監獄島の巫女姫 第2話

疑惑〜順調な航海でもどこかおかしい〜

ヘルマスター


 最初のうちは王宮を恋しがっていたアリシア姫もやがて他の巫女候補たちとうちとける
ようになつた。そして船が神殿の島に着くころには巫女たち全員と長年の友人と同じよう
にしたしくなった。
 そして事件は船が明日にも着こうかといった日の夕食の時に起こった。
「方角が違うというのはどういうことですか、エリス?」
エリスというのは王立大学の学長の娘であり、自身もまた博物学に深い造詣をもっていた。
そのエリスが船の方角が違っていると言うのだ。
 「私たちは今、西の海神の神殿に向かっているはずなのです。それなのに今向かってい
るのは北西の方角なのです」
 「それはエリスのかんちがいじゃないのか、もしそうならとっくの昔に船長がさわいで
いるはずだぜ」
そう答えたのは町の剣術道場の娘であるシリルである。彼女はショートカットのよくにあ
う美少女であったが、言葉使いが乱暴だった。しかしそれが彼女の男っぽさを強調してお
り、ひそかに彼女を慕う巫女候補たちが大勢いた。
 「でも私はきちんと観測を……」
 「どうかなさいましたかお姫様方」
 「ギルレン船長」
 「船長、聞いてくれよエリスが変なこと言うんだぜ、船の方位がずれてるって言うんだ
よ」
 「変なことってシリル、私はきちんと星を観察して……」
 「ほう、エリス殿は天体測定もなさるのですか、それはすごいですな、しかし天測はベ
テランの航海士さえ間違えることがあるのですよ」
 「ほ〜らやっぱりエリスの勘違いじゃないか」 「でも〜」
 「もうよろしいではありませんかふたりとも、あすにはようやく神殿に着くのですのよ、
今日は早く床につきましょう、よろしいですね」
 「はいわかりました」
 「へ〜い」
 ふたりのふくれた顔を見てアリシア姫は笑い出してしまいました。
 「それでは私も失礼させていただきますよ、船が方位を間違えないようにしっかりと船
員たちをしっかり監督しなければなりませんから」
 「船長、変な事言わないでください」
 ハハハと乾いた笑いをあげながら去って行く船長を見送りながら、ふとターニャが蒼い
顔して立っているのに気がついた。
 「どうしたというのです、顔色が悪いですよターニャ。どこか体わるいのですか」
 「いいえ姫様、ただエリスの言う方角にひとつ島があったのを思い出したのです」
 「まあ、それはどんな島なんですのターニャ」
 「それは」
 「それは?」
 「それは監獄島です」
船は真っ直ぐ北西の方角へ向かっていった。

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