ダーナ氷の女王 5話 1
魔女の宮殿は周り一面を砂漠に囲まれていた。
かっては青々とした緑に被われた広々とした大陸は、多くの人々が暮らしていた。だが、気候の変化によりいまや、そのほとんどが砂漠と化した不毛の大地だった。
わずかに、海に面した入り江に緑地が存在し、そのあたりだけ、漁業を生業とする人々が住んでいた。しかも、その多くは獣人と呼ばれる人々だった。
彼らは自分の生まれ育った土地に愛着を持っていたし、なにより一般の人間より優れた適応能力を持っていたからだが。
ダーナ姫を拉致した男達はそうした漁村の男達だったのだ。
「おぎゃあ!おぎゃあ!おぎゃあ!」
ひときわ甲高い泣き声が、そんな村に響いた。
「なんだなんだ・・・」
すむ人も少ないこの村にとっては久しく忘れ掛かっていた生命の響きだ。
ほったて小屋のような小屋から、人々が泣き声の元へと集まってくる。
ひとりの大男が、なれない手つきで必死に赤子をあやしている。しかし、赤ん坊は一向に泣きやもうとはしない。
「なんだガイン!どこから拾ってきたんだ?」
「じょうだんじゃない!これはおいらの子供なんだ!おおよちよち・・・・」
「おまえの?」
取り囲んだ男達がいぶかしげにガインの顔をのぞき込んだ。
そう、この男はダーナを攫った男のひとり大男のガインだった。そして、連れている赤ん坊はダーナが産み落とした娘に相違なかった。
やがて、見かねたのか、ひとりの女がおろおろするだけの男達から赤ん坊を奪って自分の家へと連れて行った。
あとからすごすごとガインがついていったのは言うまでもない。