(銀河の姫君)ギャラクシー・プリンセス♪(1)
ムーンライズ
広大な銀河系の星々を、強大な軍事力で侵略する悪の銀河帝国。
そして、帝国に君臨する独裁者、銀河皇帝。
刻々と魔の手を広げる皇帝の存在を、誰もが恐れて・・・いた。
だが・・・皇帝を恐れているのは、その真の姿を知らない者達だけだった。
真の姿を知る時、恐れと憎悪は(愛と萌え)に変貌する!!
皇帝は・・・悪の帝国に存在する、たった1つの(善)なのだ・・・
悪の帝国に君臨しながらも、悪とは対極の存在である皇帝の正体とは!?
帝国の首都で行われている大規模な軍事パレード。
地獄から轟くかの如き重奏な行進曲が鳴り響く中、上空に巨大宇宙戦艦が集結し、首都の中央を戦車と武装歩兵が行進してゆく。
帝国の絶対的な力を表す軍事パレードは宇宙規模で繰り広げられており、帝国に反する多くの星々に脅威を及ぼしているのだった。
そして大規模な行進は、首都の中央、インペリアル・ガーデンにてクライマックスを迎えた。
機械的な装甲服に身を固めた大多数の歩兵が、片手を掲げて敬礼する。
「我らが親愛なる皇帝陛下っ。あなた様を守るため、我ら一同は七生報国の想いで戦う所存にございま〜す♪」
一糸乱れぬ宣誓が、首都全域に響き渡る・・・
悦びに輝く兵達の視線は、玉座に腰掛ける皇帝に向けられていた。
兵達の声に、皇帝は愛と慈悲をもって応える。
「銀河帝国の平和はあなた達の活躍に委ねられていますわ。勝利の暁には、私の愛をあなた達に進呈しましょう。」
一斉に沸き上がる兵達の歓声・・・
その興奮の高まりは只事ではない。ここまで兵達を魅了する皇帝の正体とは・・・
完璧なる美しさと優しさを秘めた(お姫さま)だったのだ!!
絶対的な権力を示す玉座に腰掛ける、若く美しい(お姫さま)皇帝。
帝国民は彼女を、愛を込めて(銀河の姫君)ギャラクシー・プリンセスと呼ぶ・・・
悪の皇帝が座するべき巨大な玉座は、華奢なお姫さまにとって大き過ぎる代物だ。
そして、憂いと愛に満ちた可憐な姫君は、(悪の帝国)を支配するには余りにも不釣り合いであった・・・
だが、彼女は間違いなく悪の帝国を支配していた・・・狂おしいほどの美しさで全てを支配していたのだ!!
怒濤の如く、兵達のシュプレヒコールは轟き渡る。
「ギャラクシー・プリンセスばんざ〜いっ♪♪美しき皇帝陛下に栄光あれ〜っ♪♪」
目をハート型にして萌えまくる者どもは、心も魂も(銀河の姫君)の虜になっていた。
老若男女を問わず、全ての者を無差別に萌え狂わせてしまうギャラクシー・プリンセス。その麗しの瞳から悲しみの涙が流れているのを誰も知らない・・・
「・・・お願いです・・・もうこれ以上・・・私に萌えないで・・・私のために戦わないで・・・だれも支配なんかしたくないですわ・・・」
全宇宙を武力で支配する悪の銀河帝国・・・
その悪しき帝国全体が、たった1人のお姫さまに萌え狂っているのである。
帝国の民も兵も、お姫さまの命令とあれば悦んで身も心も尽くす・・・必要以上に・・・そして萌え狂いながら・・・
命令しなければならない・・・支配しなければならない・・・それがどれだけ姫君を苛んでいるか、計り知れない・・・
美しい身体を震わせ(支配させられる)重圧に怯えるギャラクシー・プリンセスの後ろに、闇の男が影の如く佇んでいた。
「フッフッフ・・・ギャラクシー・プリンセスによる全宇宙征服の日は近い・・・」
黒いマントを翻し、邪悪に笑う闇の男は、帝国を裏で牛耳る将軍である。
ドクロを模した黒い鉄仮面を被った将軍は、まさに悪の権化と呼ぶに相応しい男だ・・・
彼は先代の皇帝に仕えていた側近であり、帝国の軍団を指揮する最高司令官でもあった。
皇帝の腰巾着、虎の威を借るキツネ・・・彼はそんな悪評も囁かれるほど(表向きは)皇帝に忠誠を尽くしていた。
だが将軍の実力は、皇帝の側近などに収まるようなものではなかった・・・
その気になれば、帝国を我が物にする事もできるほどの実力を秘めているのだ。
しかし彼は、皇帝の玉座を求めようとはしない。むしろ、王の地位など陳腐なものだと笑ってさえいる。
強大な権力に溺れ、自滅した先代の皇帝の轍を踏まぬよう、入念な策略を巡らせていたのだ・・・
「・・・歴史に残る独裁者達は、自分は人の心も魅了していると勘違いして滅んで行った。いくら最高の権力者になろうとも、所詮むさ苦しい男が人心を魅了する事などできんのだ。それはわしとて同じ事・・・」
呟いていた将軍は目をカッと見開き、拳を握って語った。
「だが(お姫さま)は違うっ。お姫さまは男も女も、猛き戦士をも魅了し、全てを支配する・・・萌えに狂った者どもは、美しき姫君のために魂すら差し出す。これほど効率の良い支配はないのだ・・・もはや玉座を求めるなど愚の骨頂!!お姫さまに世界を支配させ、それを操ってこそ真の世界征服は成しえるのだ!!」
恐るべき陰謀が闇の中で進攻していた・・・
表では壮大なシュプレヒコールが衰えることなく続いている。
ギャラクシー・プリンセスは、津波のように押し寄せる萌えの歓声に怯えながら、作り笑顔で兵に手を振っていた。
「・・・みんな・・・戦ってはダメ・・・私のために争わないで・・・」
その願いは小さ過ぎて・・・兵に届かない・・・将軍に操られているギャラクシー・プリンセスは、想いを口にする事ができない・・・
ギャラクシー・プリンセスは自分の意志ならぬ命令を下してしまった。帝国の平和のために勝利してくれと・・・
その一言で兵達は、(親愛なる皇帝さま♪)のために帝国に反する者と萌え戦うのだった・・・
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