魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫19)


  第84話 首都の消滅、悪霊大爆発!!
原作者えのきさん

 首都から一部の貴族が逃げるのを、見張り台の上から見ている人物がいる。それはゴー
レム軍団を操り、悪霊を呼び寄せた魔道師だった。
 「あんな連中助けなくてもいいのに、リーリア殿はお優しいですね。ま、そこが彼女の
良い所なんでしょうけど。」
 少し残念そうに呟いた魔道師は、再び開かれた正門の扉を見た。
 地獄から逃れられる唯一の場所に、多くの者達が殺到しており、極めて混乱した状況に
なっている。
 誰もが他の者を押し退け、我先に逃れようと足掻いており、その浅ましい様相は先に逃
げた貴族達とは比べられない。
 やがて浅ましい連中は悪霊どもに引き戻され、無情にも扉は閉じられる・・・
 「うわああ〜、た、たすけてくれ〜っ。」
 「俺達が悪かった〜っ、許してくれ〜っ。」
 いくら叫んでも、犯した罪から逃れられない。先の貴族達とは違うのだ、弱き者から財
を奪い、悦んで虐げた罪は極刑に値する。
 『グハハ〜、逃げられると思うなよ〜。復讐してやるううう〜っ!!』
 「ひぃえええーっ!!」
 首都に再び、悪霊の笑い声と罪人の叫びが轟いた・・・
 
 首都の中央、その広場に鎮座する巨大な黒い球体。それは悪霊と怨念をエナジーにして
いる最狂の魔道爆弾・・・
 それはガルダーンを憎む悪霊と人々の怨念だけでなく、己の罪で餌食になった貴族達の
悲鳴と恐怖をも吸収し、禍々しく巨大化していた。
 そして巨大化に比例し、表面に浮かぶ顔も残虐さを増している魔道爆弾。そのザックリ
割れた口から、凶悪な雄叫びをあげた。
 魔道爆弾は一触即発で破裂しそうなほど膨れ上がっているが、更に負のエナジーを喰ら
う。
 そして・・・冷酷な目に恐ろしい悦びの光が宿る!!
 『ケケケ〜ッ、喰ってやるぜベイべ〜ッ、なにもかもゼンブよおお〜っ。』
 巨大な口がクワッと開き、周囲の全てを吸い込み始めた。魔道爆弾を中心にして巨大竜
巻が発生し、あらゆるものが喰らい尽くされる。悪霊も怨念も、悲鳴も恐怖も、なにもか
も・・・
 強欲と惰眠を貪ってきた貴族達と共に、悪行を重ねた2人の愚か者達も吸い込まれる。
 「あ〜れ〜っ、食べられちゃうでやんすよおおお〜っ。」
 「ひえ〜いっ、誰かボクを止めて〜っ、ボクを助けて〜っ(涙)」
 哀れブレイズとアントニウスの2人も、魔道爆弾に喰われてしまった・・・
 
 巨大竜巻は、虐げられた人々の悪霊と怨念の咆哮となって荒れ狂う。
 上空で浮遊し、建物の崩壊を見た魔道師は、歓喜の悦びで身体を震わせた。
 「おおお〜っ。来てますっ、負のエナジーが凶悪なほど来てますねえ〜っ。まもなく・・
・美しき悪滅の花火が打ち上がりますっ!!さあ〜っ、カウントダウンですよおお〜っ!!
」
 魔道師の叫びに呼応するかのように、極限まで巨大化した魔道爆弾が吠えた。
 『ギィエ〜ケッケッケ〜ッ!!ブチ壊すぜベイべ〜ッ!!ブッ飛ばすぜベイべ〜ッ!!』
 闇のように黒い魔道爆弾の表面がバリバリとヒビ割れ始め、ついに・・・負のエナジー
が臨界点に達した!!
 
 ---カッ!!
 
 きらめく閃光・・・そして大爆発!!
 凄まじい衝撃波が、城も建物も木っ端微塵に破壊し、大地を深く抉る。そして灼熱が全
てを焼き尽くした。
 灼熱を伴った閃光は、余りにも鮮やかに、そして美しく光り輝いた。それは悪滅の閃光・
・・悪を破滅に導く破壊の光・・・
 大爆発の破壊は無差別に全てを襲う。
 爆風が木々を薙ぎ倒し平原を削ぐ。そして首都から逃げ出した貴族達にも破壊の牙が迫
る。
 首都に背を向けている彼等は、振り返る事なく奔走している。迫る気配を感じた少女の
父親が叫んだ。
 「後ろを見るなミランダッ!!」
 父親と母親が娘を庇って地面に伏せ、その他の者も姿勢を低くして身を守る。
 閃光と爆風が彼等の頭上を駆け抜け、間一髪、貴族達は助かった。
 爆風が去り、安堵の溜め息をついて立ち上がった彼等は、天空を貫く巨大キノコ雲を目
撃したのだった・・・
 
 ガルダーンの首都を襲った異変は、周辺地域に非難していたガルダーンの民達も目撃し
た。
 天高くそびえ立つキノコ雲・・・それを見た者達は、言葉を失って立ち尽くす。
 あまりの驚愕な事態に、(何が起きたのか?)そんな単純な疑問すら思いつけない。た
だ・・・キノコ雲が消え去ると同時に、ガルダーン帝国を支配していた悪が滅びた事を知
るに至るのだった。
 
 閃光と爆風が収まり、やがて時間の経過と共に土埃も消え、爆心地の情景が見えるよう
になった。
 草も木も吹き飛ばされた荒野の中央に、大きなクレーターができており、首都の痕跡は
カケラも残っていない。
 そこは、何もかもなくなっていた。かつてここにガルダーンの首都があったなどとは想
像もつかない。誰もいない、何もない、余りにも虚しき光景だった・・・
 どれだけガルダーンを憎んでいる者であろうとも、この有り様を見れば、憎しみも消え
失せるだろう。
 虚空の空に、感涙を流して悦ぶ魔道師の姿があった。
 ガルダーン帝国を憎む悪霊の力が桁外れに大きかった事により、稀に見る壮大な悪霊大
爆発が起きた。その素晴らしい悪滅の光景を目の当たりにした魔道師は、最高の感動に浸
っているのである。
 「わ、私は今・・・最高に感動しています〜っ!!これほど素晴らしい悪霊大爆発を見
る事ができたとは・・・我が人生に悔いなしであります〜っ!!」
 虚しき場所に響くのは、悦び感動する魔道師の声だけだった・・・




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