魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜


 白い少女 第25話 
Simon


「うおぉぉぉっ!!」

余計な小細工はなし――腰だめに短刀を構えて、身体ごとぶち当たる
俺はこのやり方で、8人殺してきた
どういう手妻で鎖を切ったのかは知らないが、小娘の一人や――――ヒィッ!?

――――ゴヂュッ!!

薙ぎ払われた小さな手――その爪が男のこめかみに食い込み――その勢いのまま
――――男の『顔面』を抉り取った!

「っ〜…〜〜〜ッ〜〜〜〜!!!」

空洞と化した顔の中で、舌だけがテラテラと踊り――一瞬の間を置いて――呆れ
るほどの鮮血が吹き出した

―――ブッシュゥゥゥゥゥゥ……―――――ド…チャ…



「――てめっ!――コブッ!?」

ユウナの正面から飛び掛ろうとした男が、唐突にその動きを止める

男の背中から生えた『赤い棒』――その先には捩れた細い……指

――――ズ……ル……ズブ…ズブ…ブ……

崩れ落ちる男の背中に、『棒』が潜り込み
そして――男の胸から生えてくるのは――肩まで緋に染まったユウナの『右腕』

――ズルルッ…――…ドォ…

だらりと垂らされたユウナの右腕――その指は歪に捩れ、骨すら覗かせていた



「――う……うあああぁぁぁっ!!」

振り下ろされるナイフより早く、今度はユウナの左腕が跳ね上がり――

――掌打!
――ボゴォッ!!!

下顎から上を、一撃で弾き飛ばされた男は、惰性でユウナに縋り付き――腹に…
…腰に……脚に、汚血を擦り付けながら、ずるずると崩おれた

――グラ…

死体に足を取られ、ユウナの身体が傾いだ――

「――あああぁぁーっ!!」
――――ビシャァァァ!!
――――!!!

ユウナの背中――肩から斜めに叩きつけられた鎖!
弾き飛ばされたユウナの背中が、柘榴のようにグバッと弾けた

「ちくしょう!――ちくしょう!――――ちく…しょう!!」

――グチャ!――グチャ!――グチャッ!!――グチャッ――グチャッ!!

悲鳴も上げずにぶっ倒れたユウナの身体を、鎖で滅多打ちにする
弾けた肉片が飛び散り、跳ね返った鎖が血霧を撒き散らす

「――あぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

――二の腕に――脇腹に――踵に―横顔に―脛に肩に胸に!脹脛に!右手に!―
―

――グチャ!―グチャ!―ビヂャッ!バギッ!ガゴッグヂャグチャグチャッ!―
―

――――ヌルッ!
「―――あっ!?」

汗か血か――鎖が一瞬、手の中で踊り――

ぼろくずのように地に伏したユウナの右足が――

――ギャリッ!――――ベベギィィッ!!!

――残像すら残さぬ速さで、超低空を薙ぎ払い――
両脛を『刈り取られた』男の身体は、反動で垂直に跳ね上がり――

「――ぅあぁっ!――――――ゲハッ!?」

受身すら許されぬまま、地面に叩きつけられ――
襲い掛かるように跳ね上がるユウナの上体――その頭突きが――

―――ドゴォォォッ!!
「―――ごばぁぁぁ!!」

男の胸板を一撃で打ち砕いた


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