魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜
第2話 琥珀の風 part19
Simon
――ガシッ
唐突な衝撃――縛られた腕を取られて、そのままアリーシャ様から引き剥がされ
る!
――痛い! ヤダ――アリーシャさまぁ!
咄嗟に両足をアリーシャ様の腰に絡めて、抵抗しようとしたが――
――メキッ……
「――ぐああぁぁぁ!」
縛られた腕がっ! 肩が抜けるぅ!
「ギャァァァァァァ!!――アイイィッ――おれ…ぉれちゃゥゥゥ!!」
引きずられながら、痛みに打ちのめされる
――ゴリゴリと骨が鳴ってるのに!――折れようがどうなろうが構わないんだ
グチャッと、ファズの足元に投げ出されたときには、もう舞い上がっていた心も
快感も、何もかも全部消し飛んでいた
「危なかったね、ユーデリカ――あのままだと、お前もおかしくなっていたとこ
ろだよ」
――間に合って本当によかった
白々しく、優しげに笑いかけてくるファズ――睨みあげようとして……顔を上げ
ることができなくなっている自分に愕然とした
震えている――怖い――アタシは、この人の注意を引きたくないのだ
「でも困ったね、もう10分経ってしまったんだよ」
――じゅ……そんなばかな! いや、でも――え?――10分? あれが? た
ったの?
見回せば、男たちも頷いている――そんな……嘘……じゃないの?
「約束どおり――今度は私のやり方でやらせてもらおうか」
絶対、アリーシャ様に酷いことをしようとしている――今度こそ止めないと!
そう思っているのに――
アタシは……ファズの前に蹲ったまま――目を逸らして……顔も合わせられない
でいる!
このままでは姫様が!――なんでアタシは、こんな……ただ震えるばかりで!
悔しくて、血の味がするほど唇を噛み締めながら、身体がどうしても、言う事を
聞いてくれない――
――『詰み』まで、あと少しというところか
縮こまって震えているユーデリカの姿に、己の策の一つの成果を見て、軽い満足
感を覚える
今は、初めての性的な調教に、身体が拒絶反応を示しているに過ぎない
明日になればまた、小さいながらも鋭い、心の牙を取り戻すだろう
――それを許すつもりはないが……な
喧騒が近づいてくる、丁度いい頃合だ
「ファズ様! 連れてきました」
――フルルルル!
――唸り声と、押し寄せる獣臭――革紐を引き千切らんばかりに興奮していた―
―
「――い……ぬ?」
ユーデリカが、馬鹿みたいに呟く
なぜここで犬が――しかも3頭も出てくるのか、頭の中で繋がらないのだろう
――だからこそ、立て直す暇など与えんよ
「――放せ」
「――!!!」
私の声に、バダンの手が緩んだ瞬間!――ユーデリカが跳ね上がり……叫ぶより
も速く!
――ワフゥゥゥッ!!
「――キャァァァァ!!!」
――犬たちが『獲物』に襲い掛かった!!
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