オーロラ姫外伝・夢の中へ2


「姫様・・・姫様・・・」
「・・・・う、うん・・・・」
 侍女頭のマリイの声がオーロラの悪夢を醒まさせた。
「どうされたのです?随分うなされていたようですが・・・お熱でも」
 マリイがオーロラの額に手を当てる。
「熱はないようですが・・・・」
「・・・・夢?夢だったの・・・・よかった」 マリイの言葉には耳を貸さず、胸をなで
下ろすオーロラ姫。しかし、その全身は汗びっしょりだった。
「まあ、こんなに汗をかかれて。お着替え下さい。お風邪を召しますから・・・」
 マリイは姫を立ち上がらせると、寝間着を着替えさせようとする。おとなしく立ち上が
って、従おうとするオーロラ姫。その時、下半身に、妙な感触を覚えてためらった。
「あ、マ、マリイ・・・。ちょっと待って」
「あら・・・」
 既に遅く、マリイは姫の寝間着の下腹部に大きく広がる『染み』を発見した。
「ち、違うの!これは違うの・・・・」
 オーロラ姫は慌てて取り繕うとする。この歳をしておねしょなど覚えのないことなのだ
から。
 しかし、マリイは全てを悟ったように微笑むと、姫に耳打ちした。
「素敵な殿方の夢でもご覧になりましたか・・・」
「・・・・・」
 オーロラ姫は顔を真っ赤に染めて押し黙ってしまった。
「さあ、お着替えなさい。心配することはありませんよ。それは姫君が大人になられてと
いうことですから」
「マリイ!」
 くすくすと笑うマリイに、オーロラ姫は恥ずかしさのあまり、侍女を叱咤した。
「・・・でも夢でよかった・・・・」
 オーロラ姫はほっと胸をなで下ろした。そして、あのようなおぞましい夢を見たことは
忘れようと思った。

 その夜の舞踏会は盛大に開かれた。この舞踏会でオーロラ姫は、オルフェ王子と運命の
出会いをすることになるのだが。あの、悪夢が現実の物になろうなどとは、知る由もなか
った。


終わり
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