ネイロスの3戦姫
第10話その.3 愛と憎しみと悲しみと
広いホール内の奥には黒獣兵団の残党が陣取っており、その前には・・・人質となった 若いメイド達が天井から全裸状態で吊り下げられていたのであった。その人数は20数人 は下らない。 卑劣な黒獣兵団達は、カーテン状に吊り下げたメイド達を人間の盾としていたのであっ た。 「ククク・・・よく来たな3姉妹ども。ここがお前等の墓場になるのだ!!」 残党の中から声が聞こえてきた。声の主はブルーザーではないが、服装などから大隊長 クラスの指揮官である事がわかる。 「あいつら・・・なんて事をっ!!」 飛び出そうとしたエスメラルダは、銃を付きつけられているメイドの姿を見て立ち止ま った。 「動くンじゃねえっ、下手に動いたらメイドの尻に風穴が開くぜっ!!」 銃を付きつけられているメイドは、悲鳴を上げることも出来ず泣きじゃくっている。 「あひ、ひ・・・た、たすけて・・・」 メイドの口から漏れる声が、エリアス達の耳にこだまする。 「フン、はったりだろ?その子等に手を出したらブッ飛ばしてやる!!」 声を上げるエスメラルダに、大隊長は不敵な笑いを浮かべる。 「はったりじゃねえ事を見せてやろうじゃねーか。やれっ!!」 大隊長の声に、兵達は一斉に銃を発射した。 「きゃああーっ!!」 銃声とメイドの絶叫がホールにこだまする。弾はメイド達をかすめ、壁に銃痕を作った。 「あ、ああ・・・」 震えながら顔を上げるルナは声を失っている。 「どーだ。これではったりじゃねえ事がわかったろうが。俺達をブッ飛ばしたかったら やれよ。遠慮は要らんぜ、こいつ等がどうなってもいいんならな、ひゃははっ。」 嘲り笑う大隊長。銃を撃った兵達は弾の装填された銃を素早く構えた。 「くっ・・・卑怯者っ。」 エリアス達全員が唇を噛んで苦悶の表情を見せた。人質がいる以上、エリアス達に打つ 手が無い。 兵達の銃口は全てメイド達に向けられており、エリアス達が兵を攻撃すれば、今度こそ 彼女等はハチの巣にされてしまうだろう。手負いの野獣と化した黒獣兵団の残党は、全員 血に飢えたような目になっている。下手に騒げば何をしでかすかわからない。 「全員武器を床に置け、後ろの野郎どももだっ。」 大隊長の声に、3姉妹は仕方なく武器を床に置いた。 「エリアス姫っ。」 「あなた達も武器を床において。今は人質の安全が優先よ。」 「くっ・・・」 エリアスに言われ、渋々サーベルを床に置くダスティン達。 「よーし良い子だ。ついでに着ている鎧と服も全部脱いでもらおうか、お姫様よぉ。」 大隊長はニヤニヤしながら非情な命令を3姉妹に出した。 「なんですって!?そんなバカな事できる訳ないじゃない!!」 ルナが声を上げる。そのルナの胸元に銃口が向けられた。 「天使様は自分の立場ってモンが判ってねえようだな?なんだったらテメエから始末し てやろうか小娘がっ。」 銃を向けた兵がルナを睨む。 「撃てるモンんなら撃てみなさいよっ、このアンポンタン!!」 「誰がアンポンタンだっ!!」 逆上した兵が引き金に指をかける。 「危ないルナ姫!!」 飛び出してきたジョージが、ルナを突き飛ばした。 バァーンッと銃声が響き、ジョージは腹から血を流して倒れた。 「じ、ジョージッ!?」 倒れたジョージをルナが抱き起こした。 「ぐう・・・大丈夫ですかルナひ、め・・・」 「あ、あたしは無事よ、でもあなたは・・・こんなに血がっ、ああ・・・」 ジョージの腹から大量の血が溢れ出ている。ルナとジョージの元にエリアスとエスメラ ルダ、そしてダスティンとスミスも駆けてくる。 「うう・・・エリアス姫・・・ダスティンさん・・・僕に構わず早くあいつ等を・・・ ぐはっ。」 「しっかりしてっ!!」 血を吐いて苦しむジョージを助け起こすエリアス。 「もう喋らないで。早くジョージを後ろへ。」 「は、はい。」 ジョージを気遣うエリアスは、ダスティン達に下がる様指示を出した。 「ジョージ・・・」 泣きそうな顔のルナは、ジョージがダスティン達に運ばれていくのを見ている。 「ギャハハッ、バカな若造だ。言う事を聞かねえからこうなるんだぜ!?」 高笑いを上げる大隊長を、ルナは怒りの篭った目で見据える。 「その汚い口を閉じなさいっ。2度と喋れないようにあんたの口に弾丸を叩きこんであ げるわっ。」 拳銃を構えるルナ。だが、大隊長はそんな彼女を一笑した。 「ほ〜う、やってもらおうじゃねーか。お前等が逆らうたびにメイドどもを1人ずつ始 末してやるぜ。」 「あ・・・」 ルナの目に、吊り下げられた人質のメイド達が映る。 「10数えるまでに裸になれ、さもなければ・・・」 兵達の銃口が一斉にメイドの頭に押し付けられる。 「10、9、8、・・・」 悪夢のカウントダウンが始まる。大隊長は本気だ、3姉妹に選択の余地は無くなった。 「・・・ダスティンさん達は目を、閉じていて。」 手を震わせ、エリアスは紫色の陣羽織を脱いだ。そして鎧を上から順番に外し、着てい る服も脱ぐ。 「7、6、5・・・」 カウントダウンはなおも続いている。 「お前等もだ、早くしな。」 銃を構えている兵が、エスメラルダとルナにも命令した。 「う・・・そんなにボクの裸が見たいんなら、見せてやろーじゃないか!!」 ヤケクソになったエスメラルダが鎧と服を脱ぎ捨てる。 「4、3、2、1・・・ゼロ。」 兵の指が引き金に力をいれる。 「わーっ、待ってまって!!ぬ、脱ぐわよっ。脱げばいいんでしょう!?」 カウントゼロに、ルナが慌てて脱ぎ始めた。そして弾丸を入れた布袋を手にした時であ る。 「そうだ、爆弾が残ってたんだ。」 ルナは小声で呟いた。布袋の中には、山小屋に隠れていた時に使用した手投げ弾が入っ ている。 「よーし・・・これであいつ等を、きゃ!?」 手投げ弾を出そうとしたルナが悲鳴を上げた。足元に銃弾が跳ねたのだ。 「あっ。」 銃弾に驚いたルナの手から手投げ弾が落ちてしまい、無情にも手投げ弾は床を転がった。 「何してやがる、さっさとしろっ。」 鋭い罵声が飛ぶ。 「あーん、もうっ。」 最後の頼みが絶たれ、観念したルナは残っている服も全て脱いだ。 そして、3人は一糸纏わぬ姿となった。 「ヒヒッ、いい眺めじゃねーか。」 「手を上げな、隠したら見えねーぞっ。」 大隊長の命令に、3人とも渋々両手をあげる。全裸になった3姉妹を前にして、兵達は 陰湿な目で3人を見ている。 「ようエリアス、またヤらせてくれよなあ。あン時は面白かったぜ、こいつをアソコに 入れて悶えるお前の格好がよ。」 兵の1人がそう言いながら男性器を模した玩具をエリアスの前に投げ出した。 「あ、あなたはあの時のっ。」 その兵は、エリアスを逆恨みした小隊長と一緒に、彼女を陵辱した男であった。床に転 がっている玩具を見た途端、恥辱と険悪感がエリアスの胸に込み上げた。 「もう一度、俺達全員の相手をしてもらおうか女神様よぉ。」 抵抗できないエリアスに、下劣な声を浴びせる兵達。 「四つん這いになってワンと言いなエスメラルダ。サド殿下に命令された時みてえにケ ツをあげてよお〜。ヒャハハ!!」 「ルナちゃん、ツルツルのアソコが風邪引くぜ〜。」 屈辱の言葉が妹達にも浴びせられる。 「お、覚えてろっ、お前らっ。」 悔しそうに体を震わせるエスメラルダ。 「ああ、もう。爆弾があればあいつ等なんか・・・」 そう言いながらルナは床に転がった手投げ弾に視線を向けた。だが、視線の先には、転 がっている筈の手投げ弾がなくなっていた。 「・・・どう言う事?」 呆然としているルナの耳に、聞き覚えのある声が響く。 (お転婆姫、お主の爆弾を拝借するでござるよ・・・) その声にハッとしたルナが辺りを見回す。すると、ホールの奥に陣取っている兵達の後 ろに黒い影が過った。 「あいつは・・・まさか・・・」 「オラッ、シカトしてんじゃねーぞっ。」 呟くルナに、兵達の罵声が飛んだ。 「お楽しみといきてえが、そーもいかねえ。おいお前ら、連合軍どもが来る前にこいつ らを吊るし柿にしろ。」 「へいっ。」 大隊長が手下達に命令した。3姉妹も人質に加えるつもりだ。 返答した手下の2人がロープを持って3姉妹に近寄ってきた。 1人は百貫デブの見るからに暑苦しい奴で、もう1人は、痩せた体格にヤモリのような 大きな目を持った男だ。ヤモリ目の男の両腕には、3本の長い爪がついた武器が装着され ている。 そのデブの兵とヤモリ目男が、全裸の3姉妹をイヤラシイ目付きで眺めている。 「ち、近寄るな、汚い目でボク達を見るなっ。」 「んん〜、汚い目ってのは俺様の目の事かあ?」 大きな目をギョロギョロさせたヤモリ目男が、抵抗できない様に鉄の爪をエスメラルダ の巨乳につき付けた。 「変なマネするんじゃねーぞ。動いたらお前のオッパイを串刺しにしてやっからよ、ギ ヒヒッ。」 「この・・・」 両手を上げているエスメラルダには、抵抗できる術は無かった。無論それはエリアスと ルナも同様である。 「グヒヒ〜、動いたらダメだど〜。おでがおめーらをグルグル巻きにしてやるンだどぉ 〜。」 ロープを持ったデブの兵が、ヨダレを垂らしながら3姉妹に歩み寄ったその時であった。 ズドォンッ!!と凄まじい爆音が兵達の真後ろから響き、数人の兵が爆風で吹っ飛んだ。 手投げ弾が炸裂したのだ。 「なぁんだあっ!?」 突然の事に驚愕する兵達。 「今よっ!!」 エリアスの声に、エスメラルダも動いた。そして前に立っていたデブの兵に、ダブルキ ックをお見舞いした。 「どわっ。」 転がったデブ兵に、ヤモリ目男も巻き込まれて吹っ飛ぶ。兵達は突如爆発した手投げ弾 によってパニックに陥った。 「ぶわっ、ゲホゲホ・・・げっ!?」 手投げ弾の爆煙によって視界を遮られた兵達の眼前に、太陽の牙とドラゴン・ツイスタ ーを構えた全裸のエリアスとエスメラルダが飛び掛かってきた。 「てやああーっ!!」 「こいつらーっ!!地獄に行けーっ!!」 輝く剣戟が次々兵を切り倒し、大回転するドラゴン・ツイスターが、数人の兵をまとめ てふっ飛ばす。兵達は一瞬の内に叩きのめされた。 「うおおおーっ!!」 エリアス達に続き、ダスティンとスミスもサーベルをかざして突進してきた。 「ぎゃああっ!!」 兵団の大隊長が悲鳴を上げる。スミスがサーベルで大隊長の腹を突き刺したのだ。 「今のはジョージの分、そしてこれは人質にされたメイドの分だっ!!」 叫ぶや否や、再度サーベルで大隊長を串刺しにする。大隊長は声も上げれぬまま、床に 倒れこんだ。 「ふう・・・そうだわ、メイドの子達を。」 振り返ったエリアスは、天井から吊り下げられているメイド達の縄を切って床に下ろし た。 「たすかった・・・」 床に下ろされたメイド達は、皆一様に安堵の表情を浮かべている。 「エリアス姫。兵達は全員倒しましたよ。」 「わかったわ、この子達の保護をお願いし・・・あ。」 駆け付けて来たダスティンと視線が合ってしまい、エリアスは思わず胸を隠した。 「あっち向いてっ。」 「あ、これは失礼をば・・・」 鼻を手で押さえ(全裸のエリアスを見て鼻血を出している。)慌てて後ろを向くダステ ィン。 「姉様っ。」 ホールの奥を見ていたルナが、不意に声を上げた。 「あれは・・・」 ルナの指差す方向には、もうもうと煙が立ち込めている。その煙の中から、黒い影がユ ラリと姿を見せた。 「ヒムロ、お前はヒムロッ。」 黒い影を見たエスメラルダが声を上げた。その正体は闇の忍者ヒムロであった。 「どうやら始末はついたようでござるな。」 倒れている兵達を見ながら、ヒムロはゆっくりとエリアス達に近寄ってきた。 「今の爆弾はあなたが?」 「左様、ルナ姫の手投げ弾を拝借して爆発させたのでござる。」 「危ない所だったわ。じゃあ大砲を爆破したのもそうね。」 「うむ。」 頷くヒムロ。 「別館の爆弾の事を教えてくれたのといい・・・3度も助けられたわね、一応礼を言う わ。」 今まで敵だったヒムロの助けで危機を乗り切りきれた事への感謝を言うエリアス。 「助けてくれるなら裸になる前にして欲しかったよね、まったく・・・」 「ほんと、ほんと。」 服を着ながら文句を言っているエスメラルダとルナ。 「ヒムロ、恩着せがましいマネはしないでよ。これで差し引きゼロになったんだから、 ボクは礼なんか言わないからねっ。」 「あたしもよカラス男っ。」 2人はそう言いながらヒムロを睨んでいる。 「勘違い致すな。拙者はダルゴネオスとブルーザーへ復讐するために、お主等を利用し たに過ぎぬ。」 ヒムロはエリアス達に背を向けると、ホールの片隅へと歩いていく。そして、白い布に 包まれた1人の女性を抱えて戻ってきた。 「あっ・・・ま、マグネア・・・」 エスメラルダから驚きの声が上がる。布に包まれているのは、3姉妹の継母マグネアだ ったのだ。 「ああ・・・うう・・・ひ、ひむろ・・・ひむろ・・・」 布から出ている顔は真っ青になっており、空ろな目は焦点が定まっていない。全身をガ タガタ震わせ、うわ言の様にヒムロを呼んでいる。 「どうしたの一体・・・」 継母の悲惨な状況に、思わずエリアスは尋ねた。 「嵌められたのでござる。我が君も、拙者も・・・そして我が君は黒獣兵団の兵どもに よって陵辱され、麻薬漬けにされてしまったのでござるよ。」 極度の禁断症状に陥っているマグネアを抱えているヒムロの目に、悲しみが溢れていた。 「我が君の声無き命と言ったのは、この事だったのね。」 「いかにも、我が君はもはや口を利くこともままならぬ状態。拙者は・・・愛する者を 守れなかった・・・ライオネット男爵を腰抜け呼ばわりしていたが、本当の腰抜けは拙者 でござった・・・故郷を追われ、ボロ同然だった拙者の全てを受け入れてくださった我が 君を・・・守れなかった・・・」 「ヒムロ・・・」 純粋なまでにマグネアを愛していたヒムロ。そしてそれ以上にヒムロを愛し、信頼して いたマグネア。この2人を結びつける接点を見出せないエリアスは、困惑した表情を見せ ている。 そして、どうしてネイロスと自分達を裏切ったのかも知りたかった。 「教えてヒムロ。全てに満たされていたはずのマグネアはどうして私達を裏切ったの。」 「満たされていた?・・・否。我が君の御心は何一つ満たされておられなかった。我が 君は生来、誰にも愛された事が無かったのでござる。実の親兄弟にも、民達にも、そして・ ・・お主ら父娘にも。親の命令によって老いたエドワード王と政略結婚し、王の慰み者と しての人生を強いられ、懐いてもくれぬお主等の継母を演じなければならなかった我が君 の心が、満たされよう筈もあるまい。」 エリアス達は声を失った。知らなかったのだ、マグネアがそれほどまでに愛に飢えてい たなど。 自分達がマグネアを苦しめていたのだ。そんな思いが3姉妹の心に去来した。 「裏切られて当然だったのね、私達は・・・」 エリアスも、妹達も、マグネアの心情に心を打たれている。 「過ぎたる事を悔やんでもせんなき事。今は残っているブルーザーめを倒す事が先決で ござる。あやつは強敵なれど、おぬし等が力を合わせれば、必ずや倒せようぞ。」 ヒムロの言葉に、3姉妹は最後の戦いへの決意を新たにした。 「まかせてヒムロ、マグネアの仇は私達が取るわ。」 「・・・かたじけない。」 静かに頷くヒムロだった。 その時、倒されていた大隊長が呻き声を上げて起きあがってきた。腹から血を流しなが ら、憎々しげにエリアス達を見ている。 「ククク・・・バカどもが。ブルーザー団長を倒すだって?寝言はあの世でほざくんだ なっ。だ、団長は怪物だぜ、お前等が束になってもかなうもんか・・・へへッ、お前等の 泣き面が目に浮かぶぜっ、ギャハハッ!!」 「うるさいわねっ、あんたは大人しく寝てなさいっ!!」 キッと睨んだルナが、大隊長の眉間にゴム弾をお見舞いした。 「んげっ!?」 大隊長は白目を向いて気絶した。 「ブルーザーは屋上でお主等を待ち構えておるぞ。拙者は我が君をお連れせねばならぬ 故、助太刀は出来ぬ。」 「なーに言ってンの。ブルーザーなんかボク達だけで十分さ。お前はさっさとマグネア を連れて逃げればいいじゃん。」 エスメラルダの言葉に、ヒムロはフッと笑った。 「そうでござったな。後は任せたぞよ、さらばだっ。」 ヒムロはそう言い残すと、マグネアを抱いたまま掻き消す様に姿を消した。 「あいつ、いい奴じゃなかったけど、悪い奴でもなかったね。」 「そうね。」 消えたヒムロに、エスメラルダとエリアスはそう言って頷きあった。 「エリアス姫っ、ジョージが目を覚ましましたっ。」 喜びの声を上げるダスティンが駆け付けて来る。 エリアス達が目を向けると、スミスやメイド達に見守られているジョージの姿があった。 「ジョージッ、しっかりして!!」 真っ先に駆け寄るルナ。 「いてて・・・これぐらい、なんともありません・・・あいつ等は・・・どうなったの です・・・か?」 「安心して、全員やっつけたわ。あなたのおかげよ、ジョージがあたしを守ってくれた から・・・みんなを助けてくれたから・・・あなたはヒーローよ。」 ルナはそう言って、ジョージの手を優しく握り締めた。ジョージを見つめるルナの目は、 どこかエリアスを見つめるネルソンの優しい眼差しにも似ていた。 「よかった・・・」 そんな2人の姿を見て、ホッと胸を撫で下ろすエリアス 「おお〜い、オレたちも介抱してくれ〜。」 エリアス達に倒され、血だらけになっている兵達が、ルナに介抱してもらっているジョ ージを見て哀れな声を上げている。 「じゃあ、ボクが介抱してあげるよ。」 「へっ?」 兵達が顔を上げると、そこには目を吊り上げたエスメラルダの顔が・・・ 「痛いのはここかあ?これぐらいツバつけとけば治るよっ!!」 「ぎゃっ!?ひ、ヒドイ〜。」 エスメラルダに問答無用で蹴飛ばされ、兵達は泣き喚いた。 3姉妹の耳に、連合軍が上階に駆け上がって来る足音が聞こえた。 「下は全部制圧できたみたいだね。」 「そうね、後は・・・」 エリアスの声に、エスメラルダとルナは屋上に向かう階段を見た。 「ブルーザー只1人だね。」 「ええ。」 ついに来たのだ。3姉妹とブルーザーの直接対決の時が・・・