白鳥の歌 5

藤倉 遊(ふじくら・ゆう)




「はっ,なんという声だ」

ロットバルトはあざけるように言う。

「あれがそなたの本性だ。男のものを早く欲しいのだ」

「違います!」

「違うものか。そなたは久しぶりの快感に我を忘れておるのだ」

「違います!違います!」

「要するに服をつけたまままぐわっておるから男のほうは『もつ』のだ……だが,おなご はじらされることになる」

ロットバルトは映像を眺めながらにやっとする。

「あの王子,童貞ではないな」

オデットは激しくかぶりを振った。

「王子様はまだ娘を知らぬとおっしゃられていました!」

「ただ,そなたがそう思い込みたいだけよ」

ロットバルトは鼻で笑う。

「童貞の男というものは,たいてい自分の欲望のまま,あっというまにいってしまうもの だ。おなごの生理というものをよく知らぬからな」



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