バラステア戦記−ファレルの赤い星

第一話

009


 時は流れた。ゼキスートの政変から5年の月日が流れていた。その間に大陸の勢力図は
大きく変化していた。カルノア亡き後のバラステアの覇権を掛けて、北方軍団元帥ダレン
=リドックと南方軍団元帥ベラビア=カーンによる激しい内戦が起こっていたのである。
  両軍団はバランやクレファーの軍を吸収し、帝都バラ・シティ周辺で激しく激突した。
帝都の奪い合いとなった。戦闘は政変から2年以上も続き、大陸一の都市であったバラ・
シティは戦火に焼かれたのである。しかし結局勝敗はつかず、両軍団はバラ・シティを南
北に分断して停戦した。


(北の都 ノースレクト)
 北の都・ノースレクトは、北バラステア最大の都市であり、ダレン率いる北方軍団の拠
点である。今年も本格的な冬が訪れようとしている。
 そもそもダレンが北方軍団の元帥となりこの地に赴任したのは、カルノアの押し進める
領土拡大の侵略戦争に反対した為である。先々代の皇帝から3代にわたってバラステア帝
国に仕えるダレン将軍は、若さと勢いにまかせたカルノアやクレファーの軍事路線には激
しく反対を唱えた。カルノアが帝位に就くまでは周辺の国々と同盟し、貿易を行い、善政
を敷いてきたバラステア帝国であったが、カルノアやクレファーは軍備を拡大し、その権
謀術数で周辺の国々を次々と滅ぼし、略奪を行ったのである。長老格であった老将ダレン
は、その人柄故に国内では信望も厚く、皆に頼られる存在であったが、カルノアの軍事政
策に反対してはるか北方の地に左遷された。
「昔のバラステアを取り戻したい」
ダレンは忠義の士である。どんなに悪政を敷こうとも、主君であるカルノアに対して謀反
をおこすつもりはなかった。
「このままではバラステアはいつか衰退するであろう。その時の為に、力を蓄えねばなら
ぬ」
ダレンは、北方の数ある小民族をその人望で傘下とし、軍団の力を強めていったのである。
精強な北方軍団の中核となっているのは、ダレンの二人の娘であった。姉のセフィは男顔
負けの剣の使い手である。自ら騎馬に跨り、常に軍団の先陣をつとめてきた。辺境の英雄
と呼ばれたアリア=レンハルトの軍と対峙し、互角以上に戦いをすすめたこともある。
妹のティーシャは大司教から位を授かった大召還士である。聖なる法衣を身に纏い、神獣
を召還して敵を撃破するのである。二人の戦姫はまたその容姿も美しく、まさしく北方軍
団の女神のような存在であった。
   そんなダレンの元に、ゼキスードの政変の知らせが飛び込んできた。
「帝国最大の危機だ」
 ダレンは直ちに号令を発し、その軍団をバラ・シティへ向けた。しかし、時を同じくし
てバラ・シティに大軍を向けた者がいた。南方軍団元帥・ベラビア=カーンである。

 ベラビア=カーンは、帝国内でも知将として知られ、バランやクレファーも一目置く存
在であった。南方軍団は、東南地方の蛮族やバラステアに反抗する部族集団を掃討する為
に創設された軍団である。猛暑と疫病の危険が付きまとう南方の遠征に、ベラビアは自ら
願い出てその元帥となった。
「あいつは気でもふれたのか」
バランなどはいぶかしがったが、クレファーはそのベラビアの行動に注意を怠らなかった。
あえて中央政府から遠く身を置くには、何か企みを感じたからである。
 ベラビアは中央の異変を聞くや、直ぐに大軍を帝都へ向けた。
「この好機は逃さぬ」
北方のダレンと違い、ベラビアにはバラステアを掌握し、覇権を握らんとするはっきりと
した野望があった。ベラビア軍は、南方の蛮族たちの軍も吸収していた。
「帝都の美しい女達は全て奪った者に与える!」
「おおおおおーーーーー!」
蛮族の酋長達は、肌の白い帝都の美女を我が物とするために興奮した。

 両軍団は、帝都バラ・シティの郊外で衝突した。激しい内戦は2年以上も続き、やがて
停戦となったのである。


 (バラ・シティ)

「あっ・・・あっ・・・あっ・・・あっ・・・・」
引き締まった体をした男が、はげしく女を抱いていた。
「あああ・・・・また・・・・いく・・・・・」
エスリアはこの娼婦宿でも一番人気のある女だった。毎晩エスリアを目当てにくる男達で
この宿は賑わっていた。だが娼婦であるエスリアが一晩のうちに4度の絶頂を味わうのは、
この客が初めてだった。男の体力はまさに底なしに思えた。客を相手にイッた振りはよく
やるが、今晩のエスリアにそんな余裕はなかった。
(こんな男は初めてだ)
終わった後、エスリアの腰はがくがくと震えて、起きあがることが出来なかった。顔に大
きな傷のある男は、目をつぶって煙草を吹かしている。
「あんた・・・・兵隊さんだろ?顔に大きな傷があるんだね」
「ああ」
エスリアは、その引き締まった男の全身を愛おしそうに撫でた。
「あんた、最高だったよ」
 男の目に、もはや目の前の女の姿は写っていない。男には、女を抱く度に思い出す過去
があった。
「名前を教えておくれよ」
「ハースだ」


 ハース=ウェイレンスは、バラステアの小さな村に生まれた。父はバラステアの兵士だっ
た。当時のバラステア帝国は、まだ列強の一国に過ぎず、戦争もない穏やかな国であった。
しかしハースは、幼い頃から剣の修行を積んでいた。
「ハース、よく聞け。自分を守れるのは結局自分だけだ。父さんは戦争へ出かけていつも
家にはいられないかも知れない。何かあった時に自分を守れるのは、最期はこの剣だけな
んだ」
父の口癖だったが、ハースはこの言葉と信じていた。
 ハースにはララという4才年上の姉がいた。ララはバラ・シティの名門女学校へ通って
いた。頭もよく、ハースにとても優しくしてくれる姉であった。ララはとても美人で、ラ
ラが人気があるのはハースの最高の自慢だった。とても面倒見がよく、いつもハースの相
談にのってくれる姉であった。
 ハースが12才の時、ララが家にボーイフレンドを連れてきた。その時は父も母も出か
けていて留守だった。
「ヘーイ、こいつがララの弟かい?」
「そうよ、ハースっていうの」
「生意気な目をしたやつだな」
 ハースは始めからこの男が好きではなかった。また、大好きな姉を取られたような気が
していい気分ではなかった。二人はララの部屋に閉じこもってしまった。
 しばらくすると、ララの部屋からかすかな声が漏れて聞こえてくるのがわかった。
(あああ・・・・いいわ・・・・もっと・・・・!)
ハースが部屋をそっと覗いてみると、裸の男がララの上にのしかかっていた。ララは女学
校の制服を下半身だけぬがされ、上半身も乳房のところだけがまくられたようになってい
た。
(パン、パン、パン、パン)
男の腰がララの腰にぶつかる卑猥な音が部屋に響いていた。ララが恍惚の表情を浮かべて
いるのがわかった。やがてララの体がぶるぶると震えると、男にしがみついた。男もうめ
き声を上げると、腰をララにおしつけたまま動かなくなった。見ていたハースは、自分が
激しく勃起していることに気がついた。男と女のことは知っていたが、ハースにとって姉
の淫らな姿は衝撃以外の何者でもなかった。
 その夜、ハースはララの部屋へ行った。
「姉さん、入るよ」
「どうぞ」
優しい姉は笑顔でハースを迎えた。
「どうしたの?ハース」
「今日、ボーイフレンドとこの部屋で何をしてたんだい?」
「えっ?」
ララが驚きの表情を浮かべる。
「あなた・・・まさか・・・・」
「ずっと見てたよ。俺はあいつのことが嫌いだ」
そういうなりハースは姉に飛びかかった。
「何をするの!ハース!」
ハースは無理矢理姉の服を脱がそうとした。
「俺のことが嫌いなの?姉さん」
「そんなことはないわ、だけど・・・・・」
ハースは、ララの着ている物を脱がせると、自分も下半身裸になった。ハースのモノは腹
につくほど勃起していた。
「ハース・・・あなた・・・・」
「姉さん、俺は姉さんのことが好きだ。あんな男よりずっと・・・・」
ハースはララの脚を無理矢理開かせた。
「お願い、こんなことはやめて、ハース。姉弟でこんなことをしてはいけないわ」
ハースは、ララに自分の物をあてがうと、はじめはなかなか入らなかったが、場所を見つ
けると、ララが抵抗しているのにかまわずに無理矢理挿入した。
(ずにゅう・・・・・)
(ああああ・・・)
ララは、自分が濡れているのに気づいた。知らないうちに自分も興奮してしまっていたの
か。
(なんてこと・・・ハース・・・・)
ハースは挿入するとすぐに射精した。我慢できなかった。大好きな姉と交わっている。ハ
ースは最高に興奮していたのだ。やがて抜かずにハースは三回射精した。ララの秘部から
はハースの欲望が溢れでてきた。そしてララの泣き声に気がついた両親によってハースと
ララは離されたのだった。
「ハース!おまえなんということをしたんだ・・・・・・・」


 ハースは、女を抱くたびにあの時の事を思い出した。あれから何人もの女を抱いたが、
あの時ほど興奮することは無かった。ハースは、20才になった今も故郷のララのことを
想っていた。


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