魔戦姫伝説(ミスティーア・炎の魔戦姫)第2話.伏魔殿の陰謀9
怒りの天鳳姫
ムーンライズ
バーゼクス城に潜入したミスティーアと天鳳姫、そして侍女達4
人は、娘達が囚われている地下室に向かっていた。
贅を尽くして飾られた部屋は、その細部に至るまで、金銀の装飾
品が眩いばかりの光を放っている。
だが、その全ては国民の血税及び、属国からの上納金でまかなわ
れているものであり、その雅の裏には暴虐の所業が隠されているの
だ。
潜入したミスティーア達は、偽りの雅に目を奪われる事無く、バ
ーゼクスの本来の姿を示す場所・・・地下室に向けて進んでいる。
ドワーフ達が入手した見取り図を見ているミスティーアが、前を
進んでいる天鳳姫に声をかけた。
「天鳳姫さん。この先を右に曲がって・・・突き当りを左で・・・
」
「判ったのコトね、右で、左で・・・」
城の上層部には警備員は殆どおらず、ミスティーア達は労せず地
下室の近くまで進む事が出来た。
辿りついた地下室への入り口には、2人の警備兵が並んで立って
いる。
物陰から少しだけ顔を出しているミスティーアは、指先を警備兵
達に向け、小さな声で呪文を唱えて指先を軽く振った。
すると・・・
無言で立っていた警備兵2人が、同時に同じ方向に目を向けた。
「なんだ?」
1人がそう言うと、相棒の警備兵もそれに習って視線を向ける。
警備兵達は、ミスティーアが作り出した仮初めの気配に気を取ら
れて、地下室の入り口から離れた。
それを合図に、ミスティーアは一同を促した。
「今ですっ。」
警備兵が気を取られている一瞬の隙をついて、6人の潜入者達は
入り口に向かって進んだ。
気配を潜めて素早く入り口に潜り込むミスティーア達に、警備兵
の2人は全く気がついていない。
「?・・・何もなかったな・・・」
「気のせいか・・・」
潜入者を察する事無く、警備兵達は再び警護についた。後には何
事も無かったかのような静寂が戻る。
地下室の入り口を突破したミスティーア達が、入って来た場所に
視線を移した。
「まずは・・・成功ですね。」
安堵の溜息をつくミスティーア。そして緊張の糸を途切れさせぬ
よう、一同に忠言する天鳳姫。
「まだまだこれからアルね、気を抜かないコトよ。」
その言葉に、全員無言で頷いた。
地下室の入り口からは、地底深くに向けて掘られたかの如く続く
階段がある。
暗く陰湿な階段からは、足元に纏わりつくような、ねっとりした
感触が伝わってくる。その不快な感触に臆する事無く、一同は歩ん
で行った。
その彼女等の視界に、閉ざされた扉が出現した。
扉の向こうから薄明かりが漏れ、人の気配がしている。気配から
察して、人の数は複数である事が伺える。
扉の隙間から中を見る天鳳姫が、中の様子を調べた。
「男が3人・・・女の子を囲んでいるのコトよ・・・」
彼女の視界には、悪烈な面構えの男が3人、若い娘を取り囲んで
立っているのが映った。
「逃げられるとでも思ってたのかっ!?さっさと立てっ!!」
「ひい・・・ゆるして・・・たすけて・・・」
真中で座っている若い娘は、薄いボロを着させられ、酷く衰弱し
た体をブルブル震わせている。
男のうち、娘を蹴りながら罵声を浴びせている2人は兵隊で、襟
についている襟章から、階級の低い一般兵である事がわかる。
そしてもう1人、すその長いグレーの服を着ている男が、2人の
兵と娘の様子を無言で見ている。
その男の目は、鉛色をした薄気味悪い目をしており、血の通わな
い両生類か爬虫類のような雰囲気が漂っていた。
立ち上がる事も出来ないほど衰弱している娘を見たグレーの服の
男は、フンと溜息をついて口を開く。
「その娘はもう使い物にならんな・・・そいつはお前等にくれて
やる、好きにしろ。」
好きにしていいとの事に、2人の兵は喜んだ。
「へへ・・・それはありがてえ、丁度溜まってた所なんだ。」
「遠慮無く頂くッスよ。」
欲求丸だしの兵に一瞥をくれた男は、見下すような表情で廊下の
向こうにある扉へと歩いて行った。そして扉を開けながら再度兵達
に向き直った。
「遊び終わったら娘は適当に処分しろ、他の奴に怪しまれん様に
な。それと、遊ぶのはその辺の部屋でやれよ。ここから先は、お前
ら一般兵が入っていい場所じゃない、わかったな。」
そう言い捨てて、男は扉の向こうに消えて行った。
男のいけ好かない口調に、兵達は不平を漏らしている。
「なんだよ、あのデカイ態度・・・デスガッドの弟子か何か知ら
んが、俺達を舐めやがって・・・」
「そうッスね、デスガッドがいなけりゃ、一発シメてやるんです
けど。」
去って行った男・・・デスガッドの弟子に対する不満は、動けず
に震えている哀れな娘に向けられた。
「と、言うわけだ。存分に楽しませてもらうぜ〜。」
ニヤニヤ笑う兵達は、うずくまる娘に歩み寄った。娘は今にも消
えそうな声で懇願した。
「あうう・・・お願いです・・・誰にも言いませんから・・・助
けて・・・家に帰して・・・」
だが、娘の要求は無情にも却下された。
「へっ、泣いても無駄だぜ〜。お前に助かる道なんざねーんだよ、
さっさと諦めな。」
「ひいい・・・もういやぁ・・・だれかたすけてぇ・・・」
兵達に引きずられる様に、娘は近くの部屋に連れ込まれて行った。
「だれかぁ・・・たすけてぇ・・・」
哀れな声だけが残り、誰もいなくなった廊下にミスティーア達が
扉を開けて出て来た。
「大変だわっ、すぐにあの娘さんを助けなくては・・・」
娘が連れ込まれた部屋に向かおうとするミスティーアの肩を掴ん
で、天鳳姫は制した。
「待ってミスティーアさん、アナタはみんなとデスガッドの弟子
を追うよろし。」
「で、でも・・・」
「いいから。娘さんはワタシが助けマス・・・そして、兵達に・・
・思い知らせてやりマス・・・」
お姫様然とした口調に、ミスティーアはハッとした。天鳳姫が凄
まじい怒りに燃えているのだ・・・
天鳳姫の顔には、いつもの能天気な表情は全く無い。
その様子を、彼女の侍女であるリンリン、ランランも息を飲んで
見ている。
「姫様が本気になられた・・・あの兵隊、地獄を見るわね・・・」
「血の雨が降るズラ・・・」
呑気なランランですら、額に冷汗を流すほどの天鳳姫の怒り。悪
を前にした彼女の豹変ぶりには、誰もが驚愕せざるをえない。
天鳳姫は、ミスティーア達に背を向けて歩み始める。そして、振
り返る事無く口を開いた。
「早く行ってクダサイ・・・用事が済んだら、ワタシもすぐに向
かいマス・・・」
有無を言わさぬその言葉に、ミスティーア達一行は無言で頷く。
素早く踵を返したミスティーア達は、デスガッドの弟子が入って
いった扉に潜入した。
それを見届けた天鳳姫は、娘がいる部屋のノブに手をかける。
「覚悟ナサイ悪党め・・・お前達の悪行は、ワタシが許しません
ワヨ・・・」
その頃、怒りの処刑人がすぐそこに迫っているなど露知らぬ2人
の兵は、哀れな娘を陵辱する事に専念している。
「へへへ、随分と大人しいじゃねーか。そのようすじゃあ、弟子
どもにかなり可愛がられたって感じだな。」
2人のうち、年輩者らしい兵がズボンを下ろしながら娘を睨んで
いる。
相棒の兵は、娘を後ろから羽交い締めにして身動きを取れない様
にしていた。
「たすけて・・・たすけて・・・」
動けない娘は首を振りながら泣きじゃくる。
兵は下着を着けていない娘の股間を押し広げ、露になった秘部に
イチモツをかざした。
「さあ、覚悟しなあ。気持ち良くさせてやるぜ〜。」
イチモツが挿入される、その時である。
娘の首筋に針が飛んで来て突き刺さり、娘は体を少し痙攣させて
気絶した。
「ん?なんだ?」
娘の異変を見た兵達は、自分達の背後に人影がいるのに気がつく。
片手を上げてたたずむその人影は、東洋人の美しい娘だった。
「だ、誰だテメエはっ!?」
兵の大声に、東洋人の娘・・・天鳳姫は、魅惑の流し目で兵達を
見ている。
「ウフフ・・・楽しそうアルね・・・ワタシも混ぜて欲しいアル
よ・・・」
天鳳姫の声を聞いた兵達は、欲望の矛先を天鳳姫に向ける。捕ま
えていた娘を床に投げ出して、天鳳姫に目を向けた。
「へへ、お前も俺達に遊んで欲しいのか?」
「・・・そうアルよ・・・ワタシのオッパイ見て欲しいのコトね。
」
そう言うなり、胸元を開いて見事な巨乳を披露する。(天鳳姫は
着痩せするタイプなのだ。)
プル〜ンと揺れる乳房に、兵達は息を飲む。そして年輩の兵が、
相棒を押し退けて天鳳姫に飛びついた。
「あアん、乱暴はダメあるよ。」
「でへへっ、テメエから誘っておいて何言ってやがるっ。」
イヤらしい声を上げて天鳳姫を責める年輩の兵に、相棒が不平を
言う。
「あ〜っ、ずるいッスよ〜。」
「バカヤロウッ、俺が先だっ。お前はそこで見てろ。」
相棒を無視して、ピンク色の乳首に吸い付く。
ピンと起った乳首から、とろけるような甘いミルクが溢れだし、
兵は嬉々とした表情でミルクを喉に流し込む。
「う、うめえ〜っ、こんな美味いミルクは始めてだ〜。」
無心になってミルクを飲む兵を見て、天鳳姫は目を光らせてニヤ
リ・・・と笑う。
「ングング・・・デヘへ・・」
天鳳姫の意味ありげな笑いを知らぬまま、兵はミルクを飲み続け
ている。
やがて、両乳房のミルクを堪能した兵に、天鳳姫は嘲るような声
で尋ねた。
「ねえ、ポンポン痛くないアルか?」
「あんだって?ポンポン痛いかだあ?」
天鳳姫の言葉を怪訝な顔で聞いた兵が・・・急に目を見開いて硬
直する。顔が見る見るうちに真っ青になり、腹部を押さえて苦しみ
始めた。
「あ・・・がっ・・・がああっ!?ああ・・・い、いでえええっ!
!」
兵は絶叫を上げて床を転げ回る。
猛毒の天女こと、天鳳姫のミルクの威力は強烈で、飲んだ者の五
臓六腑をドロドロに溶かしてしまうのだ。
「がはっ、がああ・・・げぼ・・・げぼおおっ!?」
兵の口からドス黒い嘔吐物が吐き出される。見るも無残に溶かさ
れた彼の内臓だった。
内蔵を溶かされた兵は、体中の穴という穴から黒い汚物を吐き出
し、地獄の激痛にのた打ち回る。苦しみ悶える兵は、相棒にすがり
付いて助けを求めた。
「ぐええ・・・た、たすけてくれ・・・」
「ひいいえっ!!こないで〜っ!!」
悲鳴を上げた相棒に突き飛ばされた兵は、床に倒れ伏して動かな
くなった。
そして・・・彼の体が内側からグシュグシュと音を立てて崩れ始
め、着ていた軍服を残して跡形も無く溶け去ってしまった・・・
その壮絶な有様に、相棒は股間を小便で濡らして腰を抜かした。
「あわわ・・・と、溶けちまった・・・そんな・・・」
恐怖に慄く相棒の兵に、天鳳姫の鋭い視線が向けられる。
「ウフフ・・・次はアナタの番アルよ・・・」
美しく、そして残酷な氷の微笑に、兵は絶叫を上げて逃げ出した。
「うわあーっ!!ば、バケモノだあーっ!!」
背を向けた兵の背に、天鳳姫は片腕を突き出して毒針を御見舞い
した。天鳳姫の秘技、毒針爆射である。
鋭い針が、兵の脊髄に深々と突き刺さる。
「あぐっ!?あ、ああ・・・」
突き刺さった無数の針は兵の経絡に作用し、全身の動きを封じた。
「経絡の1つ、自在穴を突いたのコトよ。アナタは自分の意思で
体を動かす事が出来なくなったアルね・・・アナタはワタシの操り
人形・・・ワタシの思うままに操られてしまうのコトね・・・」
天鳳姫は、そう言いながら片手をスッと動かした。
「さあ・・・こっちを向くよろし・・・」
「あ、あがが・・・」
その言葉通り、兵は天鳳姫の言うがまま操られ、ぎこちない動き
で後ろを向いた。
強制的に兵を振り向かせた天鳳姫は、スパッツを脱ぎ捨て足を開
いて立った。
ブーツを履いただけの全裸の天鳳姫は、操り人形を動かす様に指
を動かして、兵を引き寄せる。
「ウフフ・・・ワタシの前にひざまずくアル。そしてワタシのア
ソコを見るのコトね・・・」
股間にあてがった手をゆっくり外し、栗毛色の陰毛に隠された艶
やかな秘部を露にする。
その美しい秘部に吸い寄せられるかの如く、兵は天鳳姫の前にひ
ざまずかされた。
「あうう・・・な、何する気だ・・・」
体の自由を奪われている兵は、血の気の失せた顔で天鳳姫を見た。
天鳳姫の秘部から魅惑的な愛液が溢れている。
「さっきワタシのミルクを飲んだアホを見てわかると思うケド、
ワタシの体液は全て猛毒。特に愛液は最強のコトよ・・・とびっき
り強力な猛毒をご馳走してあげる、遠慮なく舐めるネ・・・」
冷酷な微笑みを兵に投げかけると、彼の体を操って秘部を強制的
に舐めさせ、猛毒の愛液を飲ませた。
「あひっ、やめてぇ〜、イヤだあああ〜、お、俺、死にたくねえ
〜。」
「いまさら後悔しても遅いネ・・・女の子をイジメる悪い奴はお
仕置きのコトよ・・・苦しみぬいてあの世にイクよろし・・・」
残虐に呟きながら、兵に愛液を飲ませる天鳳姫。その笑顔には一
切の慈悲も情けも無い・・・
愛液を強制的に飲まされた兵の全身に、紫色の斑点が浮き出る。
猛毒が全身に回っているのだ。
「あがが・・・く、苦しいよおおお・・・助けてぇ・・・勘弁し
てくれぇ・・・」
情け無い声で懇願する兵だったが、天鳳姫の怒りに触れた悪党に
は、懺悔すら許されない。
紫色の斑点が大きくなり、やがて・・・兵の皮膚が醜く崩れ始め
た。
「あひ・・もうやめふぇ・・・ゆるひて・・・たふけふぇ・・・」
兵の体中がズルムケになっても、強制的に秘部を舐めさせ続ける
天鳳姫。
「ダーメ、ワタシがイクまでユルサナイのコト・・・んん、そこ・
・・もっと舐めるネ・・・あっ・・・イク・・・ああっ・・・」
身体をプルプルと震わせ、天鳳姫は至高の表情を浮べて絶頂に達
した。
それと同時に、手足の腐れ果てた兵が床に崩れ落ちた。
「うああ・・・」
無様な肉隗となった兵は、体をピクピクさせながら悶絶している。
その兵の頭を、天鳳姫はブーツで踏み付けた。
「この辺で勘弁してあげマスワ。これに懲りたら2度と女の子を
イジメないコト。いいデスカ?」
もはや手遅れ状態の兵に、情け無用の戒めを告げる天鳳姫。
「も、もうイジメまふぇン・・・にドとヤりまふぇん・・・ゆル
ひて・・・」
「そう、改心してくれてウレシイですワ。では・・・地獄にお行
きナサイッ!!」
叫ぶや否や、兵の頭を踏み潰す。腐ったスイカが潰れる様に兵の
脳ミソが床に飛び散った。
頭部を失った兵の体が、先程の兵同様にグシュグシュと音を立て
て溶け、跡形も無く消滅する。
「フン、下劣な悪党にお似合いの最後デスワね。」
無残な兵の最後を見届けた天鳳姫は、気絶している娘に歩み寄っ
た。
「さあ、もう大丈夫アルよ、しっかりするよろし。」
いつもの口調に戻った天鳳姫は、娘をそっと抱き起こした。介抱
された娘が薄目を開けて天鳳姫の顔を見る。
「う、うう・・・あなたは誰ですか・・・」
「ワタシは悪い奴やっつける正義の味方アルよ。もう喋らないで、
今助けてあげるのコトね。」
そう言うと、娘をもう一度眠らせ念力で持ち上げた。
「魔界ゲートオープン。」
天鳳姫が手をかざすと、魔界に通じるゲートが出現し、娘はその
中へと吸いこまれて行った。
娘を魔界の医療所に送り届けた天鳳姫は、デスガッドの弟子を追
っているミスティーアの元へと急いだ。
その表情には、悪夢の地下室への不安が色濃く浮かんでいる。
「娘さんがあれだけ弱っているのは、余程の事をされたアルね。
地下室で一体何が起きてるのコトかしら・・・」
彼女の不安は的中している。地下室では、天鳳姫が懸念する以上
の悪夢が繰り広げられているのであった。
天鳳姫が娘を強姦しようとした兵を始末し終えた頃、ミスティー
ア達は別の娘が囚われている場所に近付いていた。
ミスティーア達5人の前を歩いていたデスガッドの弟子は、廊下
の奥に進んでいくと、仲間と手短に話をして別の部屋に入っていっ
た。
その様子を後ろから伺っているミスティーア達は、弟子と仲間が
部屋から出て行くのを見計らって、その部屋に潜入した。
「静かに・・・中には誰もいないわ・・・」
声を潜めて部屋の中を伺っていたミスティーアは、部屋に巨大な
鉄格子が存在するのを見た。
「?・・・何これ。」
不思議そうに見るミスティーア。鉄格子は部屋を横切る様に設置
されており、一見すれば動物園の檻にも見えなくもない。
だが・・・夜目が効く彼女が鉄格子の暗がりを見て絶句した。
そこには、10数人の若い娘が酷く弱った様子でうずくまってい
たのである。
それを見たミスティーア達は、彼女等がデスガッド一味に誘拐さ
れた娘達である事を確信した。
ミスティーアが娘達を助けるべく鉄格子の扉に手をかける。
「今助けてあげますわよ・・・えっと・・・カギは・・・」
無論、扉には施錠が施されているため、容易には開かない。困っ
ているミスティーアの傍らに、リンリンが歩み寄った。
「ミスティーア姫、ここは私にまかせて。」
そう言うと、リンリンは針金のような物を取り出して鍵穴に差し
込み、慣れた手付きで扉のカギを開けた。
その様子を、ミスティーアとエル、アルの3人が感心した様に見
て尋ねた。
「上手ですわねリンリンさん。どこで覚えたの?」
「はい・・・実は、人間界で姫様にお仕えする前は・・・私とラ
ンランは盗っ人家業してたんですよね。だから、こんなカギを開け
るのなんか朝飯前なンです。」
「でへへ、そうズラよ。」
リンリンがそう言うと、ランランも恥かしそうに頭を掻いた。
彼女等の意外な過去に、ミスティーア達3人は驚いた顔をしてい
る。
だが、感心している暇は無い。速やかに娘達を救出しなければい
けないのだ。扉が開くと同時に鉄格子の中に入って行く。
うずくまっていた娘達は、突如現れた者達に怯え始めた。
「ひっ、やめて・・・もうイジメないで・・・ゆるして・・・」
薄暗がりの中ではミスティーア達の姿を見る事は出来ない。全員
ミスティーア達がデスガッドの弟子と思い込んで恐怖に慄いている。
「・・・大丈夫ですわよ、あなた達を助けに来た者ですわ。」
声を潜めて語り掛けるミスティーアの言葉に、娘達は驚きと喜び
の混じった声をあげた。
「た、助けてくれるのですかっ!?」
「ええ・・・見つかったらダメですから大声を出さないで。」
優しくそう言いながら、5人は娘達に歩み寄った。
「酷いっ、みんな弱り切ってるわ・・・一体何をされたんですか?
」
心配そうなミスティーアの言葉に、泣きながら返答する娘達。
「は、はい・・・私達はデスガッドがしている魔人製造の材料と
して研究室で生気を吸い取られているんです・・・誘拐されてから
ずっと・・・ここでデスガッドの研究材料として利用されてました・
・・」
娘の返答に、ミスティーア達は驚愕した。
「ま、魔人製造ですってっ!?」
娘の口から出た言葉は、余りにも驚くべき事だったのだ。娘の肩
を掴み、再度聞き直すミスティーア。
「魔人製造とはいったい・・・あなた達の知っている事を全部話
してくださいっ。」
ミスティーアが尋ねると、娘達は凄まじい恐怖に震えながら答え
た。
「魔人というのは・・・デスガッドが作った改造人間の事です・・
・ここではその改造人間の事を魔人と呼んでます・・・この地下室
にいる者達のほとんどが人間じゃありません・・・私達は、その魔
人達に・・・ううう・・・」
泣きじゃくる娘達が、その(魔人)に陵辱されている事をミステ
ィーア達は察した。
ミスティーアの横にいるランランが娘に話しかける。
「さっきここから出てきたデスガッドの弟子も魔人ズラね。あん
た達は弟子どもにイジメられてたズラか?」
「は、はい・・・あの弟子達に気をつけて・・・あいつ等は・・・
」
泣いている娘達は、全員苦しそうな表情をしている。激しい陵辱
の責苦が彼女等を苛んでいるのだ。
「もういいですわ、後は私達に任せて。」
詳しい事を聞くのは困難だと判断したミスティーアは、エルとア
ルに指示を出して娘達を魔界に逃がすよう促した。
「エル、アル、魔界ゲートを開いて。彼女等を医療所へ搬送しま
すわよ。」
「了解ですわ姫様。」
「魔界ゲートオープンですの。」
娘達の両脇に進んだエルとアルは、両手を広げて魔界への扉を開
いた。
出現した魔界ゲートに、娘達は次々吸い込まれて行く。
娘達が送られた先には、魔族の医療スタッフが待っている。陵辱
の傷跡も、心の傷も全て癒してくれる手筈だ。
やがて全ての娘達を魔界に送り届けたミスティーアは、リンリン
とランランに向き直る。
「他にも娘さん達が囚われていると思います。魔人の存在が気掛
かりですから、みんな気を引き締めてくださいね。」
「ええ、わかりましたミスティーア姫。」
「魔人か麻雀か何か知らないけど、アタイ等の敵じゃないズラよ。
」
心配要らないと胸を叩くランランに、ミスティーアは安堵の笑顔
を見せた。
「頼もしいですわ。では、行きましょうか。」
「はい。」
ミスティーアの言葉に頷いた侍女達は、ミスティーアに続いて鉄
格子の部屋から出て行った。
部屋の外に出ると、ミスティーア達に追い付いた天鳳姫が待って
いた。
「娘さん助け終わったみたいのコトね。こっちも娘さん助け終わ
ったアルよ。」
「あの2人の兵は?」
「ああ、あいつ等のコトね?心配ないアルよ、2人ともオネンネ
したアルよ。」
お気楽な口調で語る天鳳姫に、リンリンとランランは呆れた顔で
笑った。
「あはは・・・オネンネですか・・・可愛そーな兵隊さん達・・・
」
2人の兵が、どんな残酷な目に遭わされたされたかは聞かなくて
もわかる。少しだけ兵達に同情するリンリン、ランランだった。
そしてミスティーア達は、魔人の潜む地下室の最深部に向かって
進んで行った。
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