。 「あ・・・」 エスメラルダの周囲を、漆黒の闇が包んだ。そして言い知れぬ恐怖が彼女を襲った。 「火をつけなきゃ・・・」 そう呟いたエスメラルダの背後から、聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。 (ガハハ・・・へっぴり腰じゃねーか、それでも黒獣兵団を壊滅させた戦姫かい?・・・ ) 嘲笑うようなその声を聞いた途端、エスメラルダの背中に戦慄が走った。 「お、お前はブルーザーッ!!」 なんと、暗闇に黒獣兵団の団長ブルーザーがふてぶてしい面構えで立っているのだ。 「お前はダイナマイトで自決した筈なのに・・・」 信じられない顔のエスメラルダを見て、ブルーザーはゲラゲラと笑った。 (てめえらの泣き面が見たくて地獄から帰ってきたのよ・・・思ったとおりだぜ・・・ てめえはまだセルドックのアホにビビッてやがる・・・あの軟弱チビに怯えてションベン ちびってる、てめえの面は最高だったぜ、ワハハッ。) 「言うなーっ!!」 眼をカッと開いたエスメラルダは、嘲笑うブルーザーに棒の一撃を見舞った。 「!!・・・消えた・・・」 笑い声だけ残し、ブルーザーの姿が消えた。 (今のてめえにゃ、虫1匹潰す力もねえ・・・セルドックにケツ舐められてるのがお似 合いだ・・・悔しかったらせいぜい悪あがきするこったな・・・ガハハ・・・) エスメラルダの頭上から屈辱のこもった笑い声が響き、暗闇に吸い込まれていった。 「今のは一体・・・」 呆然とするエスメラルダの後ろで、ランタンの光が灯された。 「姉様・・・起きてたの。」 振り向くと、そこにはエリアスが心配そうに立っている。 「まだ成仏できていなかったのねブルーザーは。」 姉の言葉に、エスメラルダは声を詰まらせた。 「姉様にも見えたの!?じゃあ・・・今のはブルーザーの幽霊・・・」 「そうみたい。苦しんでる私達を笑うために地獄から戻って来たってワケね。」 「あいつ・・・どこまでボクらをバカにすれば気が済むんだ・・・」 ブルーザーの亡霊にまでバカにされたエスメラルダは、悔しそうに地面を叩いた。 「セルドック・・・ブルーザー・・・みんなブン殴ってやりたいよ・・・」 空しく拳を振り上げる妹の腕を掴み、エリアスは首を横に振った。 「ブルーザーは、もうこの世にはいないのよ。それにセルドックはデトレイドの牢獄で ピーピー泣いてるわ。あなたが拳をぶつける相手なんか、もう存在しないの。わかるでし ょう?」 「うん・・・」 力なく拳を下ろすエスメラルダ。 ダルゴネオスの宮殿でエスメラルダに叩きのめされたセルドックは、ダルゴネオスや女 狂戦士の2人と一緒に、毎日牢獄で泣き喚いているのであった。そんなセルドック達がエ スメラルダに復讐しようと思うはずもない。 そう、後はエスメラルダ自身が立ち直るだけなのだ。だが、彼女に植え付けられた恐怖 を取り除くのは容易な事ではなかった。 「ルナの時みたいにはいかないわね・・・」 うなだれる妹の手を取り、エリアスは部屋へと戻った。 「エスメラルダ姉様ーっ。」 次の朝、エスメラルダはルナの元気な声で目覚めた。 「る、ルナ・・・あ、もう朝か・・・」 寝ぼけマナコを擦りながら、エスメラルダは寝不足の頭を振って眠気を払った。 「朝ご飯できてるよ、一緒に食べましょ。」 朝日の中でニコニコと笑顔を見せるルナ。その顔には昨日までのような悲壮な影はなか った。 「まだ眠い・・・」 毎夜悪夢にうなされているエスメラルダは、寝起きが悪くなっている。 「眠りの森の王女様、わたくしめが目覚めさせてあげましょう。んん〜。」 王女をキスで起こす王子様を気取ったルナが、寝ぼけているエスメラルダに濃厚なキス をする。 「むむ〜!!ぷはっ。な、なにするワケーっ!?」 顔を真っ赤にしたエスメラルダがルナをポカポカたたく。 「きゃ〜、乱暴はお止めになって〜、あーれー。」 ベッドの上でドタバタと戯れる2人。 「あのね、何してるのあなた達・・・」 部屋の入り口に、怒った顔のエリアスが立っている。 「あはは・・・コリは、あねさま・・・おはよ−ごぜーますです。」 「騒いでないでさっさと顔洗ってらっしゃいっ。」 「はーい。」 子供の様な返事をするエスメラルダとルナ。 「あ、朝ご飯はハムエッグとトーストか・・・良い匂いがすると思った。」 鼻をヒクヒクさせて匂いを嗅いでいるエスメラルダを、ルナが横目で見ている。 「早速匂いを嗅ぎつけたのね、さすがは食欲魔人の姉様。」 「誰が食欲魔人ですって〜!?」 再び騒ぎ出す2人。 「コラーッ、いーかげんにしなさーいっ!!」 そして別荘を揺るがすほどのエリアスの声が響いた。 その日の昼間のエスメラルダは、普段と何ら変わらない様子で立ち振る舞っていた。だ が、昼が過ぎ夜の帳が下りようとする時間になると、徐々に彼女の顔から明るさが消えて いった。 夕刻は暗闇が迫る時間・・・彼女にとって悪夢の時間であった。 「やあっ、たあっ、てええいっ!!」 夕日の映える庭で、1人棒術の稽古に明け暮れているエスメラルダ。棒術の稽古は彼女 の日課であったが、この日はいつになく険しい表情で棒を振るっていた。 「エスメラルダ姉様、まだ稽古してる。昼過ぎからずっとだわ。」 ルナが心配そうにエスメラルダを見ている。 ルナは昨夜、エスメラルダがブルーザーの亡霊に侮辱の言葉を浴びせられた事を知らな い。無論、亡霊を見た2人の姉はルナにその事を告げていなかった。やっと潔癖症から立 ち直ろうとしている妹に余計な心配をかけたくなかったからだ。 「エスメラルダ、もう夕ご飯の時間よ。稽古はそれぐらいにしなさい。」 エリアスがそう言うと、エスメラルダは稽古を終了して別荘に戻ってきた。 その日の夕食は昨日のように明るくなかった。なぜなら、エスメラルダが暗い表情で黙 々と夕食を食べていたからだ。 「ごちそう様・・・汗かいたから先にお風呂入ってくる。」 ボソッとした声でテーブルを立ったエスメラルダは、外にある露天風呂に歩いて行った。 「エスメラルダ姉様、元気ないね。夕ご飯こんなに残して。」 「ええ、いつもなら私達の分まで残らず食べるくせに。」 エリアスとルナは、エスメラルダの消沈した姿を見て、心が痛んだ。 「ルナ、エスメラルダと一緒にお風呂に入ってあげなさい。後片付けは私がやっておく わ。」 「うん、わかった。」 姉の言葉に、ルナは快く答えた。 「・・・疲れた。これぐらい疲れたら悪い夢なんか見なくて済むだろーな。」 露天風呂に浸かりながら、エスメラルダは満点の星空をボンヤリ眺めた。 いつもより多く稽古をしているので、今夜はグッスリ眠れる・・・と、思った。 「ふう・・・」 そう溜息をついた時であった。 (アホか・・・その程度で悪夢から逃げられるとでも思ってンのかい?・・・) 不意に聞こえてきたブルーザーの声に、エスメラルダは驚愕した。 「また性懲りもなく出てきたな!?」 風呂から飛び出して周囲を見まわすが、どこにもブルーザーの亡霊はいない。 そのエスメラルダの背後から何者かがゆっくり近寄ってくる。そして、背後からエスメ ラルダの巨乳を鷲掴みにした。 「オッパイみーっけっ。」 「ぎゃああ〜っ!?さっさと成仏しろブルーザーッ!!」 絶叫を上げたエスメラルダが肘鉄をお見舞いする。 「うきゃっ。」 背後から巨乳を掴んだ者が、悲鳴を上げてお湯の中に倒れた。 「あ・・・る、ルナ?」 倒れていたのはルナだった。 「う〜ん・・・あたしはブルーザーじゃな〜い・・・」 「あーっ、ルナ!?しっかりしてー!!」 肘鉄を食らったルナは、目を回しながらお湯に浮いている。気絶したルナを抱え、うろ たえるエスメラルダであった。 「・・・ごめんねルナ・・・」 「いいの、あたしが脅かしたから悪いの。」 寝室でエスメラルダが、申し訳なさそうな顔でルナの顔を見ている。 「まったく、何が起きたのかと思ったわよ。」 「えへへ・・・」 エスメラルダは愛想笑いをしながら姉の顔を見ている。 「でも姉様達は、どーしてブルーザーの事をあたしに言ってくれなかった訳?」 怪訝な顔をしたルナが、姉達の顔を見た。 「そ、それは・・・」 2人の姉達は急に表情を曇らせてルナを見た。 「ごめんなさい、あなたに心配かけたくなかったのよ。」 「ルナが怖がると思ったから。」 ルナに謝るエリアスとエスメラルダ。そんな姉達を呆れた目で見ているルナ。 「もう、水臭いじゃないの。エスメラルダ姉様の痛みはあたしの痛みでもあるのよ。そ れなのにあたしだけ味噌っかすにして・・・わかったわ・・・」 急に立ちあがったルナが、スタスタと歩いて寝室を出ていった。 「ルナ・・・」 怒った顔の妹を見て、エリアス達は溜息をついた。 「言っとけばよかったね・・・」 「そうね、どうせわかる事だったから。」 ルナを怒らせた事を悔やむエリアス達であった。 2人が仕方なさそうにボヤいていると、急に寝室の扉が勢いよく開かれた。そこにはな んと、白装束に身を固めたルナの姿があった。 「る、ルナ?どーしたのその格好・・・」 ルナの姿を見たエリアス達の目が点になる。ルナの頭には捻り鉢巻に2本のローソク、 首からは沢山の怪しげな魔よけグッズがブラ下げられ、片手には十字架、もう片手にはフ ライパンが握られていた。 「まかせて姉様、ブルーザーの幽霊が出たらあたしがやっつけてやるわっ。エスメラル ダ姉様はあたしが守ってあげるっ。」 「あ、あのね、それはちょっと違うんでない?」 勇ましく宣言するルナに、開いた口が塞がらなくなるエリアス達であった。 「ねえ、ルナ。ブルーザーの幽霊はいるかしら。」 「今の所いないわね。来るなら来なさいヒゲゴリラッ。」 深夜遅く、寝室でエリアスとルナがエスメラルダを守るべく待機していた。 「あのー、そんなに騒がれると眠れないんだけど・・・」 迷惑そうな顔をしているエスメラルダが、エリアスとルナを見ている。 「あなたは早く寝なさい、寝不足は体に毒よ。」 「姉様達が寝かせてくれないのに、ブツブツ・・・」 文句を言いながらエスメラルダは毛布に潜って寝入ってしまった。 「寝たの?」 「ええ、棒術の稽古で疲れてるみたいね。」 エリアス達は、エスメラルダの顔を見て安心した表情になる。 しかし、本当の苦悩はこれからであった。エスメラルダを苦しめているのはブルーザー の亡霊ではない。彼女の心に巣食うセルドックへの悪夢である。 エスメラルダが寝入ってから1時間後、部屋の照明は消され、窓から入ってくる三日月 の光だけが唯一の照明となっていた。 「エリアス姉様、起きてる?」 「ううん、私の事はいいから、もう寝なさい。」 ベッドの中央に寝ているエスメラルダの両脇には、エリアスとルナが心配そうに控えて いた。 「う、ううん・・・」 不意に、エスメラルダの口から苦悶の声が漏れた。 「セルドックの夢を見ているわ。」 エリアスがエスメラルダの額に手を当てる。 「う、うう・・・ふう・・・うっ!?ああ・・・ああーっ!!」 額に手を当てた時は落ち着いた様だったが、すぐさま悪夢にうなされ始めるエスメラル ダ。 「ああ、どうしよう・・・」 もはやブルーザーの亡霊がどうのと言っている場合ではなかった。手の施し様がないル ナは、オロオロとうろたえた。 「エスメラルダの手を握りなさい。」 「う、うん。」 2人はエスメラルダの手を取って、両側に寄り添った。 「ダメだわ・・・手を握ったぐらいでは悪夢を押さえられないわ。」 迷ったエリアスは、急に寝間着を脱ぎ捨ててエスメラルダを抱きしめた。エリアスの豊 満な巨乳が、エスメラルダの顔を覆った。 「ルナ、あなたもエスメラルダを抱くのよ。」 「えっ?あ、わかった。」 突然の姉の言葉に、ルナは白装束を脱ぎ捨ててエスメラルダの頭を抱きしめる。 「しっかりして姉様・・・」 「がんばるのよ・・・セルドックになんか負けないで・・・」 2人は悪夢と戦うエスメラルダに声をかけ続けた。 「うああっ・・・くるな・・・ああっ・・・」 悪夢の作り出す漆黒の暗闇の中、エスメラルダは悲痛な叫びを上げていた。 「まぁてえ・・・にぃげるなあ・・・」 逃亡するエスメラルダの背後からセルドックが追いかけてくる。 「ハアハア・・・あ、あいつは・・・」 逃げるエスメラルダの前に、彼女に催眠術をかけた張本人である、闇の忍者ヒムロがヨ ロヨロと歩いてくる。 「エスメラルダひめ・・・たすけてくれ・・・でござる・・・」 無敵であった筈のヒムロは、何故かボロボロ状態になっており、エスメラルダに手を伸 ばして助けを求めてきた。 「ひ、ヒムロ?」 「おぬしに・・・かけた催眠術は・・・もう、解く術は・・・ござらん・・・」 ヒムロがそう言った途端、彼の体がバラバラになって崩れ落ちた。そしてエスメラルダ の足元にヒムロの生首が転がってきた。 「ひっ!?」 「ギャハハ・・・裏切り者がぁ〜。次はお前の番だぁ〜。」 セルドックの声と共に、周囲から無数の鎖が飛んできてエスメラルダを拘束した。 「うああっ・・・」 悲痛な叫びをあげるエスメラルダは、鎖で縛られ服を奪われて吊り下げられた。その全 裸のエスメラルダを、セルドック達3人が鞭やハンマーで容赦なく責めたてた。 「イ〜ッヒヒ・・・くるしめぇ・・・もっと苦しめぇ・・・」 「キャハハ〜、イイざまだねぇ・・・」 「ほうら・・・さっさと降参しなぁ・・・ボーヤァァ・・・」 暗黒の闇にセルドックと女狂戦士の声が響く。 「ああ、やめてえ・・・」 抵抗する術がないエスメラルダは、されるがままに劣悪なる拷問を受けている。 「たすけて・・・姉様・・・ルナ・・・」 エスメラルダは藁にもすがる思いで姉と妹の名前を呼んだ。 その時である。 (しっかりして姉様・・・) (がんばるのよ・・・セルドックになんか負けないで・・・) 希望の声と共に、暗闇の中から一筋の光が差し込み、エスメラルダを照らした。 「なんだっ、これはあっ・・・」 突然の光の襲来に、セルドックと女狂戦士達はうろたえた。 「あ、姉様、ルナ・・・」 それは紛れもなくエリアスとルナの声だった。そして、光の中から2つの人影が出現し た。 それは王家の宝剣、太陽の牙をかざすエリアスと、2丁の拳銃を持ったルナであった。 「エスメラルダを苦しめる者は私が許さないっ。」 「姉様をイジメる奴はあたしがやっつけてやるっ。」 2人は、そう叫びながら女狂戦士達の前に立ちふさがる。 「てめえら〜、なめンじゃないわよ〜!!」 「この小娘があ〜!!」 エリアスとルナに迫るギルベロとラーガ。 「邪魔よカマキリ女っ。」 「消えなさい筋肉オバさんっ。」 襲いかかる女狂戦士達を、エリアスとルナが瞬く間に倒した。 「ぎょえええ〜っ・・・」 悲鳴を残し、女狂戦士達は闇に吸い込まれていった。 「ああ、あっ!?」 その瞬間、エスメラルダを拘束していた鎖がバラバラになった。そして、戦姫の鎧がエ スメラルダに装着され、ドラゴン・ツイスターが彼女の手にもたらされた。 「後はセルドックだけよ。倒すのよ、あなたの手で。」 エリアスの声に、エスメラルダはドラゴン・ツイスターを構えた。 「がああ〜おおっ、エスメラルダアア〜ッ!!」 残ったセルドックが黒い魔獣となって襲いかかってくる。 「くらえっ、トルネード・クラッシャーッ。」 大回転するドラゴン・ツイスターがセルドックを両断した。ぎゃああー、と言う悲鳴が あがり、魔獣となっていたセルドックは、元の軟弱チビに戻った。 「わーん・・・エスメラルダにイジメられたよぉー・・・助けてママー・・・」 情けないセルドックの声と共に、エスメラルダを苦しめていた暗黒の悪夢が打ち破られ た。 「やったよ。姉様、ルナッ!!」 振り向くエスメラルダにニッコリと微笑んだ姉と妹は、光の中に帰っていった。 「やっと・・・悪夢から解放された・・・」 そんな彼女の耳に、ブルーザーの声が幻聴の様に聞こえてきた。 (ようやく悪夢から解放されたか・・・フン、もっとてめえが苦しむのを見ていたかっ たんだがな・・・まあいい、これでオレは安心して地獄に帰れるぜ・・・アバヨ、3姉妹 ども・・・) 「ブルーザー?」 振り返るが、どこにもブルーザーの姿はない。 「あいつ・・・」 なぜかブルーザーに対する怒りも憎しみもなかった。ただ、安堵だけがエスメラルダに もたらされていた。 エスメラルダを穏やかな光が包んだ。そして、その中にエスメラルダは同化して、安ら ぎの世界へと帰って行った・・・ 「うーん・・・」 眩しい朝の光がエスメラルダの顔を照らし、彼女は目を覚ました。 「もう朝か・・・よく寝たなあ・・・ふああーあ。」 大きなあくびをするエスメラルダは、悪夢から解放されて久しぶりの安眠を得る事がで きた事を実感した。 「なんだったんだろう・・・今まで見てきた夢は・・・それに、ブルーザーは何の為に ボク達の前に出てきたンだろう・・・本当にボク達を笑う為に出てきたのかなあ・・・」 寝ぼけマナコで天井をボンヤリ見つめながらそう呟いた。 そんな彼女の顔を、とっても柔らかいものが包んでいた。 「・・・ところで・・・なんでボクは姉様とルナのオッパイに挟まれてるワケ?」 エスメラルダは、上半身裸のエリアスとルナの乳房に挟まれていたのだった。その姉と 妹は、エスメラルダを抱いたままスヤスヤと寝息を立てて眠っている。 「アハハ・・・爆睡中なワケね、むにゅ!?」 豊満な巨乳とマシュマロの様に柔らかいオッパイが、エスメラルダの顔へ、さらに押し つけられる。 「んん・・・エスメラルダ・・・私たちがいるからぁ、だいじょうぶよぉ・・・んん〜。 」 「あねさま〜、悪い夢はもう見なくていいのよぉ〜、ムニャムニャ・・・」 寝ボケている2人は、寝言を言いながらエスメラルダに抱き着いてくる。 「ねー、2人ともいいかげん起きてくれないかなー、動けないんだけど・・・」 エスメラルダは姉と妹のオッパイに挟まれたまま、2人を起こそうか、そのままにしよ うか迷っていた。