鞭と髑髏
Peitsche und Totenkopf /隷姫姦禁指令
Female Trouble
4・無情な劫罰 Die Gnadenlose Bestrafung(中)
「ひああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
うつろな暗黒の地下に、聖少女の悲鳴が幾重にも反響し、悲痛なユニゾンの多重唱とな
る。だが、その悲愴な頌声を耳にする者は誰もいない。ただ一人、この淫蕩な声楽を演出
するコンダクターたる美貌の親衛隊少佐を除いて。
「うふ、ふ、ふふふふ、うふふ…」
ヘルガ少佐は瘧でもおこしたかのように、手にした燭台を細かく震わせた。そのせいで、
狭い牢獄の中を照らす蝋燭の炎が小刻みに揺らぎ、まるで映画のフリッカーのように瞬
いた。血のように赤い蝋燭のオレンジ色の灯に照らされた聖なる公女は、世にもおぞまし
い拷問にかけられていた。
「…っうう、うはあっ、ぐ…ぐうううっ…っ!!いいやあああああっ!」
雅な楽器のごとき繊細な悲鳴をあげるクラリス姫は、過去の人々が愚かしい邪念に駆ら
れて創り出した禍々しい器械に捕らわれている。
全裸のクラリスは後ろ手に手錠をかけられたうえ、両足首にも同じ鉄枷をはめられてい
た。そしてその縛められた両脚は折り曲げられ、手錠と足枷の両の鉄鎖を交叉させられた
ため、公女はエビ反りに拘束されてしまっていた。
その痛々しい姫君を責め苛むのは、…かつて魔女を尋問するために使ったのか、権力争
いに関わった女たちを痛めつけるために使ったのか、それともこの城のかつての主がよこ
しまな欲望を満たすために使ったのか…、いずれとも知れないまま闇の中に隠匿されてい
た、見るからに怖ろしげな三角木馬に他ならなかった。
頑丈な黒檀で作られた木馬は、埃を拭われると全く風化の痕跡すらなく、黒光りする木
理は新品同然だった。だが、三角形に組み合わされた鞍部の板は、果たして何人の女たち
の淫液と血を吸ったのであろうか、その部分だけがさらに黒い染みが広がっていた。
その鋭角の木馬の背に、この城を統べた当主の末裔たるクラリス姫が今や跨らされてい
るのは、あまりにも皮肉なことであった。因果応報、という言葉もあろうが、それはこの
クラリスの無垢な魂を思えばあまりに酷と言えるはずだ。
両手足を背後で拘束された公女は、何の抵抗もできず女の将校に抱え上げられるや、な
すすべもなく三角木馬の稜線に乗せられ、無防備に晒された秘所を食い込ませていた。
「あっ、あひぃっ!ひ!いううううっ!」
骨董ものの歳月を経た代物ではあるが、わずかにギシギシと軋む音がする程度で、頑丈
な三角木馬はびくともせず、可憐な少女に淫猥な拷問を加え続ける。
生まれてこのかた味わったことのない、屈辱に満ちた激痛を股間に受けて、クラリスは
耐えられずに悲鳴をあげ、上半身をくねらせ悶絶していた。拘束された両手両足を一つに
繋ぐ二本の鎖が、ヤスリのように木馬の稜線にゴリゴリと擦れ、傷をつけた。しかし、ク
ラリスの敏感な花弁には逆に、三角木馬の鋭利な角度が激しく食い込んでいく。桜色の襞
肉を切り裂き、奥へ奥へと侵入してくる山型の鞍は、まだ幼さの残る少女の肉体を容赦な
く痛めつける。華奢な少女とはいえ、この体勢で自分の全体重が一点にかかれば、しかも
それが全身で最も敏感な一点であれば、この高貴な乙女があられもない悲鳴をあげてのた
うつことに、慎み深さの欠如を非難するわけにはいくまい。
「ひうっ、う、うう、うあ、あああ…っ!」
自分の全身がミシミシと軋みをあげる響きを感じ、クラリスは必死になって身体を浮か
し、三角木馬の頂きから逃れようとする。だが、あまりにも使い込まれてきたせいか、三
角木馬の稜線は直線になっておらず、中央がへこむように微妙な弧を描いていた。ゆえに、
前後に身体をずらして鞍から下りようとしてもこの傾斜を越えることは不可能だったの
だ。
クラリスはその事実に絶望しつつも、必死に身をよじった。太股を締め、膝を板に押し
当てそれを支点にし、僅かなりと秘所に加えられる痛みを軽減しようとする。だが、使い
込まれた三角木馬はすべすべに磨き込まれており、公女が助けを乞いたい摩擦係数は限り
なく低い。そして同時に、折り曲げられた膝を必死に滑る板に押し当てているうちに、ち
ょうどその部分が微かにへこんでいることに気づき、クラリスは慄然としてさらに悲鳴を
あげた。
その時、三角木馬がガタンッと鳴って軋みながら揺れた。その振動で、かろうじて保っ
ていた微妙な姿勢も崩れ、膝が滑り、公女の敏感な花弁を抉るように三角木馬の鋭角が再
び食い込んだ。
「あきゃあああえううーーっ!」
文字通り絹を引き裂くがごときの悲鳴が響き渡る。栗色の繊細な髪を振り乱し、端正な
顔をしかめて絶叫するクラリス姫の裸身が蝋燭の灯りに照らされ、滴る苦痛の汗が身悶え
するたびに煌めきながら宙を舞うさまを、親衛隊美女は恍惚としてまばたきすることも忘
れて見入っていた。矜り高き高貴の姫君を思うがさまにいたぶり、苦痛と屈辱を与え、そ
して何者にも指弾されることもなく己の欲望…美しい少女を加虐的な性の対象にする欲望
を満たすことのできる権力に、ヘルガ少佐は酔いしれていた。
自らの手で処女を奪い、性の絶頂を強制的に味わわせ、しかしなおも屈服せずに誇り高
い瞳の輝きを失わないプリンセスに、更なる絶望と苦痛を与えるべく、美女将校は再び三
角木馬の前足の出っ張りに足をかけると、再度大きく踏み込んだ。この木馬の四脚は左右
に反り返った垂木を踏んでおり、弾みを付けると小さく前後に揺れて、犠牲者の苦痛を増
すようになっているのだ。
木馬の揺れに、三角の責め板はさらにクラリスの秘所に食い込み、今にもその柔肌を真
っ二つに引き裂かんとする。
「いやあああっ、いやあ、お願い、お願いぃ、もう許してえええっっ!!!」
ギリギリと骨まで響くあまりの激痛に、ついにクラリスは涙を流しながら哀願を始めた。
だが、冷酷な女将校は、今にも心が折れそうな姫君をさらに絶望の深淵に追い込んでや
ろうと、三たび三角木馬を蹴り揺らした。
「…っ!!!」
無慈悲な振動に、今度は悲鳴もあげられず、クラリスは激痛に息を詰まらせ、思わず上
半身を反らして身悶えした。ぷるんっ、と揺れた豊かな乳房からも、滲んだ脂汗が飛び散
る。黒光りする木馬に裂かれるような白い双臀も、汗に濡れて赤く火照っている。
身を反らした勢いで、陰唇の奥にまでさらに深く稜線に侵入されてしまったクラリスは、
あまりに敏感な痛みから反射的に、上半身を逆に前のめりに倒そうとした。しかし両手
首と両足首を繋ぐ二本の鎖のせいで身体を折り曲げられず、中途半端に前屈みになったク
ラリス姫の全身をまた新たな激痛が走り、脊髄を突き抜け脳天にまで達した。三角木馬の
切っ先が、鋭敏になりすぎて充血しきったクリトリスを直撃し、真っ二つに割ってしまい
そうなほどの勢いで突き立ったのである。
「ひいっ!あううっ!あああああああっ!」
これまでにないほど激しい痛みにビクンッと全身を痙攣させ、再度のけぞってしまった
クラリスは、今度は秘所の柔肉だけでなく、アナル深くにまで三角木馬の暴虐を許してし
まったのである。
「!っぎゃあ、あああああ、くああああっ…っん!!」
身体を前後どちらに傾けようと異なった激痛に襲われ、逃げ場を失った公女はパニック
に陥り、激しくかむりを振って絶叫しながら、空しく救いを求め続けた。
「う、うふふ、ふふふふっふふふふ…」
被虐の姫君の痴態に、ヘルガは含み笑いを押さえきれず、この哀れな生贄をさらに嬲り
尽くしたい欲望に全身を震わせていた。身体の奥から湧き出てくるサディスティックな衝
動にかき立てられ、断罪の執行人と化した女将校は、手にしていた燭台をわなわなと震わ
せながら苦悶する美少女に近づけていた。
「!!…ひああっ!ぎゃああああああああっ!!!!」
この世のものとも思えぬ、血を吐くような叫び声が地下牢に反響し続けた。クラリスは
何が自分に起こったのかすらわからぬまま、新たに上半身に襲いかかってきた激痛に悲鳴
をあげていた。しかもその痛みは、いま下半身に加えられている拷問とは全く異なるもの
だった。恐怖に駆られて開いた目に映ったのは、鼻先寸前に突きつけられた真っ赤な蝋燭
だった。
赤々と燃え上がる灯の残像が網膜に灼きつく中、その深紅の蝋がとろけ、まるで血の涙
のようにゆっくりと垂れ、そしてちぎれるように落下していき…。
「っ!!いやああ、いやあっ!いやああああううっ!!!」
クラリスの白い乳房の上に、赤い華が二輪咲いた。だがその花は甘い香りの代わりに突
き刺すような激痛をもたらす高熱を帯びたまま、哀れな令嬢の柔肌を苛烈に責め苛む。気
化する蝋の噎せ返る甘い匂いがくすぶり、そして少女に長く後を引く激痛を与えつつ、蜜
蝋の紅い薔薇はゆっくりと公女の白い肌に固化した。
「美しいわ、クラリス姫。今のお前にふさわしい、淫らな化粧を施してあげるわね」
憑かれたように呟きながら、ヘルガ少佐は燭台を高く掲げ、まるで鐘を鳴らすかのよう
に手を振ると、まるで洗礼の聖水のように、悶絶する全裸のクラリス姫の上半身に灼熱の
赤蝋が降りそそいだ。
「いやっ、いやあああっーーーーっ!!やめてえっ!死んじゃうぅぅっ!!!」
悪意の桜吹雪を浴びたクラリスが激痛に身をくねらせて抗うが、薄笑いを浮かべる親衛
隊美女の燭台を掲げる手は、少女の身体の動きに合わせて付いていくことをやめない。少
女の乳房の上に冷えて固まった蝋の花の上に、さらに新たな溶けた蝋が加わり、鮮やかな
花弁を増やして咲き誇る。
「ひィいいいーーーーーーっ!!」
公女の悲鳴が引きつけのように空気を裂いた。熱蝋に悶絶させられ激しく上半身をのた
うったために、そのはずみで下半身にはさらに三角木馬の稜線が食い込んでいく。すでに
両脚に力を入れて身を浮かせることなどできようはずもなく、クラリスは全くの無抵抗状
態で、三角木馬と蝋燭責めの二通りの拷問を甘受するしかなくなっていた。そんな公女に
できることは、悲鳴をあげて苦痛を訴えることだけだった。しかしその声も、サディズム
の悦楽に浸るヘルガ少佐にとっては、耳に心地よい佳音にすら聞こえていた。
「さあ、もっと啼いて、もっと歌いなさいっ、絶望と、そしてその彼方にある快楽の歌を
っ!」
感に堪えたように、加虐の美女は燭台を左手に持ち替えると、腰に差していたあの乗馬
鞭を引き抜いた。そして、魔女の汚名を着せられた絶望の少女を斬首するかのように振り
上げた。
バシイッッ!!!!!
「ひあうっ!!!」
鞭の一撃を背中に受けたクラリスが、引きつった悲鳴をあげて身をのけぞらせたところ
に、間髪を入れず、その真っ赤な薔薇を幾輪も咲かせた乳房に向かってヘルガ少佐が再び
鞭を振り下ろした。
「はあうっうううっ!!」
強烈な打撃に、白い肌にこびりついていた蝋がぼろぼろと弾かれ、まるで花吹雪のよう
に乱れ散った。紅蝋が剥がれたあとの公女の肌が蝋の熱で火照って、その上を鞭の痕がさ
らに紅く染めた。背中と乳房を交互に痛めつける親衛隊美女の乗馬鞭に、クラリスは息を
詰まらせてくぐもった嗚咽を漏らす。三角木馬の鋭角はますます秘所を断ち割るばかりに
食い込んでくる。
高貴の美少女に、これでもかと三重の苦痛が間断なく襲っていた。
「あううっ、あう、うううっ…はああっ…ひぐぅ!」
冬の紅葉の如くに紅蝋の花が全て散っても、公女の玉の肌は今度は鞭の痕で腫れあがっ
ており、その痛みにクラリスはぐったり前のめりに倒れ込みながら、虚ろな瞳を宙に漂わ
せ、ぜいぜいと荒い息を吐き続けていた。
このまま意識を失っていれば、まだ幸せだったかもしれない。しかしそんなことは、こ
の残忍な女将校が許しはしなかった。
蝋が全て剥がれ落ちたと見るや、ヘルガ少佐はまたも燭台を持ち替えると、力尽きかけ
た哀れな全裸の少女に再び熱蝋を降り注ぎ始めた。
「ぎゃあっ!あああうっ!…いやあっ、もういやああっ!助けて、助けてえええっ!!」
公女の柔肌に再び紅薔薇が咲き誇り、そしてまた鞭の打擲がその花弁を散らしていく…。
食い込み続ける三角木馬の上で、滴り落ちる高熱の紅蝋と、そして非情の鞭の乱打が、
何度も何度も繰り返された。プロメテウスの劫罰のごとき無限の責め苦に、クラリスはた
だ悲鳴をあげて苦痛に身をよじり、その身を支配している悪魔の美女に被虐の供物を捧げ
るしかなかった。
果てしない拷問は、クラリスから時間の感覚と共に、人間としての矜持全ても奪い去ろ
うとしていた。
「ほおら、クラリス…。もうじき、もうじき目覚めるわよ…。お前の中の、淫らで、賤し
い欲望の真の姿がね…」
自分だけの奴隷を肉体的に追いつめたことを悟ったヘルガ少佐も、顔を紅潮させ息を荒
くしながら、さらに己の目論む境地にまで公女を導こうと、鞭の手を休めず打ち続ける。
「はうっ!ああああううっ!」
鞭の一撃のたびに発せられるクラリスの呻きの響きが、クラリス自身にもわかるほどに
変わっていた。
『うそ…わたし、私…、そんなはず…こんなことって…あああ』
後世ならば、これが外部からの苦痛に対して、これを軽減しようと人間の脳が自己防御
として分泌するβエンドルフィンの作用であると分析することもできただろう。だがこの
状態で、クラリスは自分の肉体が意に反していったいどうしてこんな反応を示すのか、全
く理解が及ばなかった。
三角木馬が食い込む秘所の激痛の奥から、何か別の熱いものが脹らんでくる。
鞭と熱蝋に痛めつけられて赤く腫れあがった乳房が、ズキズキと疼く。
そして、苦痛に何も考えられなくなってきた頭の中が、霧がかかったようにぼんやりと
なって、しかも昂揚していくのだった。
そんな自分に、一瞬恐怖すら感じるクラリス。
「痛いのね、苦しいのね…。でも、別のものを感じてきているのでしょう?かわいいわ。
さあ、苦痛と恥辱を突き抜けて、悦楽に身も心も屈しなさいっ!」
公女の乳首を狙った鞭の乱打に、クラリスははっきりと悟った。自分が、絶頂を迎えそ
うになっていることに…。
「いやあああっ、こんなの…はふああ…あ…だ、だめえええっ!」
自分の肉体の火照りを否定しようと、身をのけぞらせて叫ぶクラリスの目の前に、あの
真っ赤な蝋燭が突きつけられた。その炎の向こうでヘルガのゾッとするような笑みが見え
た…その刹那、傾いた蝋燭の芯から悪魔の涎のような赤い滴がゆっくりと垂れ…。
「いっ!」
この上もなく正確に、三角木馬にいたぶられて腫れあがっていたクラリスの肉芽を、熱
蝋が直撃した。
「ゃあああああああああッ!!!!!!!!!!!」
脳天に突き抜ける激痛と共に、クラリスの全身を電流が引き裂き、そして内奥の何かが
激しくはち切れた。打ちのめされた公女の秘部から溢れ出た蜜が白濁しながら、陰唇に食
い込む三角木馬の稜線を濡らし、そして太股に沿ってぬるりと垂れ落ちていく。
「う、うふふふ、ふふふ」
虚脱しきって恍惚の表情すら浮かべ、喘ぎながら引きつったように痙攣するクラリスの
姿に、ヘルガ少佐は喜悦の声をあげた。
「イッちゃった、イッちゃったのね…。三角木馬に乗せられて、蝋燭責めされて、鞭で打
たれてイッちゃったのね?」
クラリスの髪を掴んで上に引き上げて、汗と涙とよだれでぐっしょりと濡れた顔を覗き
込む。
「マゾのお姫さまなんて、変態そのものね!変態!」
その声に、弱々しくも否定しようとする公女は、しかしもう呻き声しか唇から漏れない。
「元になんか戻れはしないわ。お前は永遠に肉奴隷となって生きるしかないのよ。この私
のね…」
地獄の支配者の声が、クラリスの脳裏をどす黒く染めようとしていた。