ダーナ氷の女王 第二部 第7話 8

「くすくす・・・・」

マナが笑いながら襲いかかってきた。

「マナ!・・やめるんだ!」

ガインが大声を上げる。そして、両手を広げて受け止めようとする。

「やめろ!あぶない!」

キラが体当たりで、ガインを突き飛ばす。
マナの爪が、キラの背中を切り裂いた。

「ぐっ!」

鋭い爪の一撃に、キラは肩を押さえた。

「なんてことをする!いくらなんでもやりすぎだ!」

マナの攻撃に傷ついたキラをみてガインが叫んだ。

だが、マナには届かない。
再び体制を整えて襲いかかってくる。

「やめろマナ!やめるんだ!」

ガインが悲痛な声を上げる。

「二人とも一緒に死んでもらうよ!くすくす!」

今度は飛びかかってこない。じわじわと間合いをつめてくる。

「マナ!」

ガインが泣きそうな顔で叫ぶ。

「無駄だ、完全にいかれちまっている」

キラは肩を押さえ、ただ、マナを見つめるだけだ。

「いかれちまってる?マナにいったいなにがあったと言うんだ?」

「おそらく魔女の魔法にかかってるんだ。さもなければこんなことありえない」

「魔女の魔法!?」

ガインがキラに聞き返す。
理解が出来ないようだ。

「魔女は・・俺にマナをくれるといった。なのに、なんでいまさら・・・」

「姫様の子供だから・・俺は大事に育ててきたというのに・・・」

「・・・子供?・・わたしの?・・赤ちゃん?」

家の中に隠れ、様子をうかがっていたダーナが飛び出してきた。

マナも驚いたようにダーナを見つめている。

「あぶない姫。出てきちゃだめだ!」

キラが叫んだ。だが思ったより傷は深く、すぐには立ち上がれない。

「あなたが?・・わたしの?・・赤ちゃん・・・」

マナはダーナを見つめた。その瞳にはいかりの炎が宿っている。

ダーナはそんなことには気づかず、マナに近づいてくる。

「姫様だめだ!近づいたらだめだ!」

「ダーナ?・・・お前がダーナ・・・・くすくす・・・」

「お前が・・お前を殺すように・・母さんに言われた・・・くすくす・・」

マナの身体が妖しく光を帯びる。
その目は吊り上がり、指先からは血にまみれた爪が長く伸びてくる。
口は耳まで裂け。開いた口からは牙が長く伸びてきた。

「死んでもらうよ・・・・母さんの命令だ!くすくす!」

だが、ダーナにはそんなマナの姿も見えない。
産んですぐどこかへ連れ去られた、愛娘にあえた・・・この娘を抱きしめようと・・

ダーナの母性はわが子の前に正気を失っていたのかも知れない。

「姫様!あぶない!」

キラが必死に声を上げる。
だが、ダーナには届かない。

「愛しい・・こ・・・」

ダーナはマナを抱きしめた。
マナが牙をむいた。

そして暗闇が二人を包む。
どこからか魔女の笑い声が聞こえてくる。

「ゆかいだねえ!・・感動の対面が!・・母と子の最後になるなんてさ!あははは・・・・」

「マナ!・・母さんの言う事を聞くんだ!その女を食いちぎっておしまい!あははは!」

ずうううう・・・・・・

地面から何かが飛び出してきた。

数え切れない奇怪な触手が沸きだして、二人に襲いかかろうとしている。
触手の先は鋭利な刃物のように尖っている。
二人を串刺しにしようというのか。

「魔女め!マナに姫を殺させて、そのあとでマナまで殺そうというのか!」

キラが叫んだ!

「させるかあ!」

ガインがたいまつを持って触手の中に飛び込んでいった。

きゅい〜〜〜くるううー==
きゅお〜〜〜ぐうう〜〜〜

「ばけものがあ!うおおおおおっ!!」

ぐさっ!・・ぐさぐさっ!!・・・・・・・・・・

触手の棘が、ガインの身体を突き刺していった。

「ガインっ!」

キラは絶叫した!


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