ダーナ氷の女王 5話 2
ぴちゃぴちゃ・・・・・
暗闇の中で、水音だけが響いていた。ダーナが魔女の召使いの女達に、岩場の泉で身体を洗ってもらっている。
砂漠の地下というのに、そこにはあふれんばかりの水が湧きだしてる。泉というより低温の温泉といった方がよいのだろうか、傷だらけのダーナの身体を優しく包んでくれる。
召使い達は無表情でダーナの身体中を丁寧に海藻で作ったスポンジのようなモノで洗い流している。あちこちにある傷や腫れが少しずつ癒されていく。
しかし、それは肉体の上だけのこと。ダーナの心に受けた深い傷まで癒してくれるハズも無かった。
魔女の目の前での陵辱。そして破水、出産。
2週間前までには思いも寄らなかった自分の今の境遇に、ダーナの心は引きむしられ、気が狂いそうになる。いや、いっそ気が狂ってくれたならば、楽になるとまで考えはじめていた。
そしてまた、ダーナの心を掻きむしる思いがあった。それはふるさとの島のこと、父王、母王のこと。
いや、今はそれ以上に、自分が産み落とした赤子のことが気に掛かってしょうがなかった。
『あの、・・・あの子は』
『・・・・・・・』
『あの子はどうなったんでしょう?』
『・・・・・・』
ダーナがはじめて口を開いて、召使い達に訊ねた。しかし、召使い達は一言も発せず。ただ黙々と、ダーナの身体を洗い流している。
『あの・・・・』
そこまで言いかかって、ダーナは顔を伏せた。
いくら聞いても答えないのに違いない。よほどきつく戒められているのだろう。
ダーナは諦めて、されるがままになっていた。