鞭と髑髏
Peitsche und Totenkopf /隷姫姦禁指令

Female Trouble

4・無情な劫罰 Die Gnadenlose Bestrafung(前)
「う…ううっ……」

 苛酷な煉獄である地下牢に、全裸の公女の呻き声がこもって反響する。
 哀れなクラリス姫は何一つ身にまとうことも許されないまま、今は両腕を荒縄で束ねら
れ、天井の頑丈な滑車を通じて吊されていた。そのありさまは、なすすべもなく鉄鉤にぶ
ら下げられて屠殺されるのを待つばかりの家畜同然だった。
 両足が床から30センチほど浮いた少女の体重が、自分の両手首と両肩を容赦なく引き
伸ばす。いかに華奢で軽い少女の自重も、すぐに苛酷な拷問になって、うら若き乙女の肢
体を責め苛んだ。関節が外れそうな痛みに、クラリスは苦悶の表情を浮かべながら喘いだ。

「…ああうっ…!」
 手首、肘、肩に蓄積される鈍痛に、詰めていた息を一気に吐いた可憐な囚人は、うわず
った苦悶の声を漏らす。

「…うふふふふ」

 吊されて上下に引き伸ばされた美少女の裸身を舌なめずりして眺めながら、やはりあの
邪悪な漆黒の軍服姿のヘルガ少佐が、ヒールの音を甲高く鳴らしながらゆっくりと周囲を
回り、あたかも美術品のように、手中に収めた美虜を隅々まで鑑賞していた。
 クラリスの白く滑らかな肌は、痛みに鬱血してほんのりと紅く染まり、全身にぬめるよ
うな脂汗がにじみだしていた。その濡れた肌があたかもブロンズ像のようにキラキラと光
沢を放っていた。

「…昨夜は、かわいい召使いとずいぶんお楽しみだったみたいね?」
 ハッとして身体をくねらせて顔を向けた公女に、女将校は見透かしたような目を向け、
からかうような口調で嬲った。

「あ、あの娘は関係ありませんっ!お願いだから何もしないであげて!」
 思わずクラリスは叫んでいた。あのけなげな少女がその献身ゆえに迫害を受けることに
なるのは、公女には耐え難いことだった。

 本来ならば、こんな辱めを受ける前に自ら命を絶つ選択肢を選ぶべきだっただろうし、
それは今でも遅くはないはず、と高貴の姫は理解はしていた。しかし今自分が死んだとこ
ろで、総統府で囚われになっている両親を利する可能性は無いだろう。むしろ残虐な帝国
総統の理不尽な怒りをかき立てるだけになる確率の方が高い。聡明な公女は、いま自分に
できることは耐えることだけだ、という冷厳な判断に従うべきであることを理解しつつも、
その恥辱の大きさには今すぐ舌を噛み切りたいほどの衝動に駆られてもいた。
 だが同時に、あの頑是無きラナの存在は、この生き地獄の中で唯一の救いであると同時
に、クラリスに真の魂の救いをもたらす決断をくだす上での大きな枷にもなっていた。あ
の少女が救い出されるまで、自分だけが救われるわけにはいかない…。哀れなほどに慈悲
深いプリンセスは、そう思わずにいられなかったのである。

「…ふふ、一国の大公の娘ともあろうお方が、ずいぶんとご執心なのね。いったい、どん
なことしてもらったのかしら…?」
 ほくそ笑みながら、ヘルガ少佐愛用の乗馬鞭が、宙に浮いたクラリスの両脚の間を下か
ら上になぞり、秘所にたどり着く。

「…ひっ」
 鞭の表面が敏感な果肉に触れ、それをあたかもヴァイオリンの弓のように手前に滑らせ
せていく。
「…っう!くうううっっ…んんんっっ!」
 松脂が塗られてザラザラした乗馬鞭の表面が、繊細な乙女の陰唇に傲慢なほどの刺激を
加えた。

「ふっ、ちょっと妬けちゃうわね。ほら、ご覧なさいクラリス姫。こんなに濡れてしまっ
ているわ」
 公女の股間から抜いた鞭を、親衛隊美女は宙吊りの少女に見せつけるようにかざした。
ランプの灯を反射してぬめるように輝く鞭から、やがてゆっくりと滴が零れた。

「女の悦びを、あんな小娘から教わったのね。奥手な公女サマだこと」
 侮蔑の色も露わに、ヘルガ少佐がクラリスを詰った。生贄の公女は顔を背け、羞恥で紅
く染まった表情を隠す。

「…でも、そんなの子供の遊びよ」
 その言葉と共に、冷酷な女将校が梃子の取っ手をガタンと引いた。それに連動したロー
プが滑車一巻き分ほどガタガタと巻き取られ、吊り下げられていた全裸の少女がガクンと
揺れながらさらに上に引き上げられた。その振動で加えられた細い手首に食い込む繩の痛
みに、クラリスが悲痛な呻きをあげた。

「ひっぐぅぅっっ!」
 煩悶する公女の股間が、ちょうど人の顔の高さにまで上がった。
 汗と淫液にべったりと貼りついた仄暗い繁みを目の当たりにし、ヘルガ少佐がため息を
漏らした。その冷たい息遣いが伝わる。

「…素敵だわ、本当に仔猫みたい」
 革手袋のままヘルガの指が、薄く繊細に繁る栗色のヘアをかき分けた。

「!…っ」
 ザワザワする悪寒が公女の背筋に走る。だがそれがもたらしたのが不快感だけではなか
ったことを、クラリスは必死になって否定しようとした。
『そんな…こんなの、イヤなのに…!』

 だが、むず痒い刺激が全身を取り巻く感覚に腰をひねった瞬間、ほんのわずか開いた両
の太股を押し開けてきた美女士官は、公女の秘密の花園にその顔を押しつけてきたのだ。

「…!い、いやあっっ!!!」
 ナメクジのように冷たくぬめった長い舌が、苦痛を受けて過敏になった秘所を遠慮会釈
もなく舐りついてくる。前日に鞭による苛烈な貫通を受けたとはいえ、公女の秘所は未だ
に乱れを見せず、蕾のような秘唇をぴたりと合わせていた。ヘルガ少佐の舌はその陰唇を
ゆっくりと、しかし効果的に刺激する動きを加え、漏れ出していたクラリスの淫蜜と自分
の唾液を混ぜ合わせながら、じっくりこね回していく。

「…高貴な姫君は、ここのお味も上品だわ」
 嘲りつつも舌の愛撫を止めないヘルガ少佐に、クラリスは身をよじって離れようとする
が、その試みは徒労であるばかりか、手首や肩をギリギリと痛めるばかりだった。

 そして公女にとって屈辱的なことに、この親衛隊美女の口唇愛撫が少女の敏感なポイン
トをあまりにも的確に刺激してくることが身をもって知らされてしまっていた。昨夜のラ
ナのぎこちなく幼い舌の使い方に比べ、ヘルガ少佐の舌づかいは巧緻を極めていた。

『いや、いやっ…、こんな…こんな人の手でイキたくないっ!』

 クラリスは凄まじい自己嫌悪と、そしてあの敬虔なラナの心のこもった奉仕を裏切りそ
うな自分への恐怖を感じながら、必死になってこの快感に耐えようとした。公女は歯を食
いしばり、声が漏れそうになるのをこらえ、美女の舌舞から逃れようと、かいのない反転
を繰り返す。
 しかし、蛇のように絡みつく親衛隊美女の舌づかいは、少女の汚れなき花芯を引き抜く
ばかりに嬲り続けた。その動きは、公女のけなげな忍耐を嘲笑うかのように、容赦なく少
女の青い肉体を目覚めさせ、燃え上がらせていくばかりだった。

「…あうっ、あ、あああうう……ひうっっ!いやあっ、ああああっ…!!」
 自尊心と、そして肉体の火照りの狭間に引き裂かれたクラリスが、ついに堪えられずに
悲鳴のような悦声をあげた。そのうわずった自分の声に、公女の羞恥は、そして快感はさ
らに階段を駆け上るように高みへ上り詰めていく。
『…っいけない、こんなのダメぇ…っ……わ、私は、公女として、こんな屈辱に負けては
ダメなの…こんなことで屈服なんかでき…できない、のに……あああ…ううっ!』
 意志と矜持がいかに己が美徳を支えようとしても、すでにクラリスの身体は何もかもを
否定し、欲望の虜になりつつあった。

 追いつめられた子羊をさらに追いつめて弄ぶように、残酷な女狼はねっとりと貼りつく
革手袋をはめた両手で、クラリスの柔らかな双臀をわしづかみにし、指先を食い込ませた。
「こんなに蜜を溢れさせて…ふふふ、可愛い顔をして食わせものだわ、とんだ淫乱お姫さ
まね」

「そんな…ちが…ああうっ!」
 必死で否定しようとするクラリスの身体は、しかし桜色に染まり、汗が滲んでいる。

「昨日もこうして召使いに奉仕させたくせに。さあ、痩せ我慢しないでイッておしまいな
さいな」

「いや…いやいやいや……はああうっっ!」
 激しく首を振る公女が、突然ビクンッと痙攣し、全身を魚のように跳ねさせた。脳天に
まで響く快感の電流は、ヘルガ少佐がクラリスの肉芽を甘噛みした所為だった。

『…ああ、わたし…私、イッてしまう…っっ!』

 閉じた瞳に絶望の涙を滲ませつつも、公女の内奥ではじける炎は一瞬で幼い肉体を灼き
尽くした。絶頂の波が高貴のプライドも何もかもを押し流し、吊られた身体を何度も痙攣
させた。そしてクラリスはその意志に反して、憎んでも飽き足らない悪魔のごとき美女の
眼前で、その手によって女の悦びをもたらされて、ぐったりと力尽きながらとめどなく愛
液を垂れ流していた。

 熱く淫液を迸らせる秘所から、とめどない奔流が可憐な公女の内股を下り、やがてその
先陣は踵にまで達し、浮いた爪先から50センチほど下の床に滴が落ちた。
 邪淫の洗礼を受けたかのように全身を汗と淫液に濡らし、肉体の炎でふいごのように激
しく息を切らし、墜ちてしまった自分自身が信じられないといった茫然とした表情を浮か
べ、クラリスは虚ろな青い瞳を宙に彷徨わせていた。

 濃厚な舌戯にたやすく陥落した高貴の姫君が、我を失って哀れな醜態を晒す姿に、残酷
な女将校は少女の愛液にヌラヌラと濡れた真っ赤な唇に会心の笑みを浮かべつつ、更なる
嗜虐の欲求が湧き上がってくることに、自分でも驚いていた。これほど自分を燃え上がら
せる公女に、ヘルガ少佐は今まで感じたことのない独占欲と、そして加虐の衝動にかき立
てられていた。


 


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