*A week・第3日目(2)
T.MIYAKAWA
スカーレットに手を引かれた王子は、訓練所の中へと連れてこられた。
場内には彼女の部下の兵士が多く集まっていた。
その中にはプラムを含む、多くの女性達の存在に王子は驚いていた。
その大半は更衣室で見かけて、見覚えのある面々だった。
女性達の方は、自分達の着替えを覗かれた事もあって、王子に対してやや冷ややかな
視線で見つめていた。
その中で王子が印象に残っていたのは、プラムの隣りにいるハーフエルフの少女だった。
着替えの時に一番最初に気付かれたこともあって、王子は彼女を直視する事が出来ない
でいた。
スカーレットは王子の手を握ったまま、兵士達の集まっている所まで歩を進めると、
兵士達はすかさず彼女の方へと近づき、彼女を中心に大きな円陣を組んだ形になって
集合した。
集合した兵士達から聞こえてくるであろう小さなささやき声が王子には届いていた。
その声の大半は女性達で、自分達の着替えを覗いた王子に対しての話が主だった。
その内容があまりにも好印象でない事を悟った王子は、俯いた形でその会話に耳を
傾けていたのだ。
王子は食事を済ませると、スカーレットが待っている訓練所へと足を運んだ。
訓練所はエスメラルダから昨夜入った浴場の近くにある事を教えてもらった。
浴場の側を通った時、王子はその近くにある建物を発見した。
建物に近づいた王子はその窓を覗いてみると、そこから驚くべき光景を目にしたのだ。
建物の中には複数の女性達が着替えをしていたのだ。
しかもその中には一昨日一緒にいたプラムもいたのだ。
王子が覗いているこの建物は女性達の更衣室だったのだ。
「王子様、本来だったら私達の訓練をしている様子を見てもらうつもりだったけど、
あなたのお陰でその予定を変更する事にしたの。」
スカーレットは王子の耳元、ちょうど彼女の唇が王子の顔に触れるところでこう囁いた。
「皆、静かに!」
スカーレットは手を叩きながら、大声で叫んだ。
その声に反応したのか、さっきまで聞こえていたささやき声はなくなり、兵士達は
全員スカーレットの方へ注目した。
「早速紹介するわね。
今私の隣にいるのが、今回攻略している敵国の王子様よ。
捕虜である彼は今から5日後、女王様への献上品となるから皆大切に接するように!」
「……。」
スカーレットの話を王子や周りにいる兵士達は静かに聞いていた。
王子は自分の今おかれている状況をあからさまにされた事で、身体が硬直した状態で
いた。
そんな王子を見て、スカーレットはそのまま話を続けた。
「さて、今日はここにいる王子の実力を皆に見てもらう為に、私と一勝負する事にしたわ。
彼が勝つか、私が勝つか、皆の応援に期待するわよ。」
スカーレットが話を結ぶと、兵士達の周りは急に騒ぎ出してきた。
それに対して王子の方は、スカーレットの突然ともいえる提案に顔色が変わっていた。
「頑張ってね、王子様。
君が勝てば、素敵なご褒美が待ってるわよ。
でもね、負けたら罰ゲームだからね。」
スカーレットは王子の耳元でこんな話をしてきた。
スカーレットにとって、王子との勝負は最初から考えていた事だったが、王子にとって
はここに集まっている女性達の着替えを覗いた行為への十分すぎる罰だと考え込んでいた。
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