バラステア戦記

第十一話

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クレファー・ロロイ率いる10万のバラステア軍は猛将・バランを副将につけ、再びカル
ム山道へ進軍した。バラステア帝国の主力部隊である。

(ついに来たか・・・・この戦こそ全てをかけた決戦となる)
アリアはソード・ロックの砦からその雲霞のごときバラステア軍を見ていた。まさに主力
部隊であり、それを率いるクレファー・ロロイは帝国随一の名将である。
(今度は山道での奇襲など全く通用しない)
アリアもクレファーの名は聞いている。過去に戦ったことはないが神のごとき謀略で敵を
まどわし、ドラゴンを召還して敵を焼き尽くすと聞いている。
(手強い相手だ)
ソード・ロックにはアイルランガの王軍と大陸各地から3万の兵が集結していたが数の上
ではバラステア軍に到底およばない。装備や戦経験も敵の主力には遙かに劣る。
アリアは難攻不落といわれるソード・ロックに籠城し、決戦することを決めた。

バラステア軍がソード・ロックを包囲し、まさに決戦が始まろうという時、アイルランガ
の宰相・ゼルのもとにバラステア軍からの密書が届けられていた。
(王族を捕らえて王宮を占拠せよ。 我らバラステア軍は部隊を二つに分け、一つの部隊
はアイルランガ王宮へ攻撃をかけるであろう。その時に王宮をあけわたすなら命を助け、
そなたを新しいアイルランガの王として認めよう)
「くっくっく・・・バラステアのクレファー殿からの密書か・・・・ついにわしの時代が
やってくるということか」  
ゼルは元々王への忠誠心など持ち合わせていない。持っているのは権力に対する野望だけ
である。クレファーからの密書はゼルにとって願ってもみない幸運だった。
ゼルは国の権力を欲しいがままにしてきた。王宮を占拠することなど、ましてや大将軍の
アリアがいない今簡単なことである。
その翌日ゼルは衛兵を集めて王宮に攻め込んだ。
「一体何事だ」
「敵か!?バラステア軍が来たのか」
王宮にいた重臣たちはすぐに衛兵に取り押さえられた。ゼルに逆らえる者は誰もいなかっ
た。
「さあて・・・では王の間へ行くか」
ゼルは衛兵を引き連れて王の間へ乗り込んだ。
「ゼル・・・!これは一体どういうことだ」
「見ての通りにございます。この王宮はバラステア軍に差し出し、この私が新たなアイル
ランガの王となるのでございます」
「ばかなことを・・・・!衛兵!何をしている!このしれ者を捕らえよ!」
だが兵士達はもはや王の言うことには反応しない。
「王よ・・・大国バラステアと戦をして本気で勝てると思っていたのですか。アリアは所
詮流れ者の将軍にございます。長く王にお仕えしているこの私よりもアリアなどを信用し
て軍隊をまかせたのは重大な失政ですぞ。アリアはこの国の為に戦っているのではなく所
詮は私怨で動いているのです。」
ゼルが視線を変えると、その先には王妃のマリーと二人の姫、リンスとリリーが震えなが
ら事の行方を見守っている。
「このお美しい二人の姫君をバラステア皇帝に差し出すだけで国を守れたものを・・・」
「この無礼者め!」
ランガが剣を抜き、ゼルに斬りかかろうとした時・・
「ぐわっつ」
「ふん・・・・無様な」
ランガの剣がゼルに振り下ろされるより先に、衛兵達の槍が王の体を貫いていた。
「くっつ・・・無念だ」
ランガは剣を落とし、血をはきながらくずれおちた。
「ああ・・・あなた!あなたあ・・・・!」
「父上っつ父上!」
「ふん・・・これで終わりだ。連れていけ!」
「いやああ!何をするのです!」
衛兵達はマリーと二人の姫君を捕らえ、別々の部屋へ監禁した。

「今日よりこのわしがアイルランガの国王じゃ!バラステアとは和平を結ぶこととなった!
皆そう心得よ」
重臣たちの間でざわめきが起こった。だが異論を唱える者は誰もいない。皆王宮が既にゼ
ルによって占拠されたことを知った。
「さっそくだが流れ者のアリアは大将軍を解任する。もはやあやつはこの国と何の関係も
ないただの女だ。敵に捕らわれて慰み者にされるがよかろう」

ゼルは王妃のマリーが捕らえられている部屋へ向かった。
「王妃よ、ご機嫌はいかがか」
「ゼル・・・おまえ自分が何をしたかわかっているのですか!私は決しておまえを許しま
せん・・・・!」
ゼルはマリーに嫌らしい視線を向けた。
「別に許してもらわなくても結構ですよ、王妃様・・・・いや、マリー。」
「ゼル・・・何をする気です」
「それにしても美しい。私は以前から思っていたのだ。あんな優柔不断な国王におまえの
ような美しい王妃は似合わないと」
ゼルはマリーのドレスに手を掛け、一気に下へずり下げた。
「いやあああああ!無礼者!何をするのです」
「お前は今日から私の妻となるのだ。マリーよ、私はずっと以前からお前のことを想って
いたのだよ。おまえと挨拶するとき、いつもおまえを犯すことを想像していたんだ」
そう言うとゼルはマリーをベッドへ押し倒した。
「いやあああ!離しなさい!」
「ふはははは・・・今日からおまえのこの美しい肉体は俺が好き放題にさせてもらうぞ。
ついに俺の願望がはたせるのだ!」
そう言いながらゼルはマリーのドレスや下着をむしり取っていく。マリーは激しく抵抗す
るが、所詮女の力である。
「ええい、面倒だ。おまえたち!」
「はっ」
ゼルは衛兵たちを近くへ呼び寄せると、マリーの両腕をベッドの足にしばりつけるように
命じた。マリーは両腕を伸ばした状態で固定された。
「ああああ・・・神は・・・・決してお前を許さぬでしょう・・・・・・」
マリーは抵抗することをあきらめた。大粒の涙がこぼれおちた。


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