陵辱カタルシス─王国の行方─
第1話
隠者
【1】
エルトガ王宮から出てきた将軍ヌーグの心は空にも舞い上がらんばかりだった。
──お前に留守を任せたい
エルトガ王アンブローズからの思いがけない命令。てっきり隣国ユガへの侵攻軍にかり出される話と
思っていただけに、良い意味で「裏切られた」という感じだ。
「これほどまで、王に信頼されていたとは…」
ヌーグは小躍りしながら食糧庫へと急ぐ。
「ユガ侵攻には王を始め、主だった将軍が参加するといっていたな。なるほど、本国を空っぽにする
のは流石に危険、と判断したか」
食糧庫は朝昼晩の決まった時間以外には、人の出入りがない。鉄扉が鈍い音を立てて開く。
「しかしな、王よ。お人好しも度が過ぎるぜ。ま、俺もこの間までは忠勤一徹、『エルトガの柱』の
称号に恥じないよう努めてきたからな、王は責められないか」
誰もいないはずの食糧庫。だが、奥の、干肉をぶら下げてある片隅には、ぼんやりと明かりが灯って
いる。ヌーグはそれをみつけると、髭面ににたりと笑みを浮かべた。
「…誰です?!」
奥から響く澄んだ女性の声。
「ヌーグめにございます。王妃さま」
「おぉ、待ちわびましたよ、ささ早く」
天井から吊り下げられた干肉をかき分けた奥、木箱の上に王妃は端座していた。王妃アプリクシャ。
彼女は赤いベルベットで仕立てられたドレスに身を包み、孔雀扇をゆらめかせていた。
「お待たせいたしました。お喜びください、実は…」
ヌーグが留守を命じられたことを説明しようとしたが、その言葉は立ち上がったアプリクシャに遮ら
れた。彼女のドレスが立ち上がると同時に、布地が左右に脱げ落ち、妖艶な裸体が突然、現れたので
ある。
「ほほ、どうヌーグ? 簡単に脱げるよう特別に仕立てたドレスは」
「す、素晴らしい…」
ヌーグの股間は一挙に硬くなった。目の前にあるのは、決して若くはないが三十を少し過ぎただけの
肉体である。肌にはまだまだ十分な張りがあり、豊かな乳房の天辺は桃色のまま、つんと上を向いて
いた。股間を隠す茂みの奥も、いまだ鮮やかな薄紅色を保っていることも、ヌーグは知っていた。何
より、その清楚な顔立ちと淫らな裸体が描く、見事なまでのギャップがたまらなく獣を刺激した。
「さぁ、見とれてばかりいないで。お前のをお出し」
言われるがまま、ヌーグが慌てて出した巨大で長いペニスをアプリクシャは孔雀扇で弄び始める。
「ふふふ、これよ…ヌーグ…。お前のコレが…」
アプリクシャの表情は陶酔の色をたたえ、盛り狂う情欲に呼吸が乱れ始めていた。
「…ほぅっ!!王妃さまっっ!!」
ヌーグが素っ頓狂な声を上げた。アプリクシャが彼のペニスを口に含んだのである。彼女の舌はまる
で別な生き物なようにねっとりと先端部に絡みつき、時折、いたずらっぽく可愛らしい歯を立てる。
立ったままのヌーグにアプリクシャは家来のようにひざまずき、ヌーグの股間で頭を上下に振りたて
た。一番深く、喉奥までくわえこんだ時には、苦しく辛そうな表情を浮かべるくせに、浅く、ペニス
が唇から外れそうになると、愛しく哀しげな甘え顔で慌ててむしゃぶりつく。
「…んぐっ!…そう…いえば…ぐむっ!…何か…話すことが?……」
「…うほぅ…は…王から…留守を…命じられっ…ぐぐっ」
「…ぬむむっ…ふふふ…それは私の口添えなの…はぁっン…おいしい…」
「…ま、誠でござい…おぉっ…っすかぁ!!」
ヌーグの背筋にじぃんと熱いモノが走った。国内第二位の権力者であるアプリクシャが今、全裸で自
分の前にひざまずき、性奴のように口で奉仕している…。しかも、その女がユガ侵攻に際し、ヌーグ
を留守とするように口添えをしてくれた…。
「…あぁン…ヌーグ…ど、どうしたの?…さらに大きくなってきたわ…」
「お、おお王妃さま!!…私はもう!!」
王妃の計らいを知った上、巧みな舌使いで可愛がられたペニスはもはや限界寸前であった。一段と巨
大化したペニスは、アプリクシャの口を裂けよとばかりに開けさせていた。
「…まだ、だめよ。ヌーグ」
唇の周りを汚していた様々な液体をぬぐいながら、アプリクシャはペニスから離れた。そして、その
可憐な指先を自らの股間にあてる。
「…ここに欲しいの…今日は、あなたの好きな体位をゆるしましょう…」
頂点寸前だったヌーグは呼吸を整えながら、仰向けになり、両脚を開くアプリクシャに近寄った。い
つもは、仰向けになったヌーグに、彼女がまたがるという「騎乗位」しか許されていなかった。
「…では、四つん這いに…犬のように…なっていただけますか?」
「……………こう?」
ややあった沈黙に、アプリクシャのプライドが揺れたのは間違いなかった。だが、欲望と自負を天秤
に掛け、欲望が勝ったのである。彼女は下唇を噛みながらもヌーグの前に尻を突き出す格好で、おと
なしく待った。
「…丸見えになりましたな…王妃さま」
ヌーグは時間稼ぎのため、アプリクシャの尻から陰部をじっくりと眺めた。ペニスを口にするという
娼婦並みの淫らな行為に陰部は妖しく濡れ、薄紅の陰唇はぬらぬらを妖しい光を帯びていた。さらに
四つん這いという恥辱的な格好を続けることに、激しく動揺しているとみえ、膣口やアナルまでもが
呼吸の度にひくひくと収縮を繰り返していた。
「…いわないで……あぁ……早く」
「…では…失礼いたします」
ヌーグは二、三度、ペニスの先端をヴァギナに宛がうと、次の瞬間、一気に奥まで貫いた。
「……あぁぁン!!!!」
突然で強引な侵入にアプリクシャは白い背中を仰け反らせた。ヌーグは王妃の密会を重ねるうちに気
が付いたことがあった。アプリクシャは貴族の家に生まれ、幼少から何一つ不自由ない生活を送って
きた深窓の令嬢であるがゆえに、自負心が高く、羞恥や無道な振る舞いに殊のほか敏感なのだ。しか
も普段は心の奥底で息を殺して潜んでいる淫靡な感覚は、荒々しく嬲られることによってと狂いそう
なほどに身体を駆け巡る性質のようだった。
「…ひぅっ!…あっ!……あぁン!……」
将軍という、鍛えぬかれた肉体による責めに、アプリクシャは絶え絶えに淫声を上げた。四つん這い
という格好も「犯されている」という感覚を与えているのかも知れない。床についた両手が小さな拳
となって可愛らしく耐えている様子も、ヌーグの嗜虐心を煽った。
「どうやらこのポーズがお気に入りのご様子…では、こうして差し上げましょう」
背後から責めるという優位な体勢を得たヌーグは、ペニスの運動を調整しながら、アプリクシャの両
腕を掴んだ。
「…あっ…な、なにを!?…」
「こうするのですっっ!」
ヌーグは自らの太い腕で掴んだアプリクシャの両腕をぐいぐいと後方へと引き上げた。四つん這いと
なっていたアプリクシャは、自然、上体を上げざるを得ない格好となり、その背をしなやかに反らせ
ることを強要される。
「あぁ…く、苦しいっっ!!!」
「さぁ王妃さま、串刺しです!!」
上体が中空に浮き上がったため、ヌーグのペニスはいよいよアプリクシャの膣道奥深く、子宮までを
も貫かんほどに、突き刺さった。
「…あ、あたってます!!…お前のが…私の…私の…」
それ以上は声にならなかった。今まで感じたことがないほどの快感がアプリシャを襲い始めていた。
四つん這いという屈辱的な格好で、ぎりぎりと腕をねじ上げられる。自由はなく、ひたすら男のいう
がまま、股間に欲望を突き立てられる─。
「あぁンッ!!……もう…もう!!」
「私も、いい感じですっ!!」
再び頂点を迎えようとするヌーグは、右腕をアプリクシャの肩へとずらし、彼女の肩を手前へと引き
寄せた。同時に左腕は、彼女のか細いウエストへと回し、これから放つ精液の放出から王妃が逃げら
れないようにホールドした。
「どうです?!…王妃さまっ!…逃げられませんよ…」
「…あぐぅっ!!…すごいわっ!!…私、すごく酷いことされてるわ!!」
ヌーグはとどめとばかりに、右手でアプリクシャの唇をこじ開け、口中から強引な仕草で舌をひっぱ
り出した。ぬらぬらと逃れようとする舌をヌーグは容赦なくぎりぎりと指先で握り締める。
「…ンぐぅぅぅぅっっ」
抵抗を意味するのか、言葉をもがれたアプリクシャの口から辛そうな叫びが漏れた。
「…そろそろ…いきますよっ!!」
「…あぁぁぁっっっ!!!!!」
頂点を迎えたアプリクシャの膣が、強烈な締め付けをみせると同時に、ヌーグのペニスからはおびた
だしい量の精液が発射される。どくどくと脈打ちながら、次から次へ。精液は惨たらしいまでに、女
の産道を汚していった。
「…あぁっ…まだ流れ込んできますわ……」
言葉を取り戻したアプリクシャは絶頂の中、子宮に注ぎ込まれるヌーグの精液を満足そうに下の口で
味わう。やがて「あンっ」という可愛らしい声と同時に、放出を終えたペニスが引き抜かれると、白
い液体がこぽこぽという音を立てて床に零れた─。
「ふふ…ヌーグ。王がユガ侵攻に出発したら…ね?」
いまだ絶頂の余韻に浸るアプリクシャは、ヌーグの胸にあってなお、彼のペニスを指先で弄んでいた。
「えぇ。その時は…いよいよ…」
「…そうしたら、もう隠れて会う必要もなくなる…」
アプリクシャの目は早くも官能と快楽の日々を想い、陶酔していた。
「……ただ一つ。気がかりが…」
「ユイリーン…ね」
ユイリーン・アスタルテ・フォン・エルトガ。アンブローズ王の前妻の娘である。まだ子供の域を出
ていないとはいえ聡明で、前妻譲りの容貌が早くもその将来の美しさを予見させていた。
「はい…。姫さまは大のお父さん子。姫がすんなり私たちの計画を認めるはずがありません」
「……そうね……何か手を打つ必要があるわ…」
食糧庫で交わされた王妃と将軍の密会、そして密談。エルトガ王国の未来には闇黒の影がゆっくりと
立ち込め始めていた。
【1】(了)
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