ネイロスの3戦姫 3姉妹、愛の休息
最終話その.3 悲しき記憶の清算
未来の義兄弟3人が不毛な悩みを抱えている頃、3姉妹は夕食の準備に勤しんでいた。 「ルナ、お皿取って。そっちの食器棚にあるよ。」 「わかった。」 テーブルの準備をしている2人の元に、エリアスが自慢の手料理を持って現れた。 「お待たせー。」 エリアスが持ってきたのは、肉を煮込んで作ったシチューであった。 「わあーいっ、頂きまーす。」 「どんどん食べてね、いっぱい作ったから。」 姉の手料理に喜ぶエスメラルダ達。ふだん城では使用人達の作ってくれる食事しか食べ ないので、たまに自分達で作る食事の味は格別であった。 また、一国の姫君と言う立場からも周囲に気遣う事が多く、特に王の后として権威を振 るっていた彼女等の継母であるマグネアに気を使って、砂を噛むような思いをしていた3 姉妹は、久しぶりの解放感ある食事を堪能したのであった。 「あー、おいしかったー。もう食べられないよ。」 お腹いっぱいのエスメラルダが満足そうにそう言った。 「食器を片付けましょうか。ルナ、手伝って。」 「はーい。」 満腹状態で動けないエスメラルダを後にして、エリアス達が食器を流しへと運んだ。 鼻歌を歌いながら食器を片付けていたルナが、流しの脇に手を伸ばそうとした時であっ た。 「きゃっ?」 流しのゴミ箱につまづいたルナの腹部に、ゴミ箱から飛び出した豚肉の脂身がベッタリ とついてしまったのだ。 「やだあ、脂だらけじゃないの・・・あぶら?」 下半身についた脂身を手で払ったルナの顔が急に曇った。 「脂身・・・あぶら・・・」 ルナの脳裏に、脂身で肥え太ったダルゴネオスの顔が浮かんだのだ。凶悪な暴君に陵辱 された彼女の心に、忌まわしい記憶が蘇った。 「脂、あぶら・・・」 「どうしたのよルナ。」 呆然としている妹に、エリアスが声をかけてくる。 「え?あ、あ・・・何でもないの・・・脂がついちゃって・・・」 「あら大変。すぐに洗ってらっしゃい。」 「う、うん。」 曖昧に答えたルナは、タオルと石鹸を持って外の井戸へと歩いていく。 「エスメラルダー、あなたも手伝ってよ。」 「ふあーい。」 エリアスに言われて、重い腰を上げたエスメラルダが流しに歩いてくる。 「あれ、ルナは?」 「脂身で汚れたから洗いに行ったわよ。」 「ふーん。」 2人の姉は、ルナの表情が変わった事に気付かず、食器の片付けを続けた。 「さあ、終わったわ。コーヒーでもいれましょうか。」 「そーだね。」 コーヒーカップを3つ持ってテーブルに戻るエリアス達。 寛いでいた2人は、ルナがいつまでたっても戻ってこない事に気が付き、妹が出ていっ た方向に目を向けた。 「何してるのかなルナは。」 「遅いわね、手を洗うぐらいでこんなにかかるかしら。」 その言った時、エリアスは城の浴場で泣きながら身体を洗っていたルナの事を思い出し た。 「もしかしてあの子・・・」 「どうしたの姉様。」 椅子から立ったエリアスは、血相を変えて井戸場に走っていく。 「あーっ、待ってよっ。」 コーヒーカップを置いてエスメラルダも後を追う。 井戸は外にあり、月明かりの下でバシャバシャと水音が響いている。 「ルナ、何してるのっ。」 エリアスは絶句した。寒空の下で、ルナが井戸の水を頭から被りながら、ヒステリック に体を洗っているのだ。 「あ、姉さま・・・あぶらが取れないの・・・汚れが落ちないの・・・」 パンティー1枚の姿で震えながら立っているルナの全身に、爪で引っ掻いた後が無数に あった。 「血が出てるじゃない・・・」 後から来たエスメラルダが、傷だらけになった妹の身体に自分の上着を着せた。 「早く部屋に連れていって、風邪を引くわ。」 「うん、わかった。」 エスメラルダはルナの肩を抱いて寝室へと連れて行く。 「うかつだったわ、あの子がダルゴネオスに辱められ事を忘れてた。」 井戸場に転がった桶を見ながら、エリアスは悲しそうに呟いた。 ルナは脂身で汚れた事により、脂肪太りしたダルゴネオスに苦しめられた事を思い出し ていたのだ。 彼女にとって、脂のベタベタとした感覚は汚らわしい汚物そのものだった。 「あなたは汚れてなんかいないのよ、ルナ・・・」 そう言うと、妹達の後を追って部屋に戻って行った。 ルナとエスメラルダの入っていった寝室には、巨大な丸いベッドが中央に据えられてい た。 そのベッドは、まだ幼くお転婆だった3姉妹に手を焼いたエドワード王が、特注で作ら せた物である。その大きさは半端ではなく、大の大人数人が雑魚寝しても余りあるほどで あった。 そのベッドの端に、ルナとエスメラルダが座っている。 「どーしてあんなことしたの、風邪ひく所だったんだよ。」 「・・・うん。」 「うん、じゃ判らないよ。」 ルナはベッドの上でシーツに包まったまま動かなくなっている。訳の判らないエスメラ ルダは、やれやれといった表情で妹を見た。 「エスメラルダ、ちょっと。」 エリアスが手招きしてエスメラルダを呼んだ。 「なに?」 「あのね、ルナは・・・」 エスメラルダにルナの心情を説明するエリアス。 「そんな事が・・・あの薄汚いダルゴネオスにイジメられたんだ、ヒステリーにもなる よね。」 頷くエスメラルダ。 「薬を取ってきてくれない?あの子、体中を自分の爪で掻きむしってるわ。」 「わかった。」 エスメラルダは別の部屋に行き、薬箱を探し始めた。 「ルナ、大丈夫?」 ベッドの上でうずくまる妹のそばにエリアスは座った。 「・・・うん、大丈夫。でも・・・」 手を姉に見せながらルナは泣き始めた。 「脂が取れないの・・・汚れが取れないの・・・あたし・・・汚れてるの・・・汚いの・ ・・」 嗚咽を漏らしながら、泣いているルナに向き直ったエリアスは、ルナが包まっているシ ーツをそっと引き下ろした。 「あ、ダメッ。見ちゃダメッ!!」 慌てて身体を隠そうとするルナ。 「どうして見ちゃダメなの?汚いから?この綺麗な身体のどこが?」 ルナの肩を抱いたエリアスは、優しい声でそう言った。 「だって・・・だって・・・」 「あなたは汚れていないのよ。だって、こんなに綺麗じゃない・・・」 そう言ったエリアスは、何を思ったのかルナの太ももを舌で舐め始めた。 「あ、やっ・・・やめて・・・何するの・・・姉様の口が汚れるよお・・・」 ルナは声を上げて足を閉じようとする。だが、エリアスはお構いなしにルナの太ももを 舐め続けた。 「どうしてそんなに汚いって言うの?あなたの体は綺麗だからこんなに舐めれるのよ。 ほら、ここも・・・」 そう言うと、ルナのおヘソも舐めた。 「あうう・・・くすぐったいよお〜。」 「くすぐったいの?それは汚れてないからよ。ルナが綺麗だからくすぐったいって感じ るの。わかる?」 そして、ルナの乳首に唇を当てると、軽くキスをした。 「あうっ!?」 ルナは体を震わせて身悶えた。 今まで感じた事のない、くすぐったいとも、気持ち言いとも言えない奇妙な感覚がルナ の全身を駆け巡った。 確か・・・ダルゴネオスにも体中を舐め回されたが、その時はそんな感覚は全くなかっ た。恐怖を伴った、おぞましい感覚に押し潰され、苦痛だけしか感じられなかったのだ。 エリアスは今、ダルゴネオスと同じ様な事をルナにしている。なのに、この感覚はダル ゴネオスに舐められた時の苦痛とは違う、全く異色の感覚であった。 「綺麗な身体をこんなに傷つけて・・・引っ掻き傷だらけじゃ、ジョージに笑われるわ よ。」 「あ、はああ・・・うっ。」 エリアスに乳首を舐められ、ルナは喘ぎ声を上げた。 宙に駆け上がるような感覚だった。快感・・・そう、それは正に快感であった。 「あう・・・あねさま・・・」 ルナは、身体を震わせてベッドに倒れこんだ。 「あなたにもし汚れてる所があるなら、それはダルゴネオスに汚されたルナの記憶よ。 私が全部綺麗にしてあげる・・・ルナの記憶を全部・・・」 そう言うと、エリアスはもう一度ルナの乳首にキスをした・・・ 「薬箱やっと見つかったよー、って・・・あ?」 別の部屋から薬を探しに行っていたエスメラルダは、ベッドの上で横たわっているルナ と、妹の身体を舐めている姉の姿を見て唖然とした。 「あ、あの〜。い、い、い・・・いったい、何をしてるワケ?」 「見て判らない?ルナの身体を綺麗にしてあげてるのよ。」 エリアスは、目を点にしているエスメラルダに向き直った。 「そ、そうなの・・・そンじゃ、ボクはこれでぇ・・・」 余りの突然の事に、エスメラルダは体をギクシャクさせながら部屋を出ていこうとした。 そんな彼女に、姉が声をかけてくる。 「エスメラルダ、あなたも来て。」 「えっ?は、は〜い。」 薬箱を持ったまま、恐る恐るエリアス達に近寄る。 「ルナの心の汚れを綺麗にするには、こうするしかないの。エスメラルダ、あなたも手 伝って。」 「と、ゆーことわ・・・ボクもルナを舐めろって事でわ・・・」 「そうよ、イヤな顔しちゃダメ。私達が嫌がったらルナは一生、誰も受け入れられない 体になるのよ。」 「は、はひ・・・わかりましたです、あ、あ、あ、あねさま・・・」 呂律の回らない口調でそう言いながら、エスメラルダはルナの肩を掴んで舐めた。 「る、る、る、ルナ・・・き、綺麗だよお〜。ほ、ほら、こんなに〜。」 「エスメラルダ姉様・・・」 強張った顔で笑うエスメラルダを見たルナが、突然飛び起きると姉の体に抱きついて唇 を重ねてきた。 「んむむ・・・ぷわ!?ちょっと、何を。」 「姉様・・・あたしの体を、もっと舐めて、綺麗にして・・・」 「ルナ?」 エスメラルダを見つめるルナの目は、とても切なそうな眼になっていた。それは・・・ 悲しみの淵から助けを求めるルナの心の叫びであった。そして妹の悲しみを感じたエスメ ラルダは、強張った表情を解いて、ルナを見た。 「ルナ・・・わかった、舐めてあげるから。」 そう言うと、エスメラルダはルナの肩と首筋をそっと舐めた。 「ああうっ、いい・・・もっと・・・」 ルナはエスメラルダに舐められる度、姉の体をギュッと抱きしめて喜んだ。まるで、薄 皮が1枚1枚剥がれていく様に、ルナの心からダルゴネオスに汚された記憶が薄れていっ た。 「あハ・・・あハは・・・綺麗になる・・・あたしの体が・・・」 涙をボロボロ流し、ルナは汚れから解放される喜びに浸った。 「あ、あねさまぁ・・・」 そう言いながら、ルナは目を閉じてベッドに横たわった。 「ルナ?寝ちゃった。」 幸せそうな顔で、ルナは眠りについていた。 「疲れてたのよ、この子。私達に心配かけまいと無理して笑って・・・見て、赤ちゃん みたい。」 エリアスはそう言って妹の頭を撫でた。体を丸め、指をしゃぶりながら寝ているルナは、 本当に赤ん坊のようであった。 「オヤスミナサイ、私達の可愛い天使さん・・・」 そう呟き、エリアスは妹の頬にキスをすると、傍らに横たわって目を閉じた。 「あーあ、なンだろねー、この2人・・・」 寝ている姉と妹を見ているエスメラルダは、頭をボリボリ掻きながらボヤいた。 「妹とキスしちゃったよ、どーしよう。」 顔を少し赤らめて、自分の唇に指を当てる。考えてみれば、小さな頃はしょっちゅう姉 や妹とふざけてキスをしたものだが、改めてキスをしてみれば、妙にくすぐったい気持ち になったのであった。 「まあいいか、ファーストキスはライオネットだったんだし。」 変な理屈で納得したエスメラルダは、部屋の明かりを消してベッドに潜り込んだ。 「お休み、姉様、ルナ。」 姉と妹の体に毛布を被せ、エスメラルダは眠った。