ダーナ氷の女王 第二部 第7話 7

ダーナとキラの二人は、激しく求め合ったあとの深い眠りについていた。
ダーナにとってははじめて味わった、幸せな愛撫だった。
同時に、長く続いた緊張の中でわずかな幸せの時でもあった。

だが、幸せなときは長くは続かなかった。

「やつらだ!やつらがやってきた!」
「おしまいだ!この村はおしまいだ!」


寝ているどころではない。
キラもガインも家を飛び出した。
砂漠の方から、おどろおどろしい一団が村に迫っていた。

「どうしたんだ!火が消えているじゃないか」
「なにがあったんだ!」

村の入り口に焚かれた火は消え、バリケードも跡形もない。

突然のアンデッド達の来襲に、村は喧噪に包まれた。
人々は逃げまどう事しかできない。


村人の悲痛な叫びは、ダーナの耳にも聞こえていた。
ベッドから起きあがり、心配そうに辺りを見回している。

闇の中で蠢くアンデッド達。その一団は、暗闇の中でも迷うことなく
村へと侵入してくる。
ある物は歩きながら、ある物ははいずりながら。
異形の化け物達はうめきながら村へと侵入してきた。

【・・・・・$#&・・・だ・・・・・・・$・・・・な・・・・・】

地の底から響いてくるような不気味なうなり声。


【・・・・・$#&・・・だ・・・・・・・$・・・・な・・・・・】

最初はなにを言ってるのかさえわからなかった。
だが、アンデッドが自分をしているのに気づいたダーナは震え上がり。
キラの腕に抱きつく。

「あいつら姫様を探していたってわけだ・・・」
「冗談じゃない!やっと助け出したというのに!」

ガインもうなづいた。
ダーナは、キラの腕に捕まって震えている。

『この姫様をあいつらには二度と渡すもんか!』

【・・・・・$#&・・・だ・・・・・・・$・・・・な・・・・・】

アンデッドはガインの家へと進んできた。
村人達は、既に海へと逃げてしまい、当たりには手助けとなる者は皆無だ。

「姫様を奥へ!ここはオラが食い止める!」

ガインが、たいまつを握ってキラに言った。

「これだけの数だ!お前一人でどうにも成るまい!」

キラもまたたいまつを握りしめる。

「いや、これはオラの仕事だ!」

ガインがたいまつを持って、アンデッドの群れに飛び込んでいく。

【・・・・きゅあ・・・・・・#$・・・・ぎゃう・・・・・】

火に焼かれ、アンデッドが奇怪な叫びを上げる。
最初のアンデッドが焼かれても、怪物達は次々と沸いてくる。

【・・・・きゅあ・・・・・・#$・・・・ぎゃう・・・・・】

あたりに異臭が漂う、それは有害なガスとなって、ガインを苦しめる。
だが、ガインはそれにもかまわず、たいまつでアンデッド達をなぎ払う。

「消えろ!消えろ!化け物が!」

ガインの命がけの攻撃に、アンデッドもひるんだかに見える。

それを見たガインは一気呵成に攻め込んだ。

「ばけものがあ!オラのマナをどこへやった!マナはどこだ!」

「よせ!油断するな!ガイン!」

キラが後を追ってくる。狼族の闘争心に火がついたのだ。

「うおおおお・・・・・・・!」

ガインの攻撃が剛だとすればキラの攻撃は鋭利な刃物。
目にもとまらぬ速さでアンデッドを切り裂き、焼き払っていく。

【・・・・がいん・・・・・きさまあ・・・・・】

燃えさかる炎の中でガインは聞き覚えのある声を聞いた。
アンデッドモンスターに成り下がったドモンの声・・。

「まさか・・そんな!そんなことが!ぐあああ!」

悪に手を染め、ダーナ姫を不幸に追い込んだ張本人。
だが、かっては同じ猫族の仲間だったのに・・・。

「永遠の命とは・・こういうことなのか!?・・・これで満足なのか!ぐあああ!」

ガインは、力を込めて目の前のアンデッドをいくども、いくども叩き付け、引き裂き、焼き払った。

ガインとキラ。二人の力で、目の前のアンデッド達はたじろぎ、引きはじめた。

だが、アンデッドの後に小さな影がたった。

「だらしないなあ・・相手は二人なのに・・・くすくす・・・」

「なに?」

ガインとキラ二人が目を合わせた。

マナが立っていた。

マナは二人をにらめつけると、近づいてきた。

「おとう・・死んでもらうよ!」


マナはにやりと笑った。

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