*A week・第1日目(3)(改訂版)
T.MIYAKAWA
二人は城門を抜けて城下町へと向かった。
町の活気の良さに王子は驚きを隠せないでいた。
町に数多く並ぶ店やそれに集まる人々に目を奪われていた。
プラムは王子を自分の気に入った店に案内したりと上機嫌であった。
二人が町の散策を開始して30分程経過したときだった。
(…あれ、どこに行ったのかな?)
王子はいつの間にかプラムとはぐれてしまったのだ。
王子は心細く感じていたが、本来ならプラムの監視から逃れる絶好のチャンスであった。
うまくいけばこのまま城の外へ出て他国への逃亡も可能であったはずだが、
この時の王子は動揺があまりにも大きかった為、そんな事は夢にも思っていなかったのだ。
(やっぱり見つからない…)
プラムを捜しにあちこち歩き回っていた時だった。
ふと誰かが王子の肩に触れたのだ。
王子が振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。
その女性は褐色の肌をしていて、体の必要な所だけを小さな布で包んだ
だけの格好をしていた娼婦だった。
「君、そんな所で何をしているの?」
娼婦は王子の顔に触れる程近づきながら尋ねてきた。
「あの、僕は…。」
「一人なんでしょ、だったら私と付き合わない?」
娼婦は王子の返事を待たずに、勝手に話を進めてきた。
「まって、僕は…。」
「いいじゃない、こっちにおいで!」
王子が返事を出す前に、娼婦は手を無理矢理引っ張り、そのまま
人気の少ない路地裏へと連れていったのだ。
「ここなら、誰にも邪魔されないから安心して。」
娼婦は満足げな顔で王子に話し掛けてきた。
「邪魔って、何の?」
困惑した顔で王子は娼婦に尋ねた。
「何って、楽しい事に決まっているでしょ。」
娼婦は質問に答えると、いきなり抱きついてきたのだ。
「な、何をするんだ!」
抱きつかれた王子はあまりの出来事に驚いた。
娼婦は両腕を王子の首に絡ませながら体に密着してきた。
戸惑った王子の視線は、娼婦の大きな胸に釘付け状態になっていた。
(…大きい。)
娼婦のあまりに大きな胸に王子の手は震えだしてきた。
「あら、私のオッパイ気に入ってくれたんだ。
いいわよ、好きなだけ触らせてアゲルね。」
王子の反応に、娼婦は笑顔で返事をした。
「でも、その前にやりたい事があるの。
君のリクエストはその後よ。」
そう言って娼婦は両腕を王子の首から両肩へと移動した。
「やりたい事って?」
「それはね…これよ。」
娼婦はそう言って王子の顔に近づけてキスをしようとしたのだ。
娼婦の唇が今に触れようとした時だった。
「ちょっと待った!!」
その声と共にプラムが険しい表情で現れた。
「ちょっと、あなた、言っとくけど彼には私という相手がいるの。
わかった?」
「ええ、そんなあ!?」
プラムは二人の間に割り込んで、娼婦に食って掛かってきた。
「さあ、行くわよ。」
プラムはそう言って、王子の手を引いて娼婦の元を去っていった。
二人が去っていく姿を娼婦は残念そうな顔で眺めていた。
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