お姫様舞踏会2(第四話)
お姫様舞踏会2
〜新世界から来た東洋の姫君〜
作:kinsisyou
昨日、無事到着した皇国の姫君御一行。小鳥の囀りと窓から差し込んでくるレースカーテン越しの柔らかな陽射しで目を覚ます。旧世界で迎える朝だった。天蓋付ベッドの寝心地はすこぶる快適で、長旅の疲れもあり床に就くなりあっという間に寝込んでしまった。目覚めるなり皇国から持ち込んだミッドランド標準時に合わせた時計を見ると6時を指していた。
「もうこんな時間ですか。快適な眠りはあっという間に過ぎてしまいますわね」
一番に起きた有璃紗姫はすぐに朝が来てしまったようで少し不満そうな表情をしている。隣ではまだ飛鳥姫が夢心地であった。起き上がると絹のネグリジェを脱いで下着だけとなった有璃紗姫はまず鏡の前で髪を梳かし整える。しっとりした質感の栗色の髪は何もせずとも櫛で梳くだけで寝癖も取れてしまう。後は先端を軽く結んでしまえばOKだ。有璃紗姫の髪型はシンプルで無難だが、それだけにごまかしが利きづらくきちんと手入れしていないと見苦しい。
直後に随行してきた侍女や女官が気付いて有璃紗姫の支度を手伝う。髪の手入れしきれていない部分を丁寧に梳いて整え、その間別の侍女と女官が衣服を用意し整える。
有璃紗姫が身支度している間に飛鳥姫も起きてきた。こちらはまだ寝惚け眼であるが。そんな飛鳥姫を見て一言姉として説教を入れることも忘れない。
「これ、飛鳥。今日は朝から重要なイベントが控えているのですから、早く起きなさい」
「ふあ〜い」
と、まだ寝惚け眼で眠そうに目をこすっているところへカシャリという金属的な機械音が。それは花代の構えたカメラのシャッター音であった。寝惚け眼の飛鳥姫を見事スクープに成功。
「飛鳥様の寝惚け眼の顔を見事に写真に収めることに成功しました〜」
その音にさすがの飛鳥姫も何が起きたのかを知って大騒ぎ。
「もう、花代さんたら乙女にとって一番見られたくないところを撮らないで〜」
この騒ぎで一気に目が覚めた飛鳥姫であった。その様子をクスクスと笑って見ている有璃紗姫。
「お姉ちゃんまで笑わないでよお〜」
朝に正式な謁見があるため外出用の私服に着替えたところでこのグランドパレス付のメイドが現れ朝食の準備が整ったことが告げられる。
「姫様方、朝食の準備が整いましたのでどうぞこちらへ」
メイドといえどもそのレベルの高さに定評のあるミッドランド王室だけあって動作に淀みがなく案内もスムーズである。
このグランドパレスでダンスホールと並び最も豪華な部屋の一つであるダイニングルームでは白いテーブルクロスがかけられ焼きたての皮を堅く焼いたパンと果物とバターの甘い香りが漂う。鼻をくすぐる甘い香りが朝食の準備が整ったことを無言のうちに告げる。そういえば昨日の夕食のときは赤いテーブルクロスであった。こうしたさり気無い気遣いもまたミッドランド王室の接客レベルの高さを物語っているようだ。
用意された朝食はパンとコーヒーか紅茶を中心に果物という簡素な構成を基本にスープとベーコンにスクランブルエッグが追加されていた。当時朝食で果物が出てくるということはそれが最高レベルの持て成しと思っていいだろう。というのも当時果物は贅沢品の一つだったのだから。ベーコンとスクランブルエッグは恐らくは新大陸の影響かもしれない。
パンを半分に割り、それを小さくちぎって口に運ぶ姫君たち。パンに噛り付く行為はマナー違反とされる行為である。芳しい香りがダイニングルームに拡がるのと合わせて会話も弾む。
「朝は早速謁見か。昨日のうちに済ませたかったけど、まさかギネビア姫が早速馬車を駆らせるとは思ってもいなかったしね」
昨日の光景を思い出しながら、綾奈姫が会話の糸口をつける。
「そうですわね。この旧世界に相応しいプレゼントということで選んだのですがあの行動は予想外でしたわ」
と応じる愛璃姫。
実は当初新世界の文明の象徴である自動車を考えていたのだが、整備には専門の知識や機械も必要なためいざというときに難儀する可能性があることから却下となり馬車に変更したのだった。製作を手がけたのは中島飛行機の子会社で中島車輌系列の中島車体である。中島車輌で注文を受けた後そのシャシーに載せる車体の打ち合わせと架装を手がけるのだが、自動車だけでなく旧世界向けに馬車の製作も請け負っていた。いずれも飛行機で培われた技術を活かし軽量な流線型スタイルの馬車製作を得意としていた。ギネビア姫にジュラルミン製の軽量な流線型馬車が献上された裏にはこういう経緯があったのだ。
「ミッドランドの日本に対する第一印象はまず成功とみていいわね」
走り出す馬車を思い出しひとまず出だしは問題なくて一安心といった表情の有璃紗姫。ちなみに旧世界に向けてこちらの技術を活かした馬車を製作してはどうかと中島車体に提案したのは他ならぬ彼女であり、まず王室を顧客にして外交活動の傍ら巧妙に営業活動を展開し、最初に売れたのがやはり交易拠点ということもあり普段から目新しい文物に触れる機会も多いせいか最先端のものも比較的抵抗なく受け入れる気風を持ったパンパリアであった。いきなり予備も含め5台の発注があった。流線型のほかオーソドックスな従来のスタイルの馬車も納品されたがいずれもこれまでになく軽量で、そしてスイングアクスルによる四輪独立懸架を採用している点は共通している。
更にはオランも一台の発注があり、グランディアでは何とオープンにしたスポーツスタイルの馬車の特注まであった。イメージリーダーである王室がこぞって使用することにより今後は貴族や上流階級の間でも注文が増えるだろう。そう予測していた。
「はあ、それにしても謁見は緊張しますわね」
実は謁見という儀式自体が苦手な飛鳥姫。安全保障関連交渉は得意としているが、何故か謁見には馴染めないでいた。
「心配いらないわ、飛鳥。形式通りに振舞えば問題ないから」
そう言って緊張気味の飛鳥姫を慰める綾奈姫であった。
「姫様方、謁見の準備が整いましたのでこちらへ」
と、コーヒーや紅茶で寛いでいる姫君のもとにリシャールが現れた。その隣には有璃紗姫と飛鳥姫の侍女である若菜と花代もいる。もうそんな時間かと思う。そして謁見質まで恙無く姫君を誘導するリシャールであったが、実は本来なら昨日のうちに行うはずだった謁見が朝食後に行うことになり、ダイニングルームから謁見の間までのルートに変更となって大慌て。深夜に目が覚め何度もダイニングルームから謁見の間に至るルートを歩いて覚えていたのだ。何しろ広大なグランドパレス。普段は用のない場所だし何度か出入りしているとはいえ全てを把握しているわけではない。なので内心は緊張しっ放し。とはいえリハーサルの甲斐あってどうにか迷うことなく謁見の間まで辿り着く。
「ギネビア様、日本皇国の姫様方をお連れしました」
ギネビア姫の前に揃ったのは愛璃姫、綾奈姫、有璃紗姫、飛鳥姫、そして侍女の近衛若菜と宮脇花代の6人である。
「1年振りでございますねギネビア姫。この度は四名を代表して、貴国の舞踏会への御招待まことにありがとうございます、日本皇国閑令徳院宮家長女、愛璃でございます」
ギネビア姫に深々と頭を下げる愛璃姫。そして三人の妹が前に出る。
「次女の綾奈です、この度は御招待まことにありがとうございます」
「三女の有璃紗です、舞踏会への御招待、光栄にございます」
「四女の飛鳥と申します」
挨拶が一通り終わったところでギネビア姫は脇の二人に目をやった。
「そちらの御二方は?」
そして有璃紗姫と飛鳥姫の二人が微笑みながら応える。
「私の右腕である近衛 若菜と申します」
「同じく、私の片腕である宮脇 花代と申します」
そして若菜と花代は恭しく礼をする。で、ギネビア姫は更に興味を持ったようで、
「若菜さんは有璃紗姫とどのような御関係で?」
若菜は少し俯き加減で控えめに答える。
「今回のように海を越えてお出掛けの際に飛行機の操縦から普段は姫様の秘書までこなしております。そして姫様とは幼き頃から御仕えしている身でございます」
「つまり、我が執事長のラムチョップのような存在であると?その若さで有璃紗姫の側近を務められているとはまことに素晴らしい……」
若菜を少し顔を赤らめて後方に下がる。
「では、花代さんは?」
代わって飛鳥姫が答える。
「はい、日本国内でも五指に入る写真師でございまして、私たちの行くところ常に同行し、その一部始終を写真に収めるほか、普段は私の話し相手をしたり、仕事を手伝ってくださっております」
写真と聞いてギネビア姫がピクリと反応する。
「写真と申しますと、まるで本物そっくりのように描いたように見える、あの写真ですか?」
「はい。それではギネビア姫も一枚いかがでしょうか?花代さん、準備お願いします」
「は〜い、既に準備は整っておりますよおお〜」
と間延びした声で花代が構えていたのは当時最新のカメラであるライカであった。35ミリのフィルムを短く切って使うという画期的な概念で写真の世界に革命を起こした記念すべきカメラであり、今世界中で使われているフィルム式のカメラは皆ライカの真似と言っても言い過ぎではない。花代が手にしているライカにはレンズの制度で定評のあった日本光学のレンズが組み合わされていた。因みにライカは当時大変高価で、日本皇国での価格は標準仕様で何と200万円、花代が使用している最新機種の一眼レフだと600万円もした。標準モデルでも当時の日本皇国で小さいながらも家族4人が住める家が買える。というか、カメラ自体が当時世界的に高嶺の花でもあった時代である。
そして花代は日本写真史のみならず世界的に特筆すべき存在で、ドイツのエルナ・メクレンブルクと並ぶ女性写真家の先駆であり、また当時旧来の写真家から玩具と蔑まれていたライカの利便性に早くから気付き積極的にライカを導入した写真家の一人としても名を残している。彼女がライカを選んだのは通常の乾板を用いた大型のカメラは体力にハンデのある女性である花代にとっては非常に重く難儀する(無論こちらでの撮影技術も一級なのだが)のと携帯に便利なことからであった。それにライカだとすぐさま構えることができシャッターチャンスをモノにするのに好都合なことにも本能的に気付いていた。また、ライカを撮影に使った最初の日本人写真家でもあり、父親が自分に甘いのをいいことに強請り倒して手に入れたと当人は後に語っている。購入する段になって価格を聞いたとき父親は目玉が飛び出したらしいが。
「ではギネビア姫、楽に構えていてくださいませ」
ギネビア姫が玉座にかけているところを写真に収めるべく、花代は慎重にピントを合わせていく。初めての写真撮影を前に緊張を隠せないのかギネビア姫も少し表情が硬くなる。旧世界でカメラが現れた当初は魂を吸い取る機械だなどという根も葉もない噂が流れたこともあったが、さすがに現在は少なくとも王族の間ではそのような迷信を信じる者はいない。
そして花代から撮影の合図が告げられる。
「それではギネビア姫、撮影に入りますのでしばらくそのままお願いします」
緊張が最高潮に達するギネビア姫。刹那、シャッターの短い金属音が響き、撮影は終了である。
「は〜い、撮影は終了……あ〜っ!!」
と、突然大声を上げ、何かに気付いた花代。
「ごめんなさい、カメラにフィルム入れるの忘れてましたああ〜」
これには一堂ズッコケるしかなかった……やはりプロの写真家とはいえ父親譲りのドジッ娘であった。すぐさまスカートのポケットからフィルムを取り出しカメラにセットする。そのフィルムも主流の白黒ではなくライカ用に開発されたばかりで当時非常に高価な上貴重だったカラーフィルムであった。
「は〜い、しばらくそのまま……3、2、1……」
シャッターの短い金属音が響くと無事撮影は終了した。直後にギネビア姫は大笑い。
「アハハハハ……と、とても面白い方ですわ。きっと緊張しているのを察して場を和ませようとしたのですね。とても気の利く御方ですわ、アハハハハハハ……」
生来のドジを場を和ませるためと勘違いしているギネビア姫。これって所謂ラッキードジ?そんな中一人強張っているのが誰であろうリシャールであった。ギネビア姫が大笑いする場面を見るなど当然初めてのことであったが、こちらは立場が立場なだけに笑えない。凍りついたようになってしまった。それは飛鳥姫も同様である。
「ギネビア姫、まことに申し訳ございません、こんな失礼なことを。しかし、花代は本当にプロの写真家でございまして、その証拠にこれを献上するために持って参りましたのよ」
と言って花代のフォローのため飛鳥姫が用意したのは日本皇国が世界に誇る大判のオールカラーグラビア誌、『NIPPON』である。当時としては世界的にも珍しい目の覚めるようなフルカラーの鮮やかな表紙、そして写真のみでストーリーを語り活字による説明は補足に過ぎない斬新な手法が特徴であり、日本工房にて名取 洋之助を中心に土門 拳を始め世界にもその名を知られた写真家が数多く集まり制作、季刊と年発行、更に臨時刊行から成っており一冊8000円と非常に高価だったにも関わらず10ヶ国語に翻訳されて世界にも配信されていた。当時『LIFE』や『TIME』と並ぶ世界の最先端を歩む写真誌の一つと見做されていたことは間違いない。
またNIPPONは旧世界でもパンパリアを通じて流通したものが入手できるのだが、出回るのは極めて少数であるため王族といえども入手困難であった。ギネビア姫もその存在は知っていたがこれまで見たことはない。なので、初めて見るNIPPONに目を輝かせるギネビア姫。
「まあ、これがNIPPONですか」
しかもそれは将臣陛下が即位なされた記念に発行された臨時号であり、これまでになくふんだんにカラー写真を多用していたことから特別に価格も高く何と倍以上の20000円。にも関わらず初版はすぐに完売、すぐさま増刷するも追いつかず結局第5刷まで発行するほどであった。実はこの臨時号刊行にあたって花代が撮影した写真が全て採用されており、マニアの間では撮影者の名前を取って花代号とも呼ばれている。それは宮脇 花代が女性写真家として世界にその名を知られる切っ掛けにもなった、当人にとっては出世作である。御用写真家は数多くいたが、これだけ皇族に接近して写真が撮影できるのは実は当時花代だけだったのである。しかも写真のセンスは抜群とくれば日本工房としても採用しない理由はない。日本工房も即位の礼を撮影すべく総力を上げて腕利きの写真家を送り込むがその出来には雲泥の差があったという。
このとき花代が撮影した写真はおよそ3000枚。全てカラーであり、それでも誌面の都合上1000枚に絞らざるをえなかった。このときのことを名取氏は後年になってもはっきりと覚えており、どの写真も完成度が高過ぎて自ら手掛けた編集作業は泣いて馬謖を斬る想いだったと語っている。
「どの写真も実に素晴らしいですわ。まるで写真を見ているだけでストーリーが伝わってくるよう」
さすがに王族だけあって最高レベルの教育を受け教養レベルが高いこともあるのかその本の本質がわかるらしい。
「では、写真は明日の昼までには仕上がりますのでそのときに」
「わかりましたわ」
最後は謁見とは思えぬほど和んだムードの中無事終了し、リシャールは姫君たちを控え室まで送り届ける。その途中、見覚えのある顔触れと出会う。それは、オラン公国のオーロラ姫、グランディア王国のファミーユ姫、オーロラ姫に仕える親衛隊長トパーズであり、これまた見覚えのある男、ピエトロが率いて謁見に向かうところであった。そんなピエトロに声をかける。
「やあ、ピエトロ。君も今から姫君を謁見に?」
「ああ、誰かと思ったらリシャールじゃないか。本来なら着いたばかりで何も食べていないだろうから朝食を済ませてからでも……と進言しようとしたらこちらの御方が重要なことはすぐさま済ませてしまいたいってねえ」
と言ってピエトロが視線を送る先にいるのはトパーズであった。身体が丈夫でないオーロラ姫のことを考えればすぐに謁見というのはキツい気もするが、どうやっても避けられない重要事項は早く済ませておいたほうが後々のんびりできると考えたのかもしれない。
「ピエトロ殿、お心遣いはまことにありがたいのだが、やはり挨拶は真っ先に済ませておくのが礼儀というもの。朝食はその後でも遅くはないだろう。朝食は逃げはしないのだからな。それよりギネビア様も多忙の身だし、これから諸外国から馳せ参じる王族や貴族などの貴賓との謁見が次々と控えているのだ。何でも時機というものがある」
尤もな話だ。と、トパーズは皇国の姫君のほうを見やる。
「やはりそなたたちが一番乗りであったか。実は昨日の晩に甲板にいて空を眺めていたら流れ星を見つけたかと思って望遠鏡で見てみたらそなたたちの乗った飛行機であった。相変わらず速いものだなと思って」
実はあの晩、トパーズは涼むために甲板に出て空を眺めていた。すると、何か流れ星のようなものが。しかし動きが目で追えるのでもしかしたらと望遠鏡で見てみたらそれは皇国の姫君一行が乗った富嶽だったというわけである。あのとき有璃紗姫はレーダーで帆船らしき反応を確認したと思ったら、それはやはり彼女たちが乗った船だったというわけである。
「我々は馬車ではありませんのであの馬車の大行列に巻き込まれたら馬が怯えるでしょうし……それに混雑は好きではありませんから」
と、有璃紗姫が返す。でもって、オーロラ姫たちも皇国の姫君と話し込んでちょっとした井戸端会議状態に。その様子を呆れた様子で見ている二人。
「なあピエトロ、女が三人寄ればかしましいなんて昔の人はよく言ったよな」
「ああ。すぐに謁見に向かわねばと言いながらトパーズ殿もすっかり井戸端会議に加わってるし」
そして約30分が経過しただろうか。
「積もる話はまた後で。ではピエトロ殿、ギネビア様との謁見に向かいましょう」
と、さっきまで井戸端会議していたことも忘れお仕事モードに戻っているトパーズに半ば呆れ顔のピエトロであった。
こちらも姫君たちを控え室まで無事送り届けて朝の重要なイベントはとりあえず終了。この後は昼食まで特に何もないし、それに昼過ぎからは諸外国から馳せ参じた貴賓がどっと溢れ返ることになる。謁見の順番待ちなんて御免蒙りたい。それにしても次から次へと予想外の事態に出くわすものだと思わずにはいられないリシャールであった。
因みに本来の招待期日は今日の昼過ぎからであり、皇国の姫君はそれよりかなり前に到着したことになる。昼食も別のダイニングルームに用意して静かに摂ってもらうことにして、舞踏会までの正式なイベントは今日の晩餐会からである。今のところ自分の知る限りでそれより前に到着しているのは皇国の姫君と先程のオランとグランディアの姫君御一行だけだ。今はまだ嵐の前の静けさであり、この数時間後に絢爛豪華な装飾を施した馬車が幹線道をどっと埋め尽くすことになるのだ。
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