魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜
第2話 琥珀の風 part21
Simon
――お使いの途中で遊んでたのが、バレちゃってさ
てへへ――と、小さな舌を出して笑うユーデリカ
よかった、今日は本当に元気そう
「でも、ご主人様は優しいから、『ちゃんと時間を決めてからなら、遊んできて
もいい』って」
「ユーディのごしゅじんさまって――『アリーシャひめ』のこと?」
「ふうん…………知ってたの?」
「え?――う、うん」
?――なんだか一瞬、ユーディの顔がお面みたいに見えた
「まぁいいや――だから今日は2時には帰らなきゃいけないんだ」
「え〜! もっといっしょにいたいよ」
困ったような笑顔を向けられて――ちょっと恥ずかしかったけど、でもせっかく
ユーディが来てくれたのに
「しょうがないなぁ、リンスちゃんは――ねぇ、ところでユウナさんは?」
「ん――ちょっとでかけてるの」
あれからも、街の噂とかを調べてるんだけど、まだ何も分からなくて――
情報が操作されているのかもしれないって言ってたけど……どういうことなんだ
ろう
「じゃあ、リンスちゃん一人なんだ――寂しいね」
言葉にされると、余計にそう思えてくる
ユーディも、もう帰っちゃうし
「――だったらさ……お屋敷に来てみない?」
「えっ?」
「そりゃ、アタシはお仕事があるけど――その間、アリーシャ様が遊んでくれる
よ」
「ええーっ!」
「大丈夫だよ、優しくてとっても素敵な人なんだから」
――アタシの憧れの人なんだぁ
「だ、だけど――」
「それにね、リンスちゃんたちのことを話したとき、いつか連れてきてって言わ
れてたの」
――帰るときには、ちゃんとアタシが送ってあげるから
手をぎゅっと握られて、顔をすぐ近くまで寄せられて、そんな風に一生懸命言わ
れたら――
「いいでしょう? きっとアリーシャ様も、喜んでくれると思うんだ――お父様
の王様が亡くなられてから、アリーシャ様、寂しそうで――」
「……うん――いいよ」
大切な人がいなくなったら――悲しいもんね
「ほんと? ありがとうリンスちゃん!」
――じゃあ、早速!
グイッ――と、凄い勢いで引っ張られた
「ユ、ユーディ、痛いよ〜」
「あっ、ごめんね、つい嬉しくってさ!――じゃあ、着替えたら下に来てよ――
アタシ宿の人に、ユウナさんへの言伝頼んどくからさ!」
そう言うなり、ユーディは風のように出て行ってしまった
握られていた右手を見れば、跡が赤くなっている
着替えといっても――ユウナに買ってもらった帽子を被るだけだ
「……いってきまーす」
なんとなく――そう呟いてから、あたしも部屋を出て行った
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