魔戦姫伝説(ミスティーア・炎の魔戦姫)第2話.伏魔殿の陰謀31
罪人達への刑罰
ムーンライズ
大地を砕く轟音、闇夜を引き裂く閃光。
賢者の石の破壊と共に、巨大なバーゼクス城が崩れて行くのだ。
(暴食国家)と呼ばれたバーゼクスの象徴が、醜い権力と権威の偶像が、そして・・・
偽りに染められた雅の幻影が・・・全てが破壊されていった・・・
雷撃をも退ける爆光の中から、翼をはためかせて飛び出す複数の人影。
それは一直線に夜空へと駆け出した。弧を描きながら安全なる場所を目指す。全ての破
壊が及ばぬ所へと・・・
だが、飛び出した人影のうち、3つがバランスを崩しながら急降下し始める。
墜落に近いかたちで地面に降りた3つの人影、それはレシフェ、天鳳姫、ミスティーア
の3人だった。
彼女達の様子がおかしい。酷く苦しそうにしているのだ。
「あう、うう・・・力が抜けますわ・・・?」
「魔力がなくなっていくわ・・・さっきの戦いで魔力を使い過ぎたのよ・・・」
ゲルグとの壮絶な戦いは、魔王から賜った魔力を全て出し切ってのものであった。
3人の近くに、スノウホワイトを抱えたハルメイルが降り立つ。
「みんな大丈夫っ!?」
「え、ええ。少し疲れただけですから・・・」
よろめきながら気絶しているエリーゼ姫を抱き抱える魔戦姫達。崩れるバーゼクス城の
瓦礫が飛んで来るため、早急にここを離れねばならない。
城に背を向ける魔戦姫達だった、が・・・
彼女達は背後から迫る、邪悪な気配を感じて立ち止まった。
思わず振り返る一同。そこには・・・
「ぐうう・・・わたしは死なぬぅ〜。我が精神は不滅なのだあ〜っ。」
城を焼く業火の中から、足を引き摺って現れたその男は・・・
「まさか・・・で、デスガッドッ!?」
驚愕の声をあげるミスティーア達。
奴は生きていたのだ。リーリア達に倒され、賢者の石の破壊に飲み込まれたはずのデス
ガッドは生きていたっ!!
満身創痍であったが、その邪悪な精神は健在だった。魔戦姫を睨む眼に、激しい憎悪の
炎が燃え上がる。
「ぬううっ、貴様等〜っ。よくも、よくも・・・ゆるさんぞ・・・覚悟しろっ、地獄の
道連れしてやるわ〜っ!!」
自身の賢者の石を手に、デスガッドは吠えた。
身構える魔戦姫達。だが、満身創痍なのはデスガッドだけではない。ゲルグとの戦いで
力を使い果たしたミスティーア達も同様だった。
「な、なんのっ、負けませんわよっ。」
デスガッドを睨み返すが、もはや戦える状態ではなかった。
その時である。
「・・・デスガッドは、私が倒しますわっ!!」
ハルメイルに抱えられていたスノウホワイトが叫んだ。そして、よろけながら地面を踏
みしめる。
「す、スノウホワイトッ!?ダメだよっ、そんな身体で・・・」
「無理をしないでっ、死んでしまいますわっ。」
慌てて止めようとするハルメイルと魔戦姫達だったが、スノウホワイトの強い意思を制
する事はできなかった。
「ごめんなさい・・・でも、デスガッドとの決着は私の手でつけたいのですっ、どうか・
・・」
「わかった、もう何もいわないよ。」
苦笑いしたハルメイルが、スノウホワイトに白いドレスを手渡した。
そして、苦痛を堪えながらデスガッドの前に進み出るスノウホワイト。
「はあはあ・・・地獄に行くのはあなた1人よデスガッド・・・2度と復活できない様、
私が地獄に送ってあげますわっ!!」
スノウホワイトの声が響き、対峙したデスガッドが狂喜の声を上げた。
「ふっ、ふはははっ!!白雪姫・・・待っていたぞ白雪姫〜っ。貴様は私のオモチャだ・
・・もう一度、魔人の子供を飢え付けてやるぞ〜っ。フヒャハハ〜ッ!!」
狂った声を上げ、デスガッドが迫る。だが、その彼の体に無数の縄が巻き付いた。ドワ
ーフ達が縄を投げつけてきたのだ。
「デスガッドメッ!!ヒメサマノカタキ、オモイシレッ!!」
全ての怒りを込め、ドワーフ達はデスガッドの体を締め上げた。
「ぐわわっ!?おのれデク人形めが〜っ。」
もがくが、怒りの篭った縄を絶つ事も解く事もできない。
そしてデスガッドと対峙するスノウホワイトの背中を、魔戦姫達が支える。
「今ですわよっ!!」
「ええっ。出でよっ、真実の鏡っ!!」
ドレスは回転しながら真実の鏡へと変化し、それを両手で受けとめる一糸まとわぬ姿の
スノウホワイト。
だが、デスガッドも負けじと賢者の石をかざす。
「おのれ〜っ、鏡など封じて・・・ぐわっ!?」
デスガッドが悲鳴を上げる。賢者の石が砕け散ったのだ。
唖然とするデスガッドを、スノウホワイトの声が貫いた。
「デスガッド・・・己の真実の姿を見なさいっ。」
その声と共に、鏡にデスガッドの醜い姿が映し出された。その姿は・・・枯れ木のよう
に痩せ細った手足、異様に膨らんだ腹部。そして歪んだ老醜の顔・・・
それは地獄の餓鬼そのものであった。その姿そのままに変貌するデスガッド。
「のわあっ!!こ、これはっ!?」
叫ぶデスガッドの縄を解いて、素早く逃げるドワーフ達。スノウホワイトの最終技が出
るのだ。
「・・・その醜い姿こそ、あなたの真実の姿っ!!さあ、これで終わりですわ・・・ア
ウフヴィーダーゼーン(さようなら)、デスガッドッ!!」
デスガッドの体がグニャリと歪み、鏡に映った地獄絵図へと吸い込まれて行く。
「あひいい〜っ、いやだあああ〜っ、ああぁぁぁ・・・」
断末魔を残し、地獄へと送られるデスガッド。
悪烈なる野望を抱いたデスガッドの、惨めなる最後であった・・・
デスガッドを地獄に送ったスノウホワイトが、よろけながら呟く。
「やりましたわ・・・デスガッドを・・・たおし・・・ましたわ・・・」
ニッコリと微笑み、そして力尽きて倒れ込むスノウホワイト。その身体を魔戦姫とハル
メイルが抱きとめた。
「スノウホワイトさんっ!?」
「しっかりしてっ!!」
揺り起こすが反応はない。スノウホワイトは魔力を使い果たして気絶したのであった。
スノウホワイトを抱き抱える一同の頭上から、城の瓦礫が降り注いでくる。早く逃げね
ば・・・
慌てる一同の周囲に、半円球状のバリアーが出現した。ミスティーアが振り返ると、そ
こにはリーリアが両手をかざして立っていた。
助けに来たリーリアの元に駆け寄る一同。
「リーリア様っ!!」
「さあ、早く逃げますわよっ!!」
一同を念力で抱え上げ、安全な場所まで飛んで行くリーリア。一同が向かった場所は、
バーゼクス城を一望する丘の上であった。
そこには黒竜翁とサン・ジェルマン。そして魔界から派遣された魔族の仲間が集まって
いた。
丘の周辺では、魔族達が街から救出された人々を看護している。
リーリア達を向かえた魔族の医師が、気絶しているスノウホワイトの容態を看た。
深刻な顔で診察していた医師だったが、やがて安堵の笑みを浮べた。
「ふう、スノウホワイト様は大丈夫ですよ。気を失っておられるだけです、命に別状は
ありません。」
その声に、一同は喜びの声を上げた。
「ああ、よかったですわ・・・」
胸を撫で下ろすミスティーアだったが、スノウホワイトの容態は予断を許さぬ状況だ。
そんな時、スノウホワイトを囲む一同の頭上から低く響く声が響いて来た。
重厚なるその声の主は・・・
「この声は・・・魔王様っ!?」
仰ぎ見る上空に、闇の魔王の姿があった。
『・・・どうやら、終わった様だな・・・』
魔王の声に一同は深く頭を下げる一同。そしてリーリアと八部衆の3人が口を開いた。
「はい、全て終わりました。デスガッド一味も、賢者の石も、全て壊滅させました。」
『・・・うむ、大儀であった。誉めてつかわすぞ・・・スノウホワイトは大丈夫か?早
く魔界で治療を受けねばならぬようだな・・・診療所で最優先に治療を受けさせるよう手
配せねば・・・』
スノウホワイトを気遣う魔王に、ハルメイルは感謝の言葉を告げる。
「ありがとうございます魔王様、おかげでスノウホワイトは助かりました。」
だが、ハルメイルへの返答は鋭い叱責であった。
『ありがとうございますだと?貴様どの口でそんな事をほざきおるかっ!!八部衆の責
務を放棄し、己の感情に流されて単独行動するとは・・・魔界幹部たる自覚が足りぬわっ、
恥を知れっ!!』
天地を揺るがす怒声に、ハルメイルは深く陳謝した。
「申し訳ありません・・・かくなる上は、いかなる厳罰もお受け致します。」
『・・・当たり前だ。ハルメイル、お前には1ヵ月の謹慎を命ずる。病院で頭を冷やし
て来いっ!!』
厳しい口調だが、その内容は驚くほど軽いものだった。魔王の言葉に唖然としているハ
ルメイル。
「あ、あの・・・病院で頭を冷やせとは・・・?」
戸惑うハルメイルの肩に、リーリアはそっと手を置いた。
「わかりませんか?魔王様はスノウホワイトを看病してやれと仰っておられるのですよ。
」
リーリアの穏やかな声に、ハルメイルも笑顔を取り戻した。
「あ、あはは・・・そうだったのか・・・ありがとうございます魔王様っ。」
感激の声を上げて、何度も魔王に頭を下げるハルメイルだった。スノウホワイトを抱え、
魔界ゲートを開ける。
魔界に向かおうとしたハルメイルは、丘の片隅に横たわっている自分の部下の姿を見た。
「みんな・・・ゴメンね・・・」
自分の軽率な行動で命を落としてしまった部下達に謝る。もの言わぬ彼等の顔には、穏
やかな微笑があった。
・・・私達の事は御気になさらないで・・・早くスノウホワイト様を・・・
彼等はそう言っていた。
「わかったよ・・・リリちゃん、後の事はお願いね。」
その言葉にリーリアは無言で頷いた。そして、ハルメイルとスノウホワイトは魔界へと
姿を消したのだった。
それを見届けて溜息をつく闇の魔王。
『・・・世話の焼ける奴だ全く・・・それと、世話の焼ける奴は、まだ他にもいるよう
だな・・・』
魔王の視線がミスティーア達に向けられる。
そこには、魔力を使い果たして動けなくなっているレシフェ、天鳳姫、ミスティーア。
それにエルとアルの姿があった。
「ああ〜、もうダメですわ〜。」
「すぐ死ぬアルよ〜。そっこーで死んじゃうのコトね〜。」
情けない声で泣いているミスティーアと天鳳姫。そして、心配そうに寄りそうリンリン
とランラン、それにアルカとジャガー神を見て、レシフェはうらめしそうに呟いた。
「・・・なんで、あなた達は平気なの〜?私達は疲れて動けないですわよ。」
そんな呟きに、申し訳なさそうに笑うアルカ達。
「私とジャガー君は、少ししか魔力を奪われませんでしたから・・・」
「あたしとランランはキョンシーだから大丈夫ですし・・・」
「ナハハ・・・キョンシーは不死身ですからズラ。」
でも怪我もなく、無事な姿を見せるアルカ達を安堵の気持ちで見ているミスティーア達
だった。
そして天鳳姫が、懇願の眼をして魔王に訴えた。
「あの〜、魔王様。もう少しだけ魔力を頂けませんでしょうか〜?お願いのコトです〜。
」
しかし、魔王の言葉は冷たかった。
『甘ったれるな馬鹿者っ!!余から直々に魔力を貸してもらっただけでもありがたいと
思えっ。お前達の面倒まで診きれぬわっ。』
「そ、そんな〜。」
思わず泣言を言うミスティーア達に、リーリアは優しく声をかける。
「あなた達は良く頑張ったわ・・・誉めてあげますわ・・・」
「リーリア様・・・」
その言葉に、涙ぐむミスティーア達であった。魔王も少しだけ喜びの笑顔を見せている。
『リーリア、その者達を看病してやれ。バーゼクスと人間どもを助けた英雄だからな・・
・』
「はい、魔王様。」
魔王は頷き、漆黒のマントを翻した。
『・・・では、皆の者。また会おうぞ・・・』
慈悲深きその声は、深き闇へと吸い込まれていった・・・
魔王を見送ったリーリアは、賢者の石によって魔人にされていた人々に目を向ける。
おぞましい姿にされていた街の人々だったが、魔族の治療によって皆、元に戻っている。
皆は眠ったままだが、その中に目を覚ましている者がいた。
「なんだお前達はっ!?こ、こら無礼者っ、私をバーゼクス財務大臣と知っての事かっ。
触るンじゃな〜いっ!!」
大声を出しているその者達は、街で逗留していたバーゼクスの官僚や大臣達であった、
「ほら、動かないで下さいっ。治療ができませんって・・・」
文句を言われながらも治療に専念している魔族の医師。
魔族の医師から治療を受けている彼等だったが、事の次第を知らない彼等は、見なれぬ
魔族達に口汚く文句を言っている。
そんな彼等を、呆れた顔でリーリアは見た。
「やれやれ・・・今回の騒動の原因は自分達だと言うのを理解してませんわね・・・」
モルレムや官僚達が、私利私欲にかられてデスガッドを招き入れた事が騒動の根源であ
る。
彼等には、バーゼクスの混乱を責任を持って収拾してもらわねばならない。でも、それ
を話しても彼等は了承しないだろう。開き直って逃げるのがオチだ。
リーリアは一案を思い立った。
レシフェに歩み寄ったリーリアは、ドレスのリボンを外した。
「ちょっとリボンを借りますわよ。それとジャガー神も。」
リーリアが何をしようとしているかわからないレシフェやミスティーアが、戸惑った顔
をする。
「あのー、何をされるつもりですの?」
「ええ、バーゼクス官僚達にお灸を据えてきますわ。ジャガー神、いらっしゃい。」
「はいですニャ。」
リーリアは、ジャガー神を引き連れて官僚達の元へと歩いて行った。
自分達にお仕置きをしようとする者が近寄っているなど露知らない官僚達は、相変わら
ず文句を並べている。
「城が燃えてるじゃないかっ!!さてはお前達の仕業か・・・ん?」
官僚達の視線が1箇所に集中する。そこには、黒いドレスを着た美しい淑女が静々と歩
み寄ってくるのだ。
その淑女を前にして、魔族達は恭しく敬礼した。
それを見た官僚達が怪訝な顔をする。
「なンだあんたは?こいつ等の責任者か?」
不躾に尋ねる官僚達に、淑女ことリーリアは穏やかに返答した。
「バーゼクス官僚の方々ですね?私はリーリアと申します。短い付き合いになると思い
ますが、ヨロシク願いますわ。今回はあなた方にお話がありまして参りましたの。」
淑女の言葉に、官僚達は顔を見合わせる。
「ああン?話しってなんだ。あんたは城が燃えてる訳を知ってるんだろう?ちゃんと説
明してもらおーかっ!?」
怒鳴りながら詰め寄る官僚達の背後から、がるる〜という獣の唸り声が響く。
振り返った官僚達の前に、恐ろしい獣人の姿が・・・
「のわーっ!?ば、バケモノだ〜っ!!」
腰を抜かす官僚達を睨み、指をボキボキ鳴らすジャガー神。
「やい、おめーら。ちょっとツラ貸してもらうニャ。」
「は、はい〜っ。なんのご用でしょうか〜。」
ジャガー神は、怯える官僚達を脅して近くの広場に連行した。
集められた官僚達は、芝生の上に正座させられている。
その彼等の前には、荒縄でグルグル巻きにされたパンツ一丁のモルレムがギャアギャア
喚いていた。
「こら〜っ、何をするんだ〜っ。縄を解けバカ〜ッ!!お前達〜、早く僕を助けろ〜っ!
!」
国王が縛られているのに、官僚達は助けようともしない。(と、言うかできない。)
官僚達の後ろには恐ろしい獣人が控えており、逃げようものなら八つ裂きにされてしま
うのだ。
そして、官僚達の前に黒衣の淑女が姿を見せる。
「皆様お集まりのようですわね。では、なぜバーゼクス城が燃えているか、を説明させ
ていただきますわ。」
リーリアは今までの経緯を全て話した。官僚達はデスガッドの行っていた所業を詳しく
知らなかったらしく、一様に驚愕の色を浮べている。
「なんだって・・・?バーゼクス軍の魔人化計画〜っ!?そんな、モルレム陛下っ、あ
なたはそんな恐ろしい計画に賛同されていたンですかっ!!あなたって人は・・・何を考
えてるンですか〜っ!!」
官僚達の罵声に恐縮するモルレム。
「あ、いや〜、その・・・ぼ、僕はデスガッドに脅されてて・・・その〜。お前達だっ
てデスガッドに協力してたじゃないか〜。」
「いい訳なんか聞きたくありませンよっ、この責任はどー取るおつもりですか〜っ!!」
責任の擦り付け合いをするモルレムと官僚達。彼等に主従関係など元から皆無であった
のだ。
罵声の飛び交う中、リーリアはコホンと咳払いをする。
「まあまあ、責任の有無は後回しにして頂けます?それより今後のバーゼクスをどうす
るかが問題ですわ。官僚方にも責任の一端がございますゆえ、混乱の収拾に精力を注いで
頂きたいのです。よろしくって?」
穏やかに語るが、そんな事に応じる官僚達ではなかった。
「何を言うんだっ、私達に責任などないっ!!なんでそンな事しなければ・・・ひっ!?
」
官僚達の声が詰まった。彼等を見るリーリアの視線が鋭くなったのだ。
「そうですか・・・残念ですわ、どーやらあなた達には戒告が必要ですわね。少し思い
知らせて頂きますわ・・・」
鋭く睨むリーリアを見て、官僚達はリーリアの正体を悟った。その恐ろしい正体とは・・
・
「お、おい・・・もしかしてあんたは、あ、悪魔か・・・?」
その問いに平然と答えるリーリア。
「あら、今頃気がつかれましたの?鈍感な方達ですわねえ。私は悪魔・・・全ての罪を
裁く闇の執行人ですの。」
穏やかなる淑女の微笑み。しかしその実態に恐怖する官僚達は、自分がこれからされる
事に怯えた。
「まさか・・・私達を処刑するつもりでわ・・・」
「いいえ、そんなつもりはありませんのよ。ちょっと脅すだけですから。」
その言葉に、モルレムはホッと溜息をつく。
「あ〜よかった。脅すだけかよ、ビックリさせてもう・・・」
しかし、安堵はすぐさま打ち消される。リーリアは見下すような目付きでモルレムを睨
んだ。
「あなたは何か勘違いなさってませんこと?誰があなたを脅すと言いましたか。」
「へっ?そ、そりはいったい・・・んわっ!?」
いきなりリーリアに蹴り飛ばされ、半ケツ状態で転げるモルレム。その姿を見てリーリ
アは眉を吊り上げた。
「まあ・・・なんと汚らわしい姿でしょうっ。まさに快楽に肥え太ったブタですわねっ。
快楽が欲しいなら、タップリと差し上げますわっ、プレジャー・リストレイントッ(快楽
の束縛)!!」
叫んだリーリアは、モルレムの頭に指を着き立てて呪文を唱えた。モルレムの全身に軽
い電撃が走る。
「にょおっ!?ぼ、ぼ、僕に何をした〜っ!?」
「痛みの全てが快感に変わる魔法ですわ。あなたの身体中の痛感神経を快感の神経に変
えさせて頂きましたのよ、こんなふうにね。」
そう言いながら、リーリアはモルレムの背中を爪で引っ掻いた。その痛みが・・・強烈
なる快感として全身を駆け巡る。
「う、うっひ〜っ!?き、キモチイイ〜ッ!!」
悦び悶えるモルレムを見ながら、レシフェのリボンを掴んでパシーンッと鳴らすリーリ
ア。
「引っ掻かれたぐらいで悶えるのですから、このムチで殴ればどれだけの快楽があるか・
・・タップリと知りなさーいっ!!」
振りかざされたリボンが、唸りをあげてモルレムを打った。
ビシーンッ!!ビシッ、ビシッ、バシーンッ!!
それは余りにも強烈であった。鋭い刃を持つレシフェのリボンでムチ打たれるのだから
堪らないっ。
モルレムの皮膚がズタズタに切り裂かれ、血飛沫が飛ぶ。
しかし、痛みが全て快楽に変わるため、モルレムは喘ぎ声をあげて悦びまくった。
「うひょおお〜っ!?キモチイイよ〜っ、もっと殴って〜っ、あうっ、はうっ、あひょ
おお〜んっ。」
転げ回りながら、イチモツを快感で怒張させて大量の精液を迸らせている。
でもそれは、ほんの序の口に過ぎなかった・・・
ムチで脂肪をえぐり、骨をも砕く。それでもリーリアは一切の情けも容赦も無しに打ち
続けた。
「さあっ、もっと喘ぎなさいっ!!もっと悦びなさいっ!!快楽に塗れて地獄に堕ちる
のですわ〜っ!!」
絶世の美貌を持つ黒きドレスの淑女が、汚らわしい悪党を打ちのめす・・・その光景は
まさに圧巻っ!!
今この場所に、美しくも惨酷なる刑罰の地獄が展開しているのであった。
そんな地獄の責苦を見る官僚達の股間には、生温かい小便が溢れている。
「あわわ・・・こ、怖いよ〜っ。」
顔面蒼白で震えている官僚達。その後ろではジャガー神が嬉しそうに喉を鳴らしている。
「リーリア様カッコイイニャ〜、グルル〜ン。」
そして壮絶なる拷問は20分近くにまで及んだ・・・
恐怖の虜になっている官僚達の前に、もはや人としての形を成さない肉隗が転がってい
た。
「にょほほ〜っ、キモチイイよ〜。もっと殴って〜。」
血塗れの肉隗からモルレムの快楽に堕ちた呻き声が響く。
そして肉隗に軽くヒールを乗せたリーリアが、官僚達を見ながら、女神様の様に優しく・
・・悪魔の様に惨酷に微笑んだ。
「皆様方、これが快楽に溺れ、民を蔑ろにした愚か者の末路ですわ。賢明なるあなた方
にもう一度お聞きしますね、バーゼクスの混乱を収拾し、民の為に誠心誠意勤めて頂けま
すか?」
もはや反論など一切できない。官僚達が答える言葉はただ1つだった。
「は、は〜い、はいはいっ。誠心誠意勤めさせて頂きま〜す。」
「はいは一回でよろしいですわよ。それと・・・今ここであった事は一切口になさらな
い事。もし、ちょっとでも喋ったら・・・判ってますわね?」
「は〜い。」
官僚達の(恐怖に怯えた)返答に、リーリアは満足げに頷いた。
「御理解を頂けて嬉しい限りですわ。今後の皆様方の誠意ある政治活動に期待しており
ますね、では・・・」
そしてジャガー神を従えてその場を去って行くリーリア。
「う、う〜ん・・・悪魔こわ〜い・・・」
緊張の糸が切れた官僚達は、口から泡を吹いて気絶したのであった・・・
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