魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫18)


  第82話 悪の権化、暴君グリードルの最後
原作者えのきさん

 ついに暴君グリードルは、戦女神アンジェラの前に膝をついた。
 自分の意思とは関係なく土下座し、地面に頭をつける自分に気付き、グリードルは徹底
的な敗北感に飲み込まれる。
 「・・・お、俺は何をやってるんだ?う、うそだ・・・俺が負けるなんて・・・うそだ・
・・」
 どんな手を使っても勝利を奪い取ってきたグリードルにとって、この敗北は決定的だっ
た。2度目の敗北・・・マリシア王妃、そして娘のアリエル姫に負けた。
 女神アンジェラは、這いつくばるグリードルの頭をヒールで軽く踏んだ。そして冷たく
言い放つ。
 「今の気持ちは如何かしら?悔しいでしょう、辛いでしょう、吐きたいほどにね・・・
でもあなたは同じように、多くの人々を踏みつけてきたのですわ。奪い取り、嘲笑い、足
蹴にし、そして・・・汚してきた・・・その謝罪と償いをなさい。ただし私に謝るのでは
ありません、あなたに苦しめられた多くの人々にですわ。」
 頭を踏みつけられたグリードルは、怒りで全身をワナワナと震わせる。しかし、軽く踏
まれているだけなのに、いくら力を入れてもヒールを振り払えない。
 矮小な虫ケラのように地面に這いつくばらされ、美しく神々しい女神に足蹴にされる屈
辱。プライドの高い暴君は、反抗の意志を露にした。
 「・・・謝れだと?償えだと?うるせえ・・・だれが謝ってたまるかっ、俺はグリード
ルさまだっ。最強の暴君グリードルさまだ〜っ!!」
 凄まじい執念で立ち上がり、鬼の形相で吠えるグリードル。彼はどこまでも(悪)だっ
た。骨の髄まで(悪)だった・・・
 アンジェラは悲しそうに、そして冷徹に呟く。
 「そう・・・そんなに苦しんで地獄へ行きたいのですね。もう容赦は致しませんわ。」
 「ほざけ〜っ!!くそったれが〜っ!!」
 迫るグリードルを前にして、両腕を広げるアンジェラ。そのドレスが大きく拡がり、周
囲を覆い尽くす。
 黒いベルベットのように拡がったドレスが、グリードルの足を拘束した。
 「うあっ!?歩けねえ、あ、足が・・・動かねえっ。」
 先代アンジェラから譲り受けた戦闘用ドレスは、使用者の意のままに形や能力を変える
事ができる。
 トリモチを踏んだかのように足掻くグリードルの足に、ブラック・ベルベットから生え
たイバラが絡みつく。鋭い刺の付いたイバラは容赦なくグリードルを苛んだ。
 「ひいいっ!?痛てえっ!!なんだこれはっ!?」
 「それは悪魔のイバラ(デーモンズ・ソーニャ)。その鋭い刺がもたらす痛みは、虐げ
られた人々の怒りっ!!」
 悪魔のイバラがグリードルを覆い尽くし、鋭い刺が全身を刺し貫く。鮮血が迸り、地獄
の激痛が襲いかかる。その激痛の全てが、虐げられた者の怒りなのであった。
 悲鳴を上げ、悶え苦しむグリードルにアンジェラは贖罪を求める。
 「苦しいですか?今なら猶予がありますわ、助けてほしいなら、全ての人々に許しを乞
いなさい。」
 だが、暴君の返事は愚劣だった。
 「やかましいっ!!これでも喰らえっ!!」
 アンジェラの顔に唾を吐きかけるグリードル。悲しみの女神の顔が、怒りの顔に変貌し
た。
 「・・・愚かな・・・もっと苦しみたいなら望み通りにしてさしあげましょう。」
 白い指を突き付け、絡まったイバラを操る。
 「な、なに?うぎゃあああ〜っ!!」
 轟く絶叫。イバラはグリードルの腕と足を捩じり、骨も肉もズタズタに粉砕した。
 「今のは苦しめられた我が父と母、悲しく泣いた弟マリエルの分。そしてこれは・・・
侵略されたノクターンの民と、虐げられたガルダーンの民の分っ。」
 再び骨が砕ける音と悲鳴が響く。
 全身の骨を砕かれ、肉とハラワタを刺で切り裂かれ、グリードルは泡を吹いて悶絶して
いる。
 ここまでやられたら、さすがにグリードルも己の罪を認めるだろう・・・アンジェラは
思った。
 血塗れの頭に手を置き、再び尋ねた。
 「これが最後の通告です、苦しめた人々に謝るなら、楽にしてあげますわ。」
 しかし・・・返答はアンジェラを失望させた。
 「・・・ぐがが・・・だれがあやまるか・・・くそくらえ・・・」
 これで、女神の慈悲は完全に閉ざされた。暴君は愚かな選択をしてしまった・・・
 女神の刑が執行される!!
 「我が最大の陵辱処刑方法で、地獄に堕ちてもらいますわ・・・」
 アンジェラが手を横に出すと、ドレスと同化していたマリーが現れ、剣に変化する。
 「魔剣変化、エクスキューション・ブレードモード!!」
 マリーの身体が、極刑をもたらす魔剣に変化した。全ての悪党が怯えるであろう冷酷な
デザイン・・・まさに処刑の魔剣と呼ぶに相応しい姿となった。
 巨大にして恐ろしい魔剣を手にし、グリードルに突き付けるアンジェラ。
 拷問を行う悪魔のイバラがブラック・ベルベットに収まり、ドレスも元に戻る。後には、
ボロクズ状態のグリードルが転がっている。
 手足を砕かれ、もはや立つ事もできないグリードルの上に、美しい女神は仁王立ちする。
 「あなたの命運もここまですわ。いまさら許しを求めても無駄ですわよ。」
 美しく冷徹な女神の視線に、グリードルは怯え震える。
 「ま、まて・・・何をする気だ・・・や、やめろ・・・」
 その頭上に、高々と掲げられる魔剣。そしてグリードルの胸に極刑の刃が突き刺さる!!
 「ぐぎゃあああーっ!!」
 深くズブズブと食い込んだ魔剣が、暴君の血を啜る。そして、最大の陵辱処刑が執行さ
れる。
 「・・・あなたは私から全てを奪った・・・平和な日々も、愛する人々も・・・今度は
あなたから全てを奪ってあげますわっ。」
 アンジェラは魔剣に跨がり、男性器を模した形の柄を秘部に挿入する。
 「地獄に堕ちなさいグリードルッ!!エナジー・ドレインッ!!」
 
 ーーーシュオオオ〜ッ
 
 魔剣がグリードルの全てを吸い尽くす。見る見るうちに暴君の体が痩せ細る。
 「うぎゃうおおお〜、のうおおお〜、おびょあううう・・・うげげげ・・・お、おおお
〜。」
 言葉にすらならぬ悲鳴をあげ、狂気の苦痛で、のたうち苦しむグリードル。ミイラ状態
になっても、尚もエナジーを吸い尽くされる。
 グリードルから奪ったエナジーが、魔力に変換されてアンジェラの身体に送り込まれる。
 それを最高の快感をもって受け入れるアンジェラは、恍惚とした表情を浮かべて悶えた。
 「・・・あ、ああ・・・快感・・・ですわ・・・」
 閉じた目から、美しい涙が一筋流れた。それは復讐を遂げた喜びか、全てを奪われた事
への悲しみか・・・
 やがて、グリードルの全てを吸い尽くし、アンジェラは美しい裸体を輝かせて佇んだ。
 その姿は麗しき女神、悲しみを湛えた美しき女神・・・
 緩やかな動作で魔剣を引き抜くと、美しい視線で地面を見る。
 そこには、針金の如く干からびた(虫ケラ)が這いずっていた。全てを吸い尽くされた
グリードルの成れの果てだった。
 (・・・こんな虫ケラに、私は全てを奪われたの?)
 悲しく呟き、ヒールで(虫ケラ)を踏み潰した。
 それが・・・最強の暴君として人々を恐怖と絶望に追い込んだグリードルの、哀れな最
後だった・・・
 酷く虚しい気持ちが胸の中を吹き抜ける。もうグリードルへの憎悪も怒りも、全て消え
ていた。
 憎悪が消えたのはアンジェラだけではない。怨念を込めてグリードルを恨んでいた人々
の心も、全て浄化される。
 城に取りついていた悪霊達が、歓喜の声を上げて消滅していく。
 周囲の様相も、元の城の姿に戻る。
 アンジェラは変化を解いたマリーに視線を向け、静かに呟く。
 「・・・マリー、終わりましたわ。」
 「ええ、ほんまに終わったんですね。」
 抱き合う2人・・・一つだけ心残りだったのは、グリードルから贖罪の言葉を聞けなか
った事だった。
 でも、そんな事はもういい・・・悪は滅びたのだから、もう・・・何も恨まなくていい
のだから・・・
 城の外に目をやると、そこではまだ、悪霊達やゴーレム軍団が暴れ狂っていた。
 まもなく首都が消滅する。
 2人は、忌まわしき城を後にした。まもなく、憎しみの全てが費える・・・


 To・Be・Continued・・・



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