ネイロスの3戦姫
第1話その1.戦う王女
中世から近代に移行する時代、文明の向上により神を絶対と信じてきた古い体制が崩壊
し、それに伴って神の威光を後ろ盾に権力を我が物にしていた宗教組織や貴族が衰退した。
それは長い暗黒時代の終焉であると共に、新たなる闘争の勃発でもあった。
銃や大砲などの近代兵器で武装した兵団が各地で決起し、力こそ正義と言う理論のもと、
領土の拡大と覇権の奪取に奔走した。その余波は、大陸全土にまで飛び火し、長年紛争を
続けていたネイロス公国とデトレイド帝国の戦いにも影響をもたらそうとしていた。
大陸の西方に豊かな領土を保有する国家、ネイロス公国。数百年にわたって繁栄してき
たこの国は、その豊かさゆえ近隣諸国からの侵略の危機に脅かされていた。特に、強大な
軍事力を誇る隣国デトレイド帝国は、ネイロス最大のライバル国であった。
ネイロス公国の歴代の国王の中でも赤竜王と呼ばれた国王エドワードは、その勇猛果敢
な戦いで隣国デトレイドの侵略を拒み、民から絶大な支持を受けていた。
しかし、長年の戦いと心労が重なったエドワード国王は病に倒れてしまい、それにより
ネイロス公国の未来はエドワードの3人の娘、エリアス、エスメラルダ、ルナに託される
事となった。
ネイロス公国のほぼ中央、美しい山脈の麓に、石造りの堅固な城があった。質実剛健さ
を誇るその城は、国王エドワードの居城である。
隣国との紛争に際してネイロスの兵達は、日々の鍛錬に余念がなかった。城の中庭にも
兵士を鍛える闘技場が設けられ、その日も、10数人ほどの兵士達が闘技場で剣術の稽古
をおこなっていた。
「たあーっ、はっ!!」
鋭い掛け声と共に、カーン、カーンと木剣を打ち合う音が中庭に響いている。丸い闘技
場では、木剣を手にした兵士と2mほどの長さの棒を手にした戦士が練習試合をしている
のだ。2人の周囲には、多くの兵士達が囲み、試合を見守っていた。
その試合は目下、木剣の兵士が劣勢になっている。
「どうしたの、もう終わり?」
棒を持った戦士が、棒を中段に構えて木剣の兵士に詰め寄った。
「むう・・・まだまだです・・・」
ハアハアと息を吐きながら、木剣を構えなおした兵士は大声を上げて突進した。
「でやああーっ!!」
頭上高く振り上げた木剣が相手の戦士目掛けて振り下ろされた。その瞬間、2mの棒が
素早く木剣を打ち払った。
「わっ!?」
兵士の悲鳴と共に木剣がキリキリと宙を舞い、闘技場に落ちる。
「勝負ありっ、勝者エスメラルダ姫っ!!」
審判が手を掲げ、棒を持った戦士の勝利を告げた。そして試合を見守っていた兵士達の
間から、おおっと歓声が上がった。
「ま、まいりました・・・御見事です。」
「キミもね、良い試合だったよ。」
互いの健闘を称え合う2人。そして、勝った棒使いの戦士が頭に被っていた皮製の防具
を外す。
そして、その下から、真紅の美しい髪がなびいた。耳の後ろでスパッと切りそろえられ
たショートカットの髪の下には息を呑むほどに美しい美女の素顔があった。やや丸みを帯
びた顔の輪郭に美しくキリリと引き締まった瞳が輝いている。
「やりましたね姫様!!これで10人目ですよ。」
美女戦士を姫様と呼び、拍手を送る周囲の兵士達。
「姉様すごーいっ!!カッコイイー!!」
不意に兵士達の中から、黄色い歓声が響いた。
「さすがね、エスメラルダ。あなたこそネイロス最高の戦士よ。」
そして女戦士を称えるプラチナブロンドの女性。
そう、この戦士は誉れ高きネイロス公国の第二王女、エスメラルダ姫その人である。
ネイロス公国には、3人の王女が存在する。今しがた兵士と戦っていたのが次女エスメ
ラルダ、黄色い歓声を上げていたのが三女ルナ、そして、エスメラルダを褒め称えたプラ
チナブロンドの女性が王位継承者である長女エリアスである。
周辺諸国および、ライバル国となるデトレイドとの戦に控え、兵士のみならず、王族の
名だたる者は何らかの武術を身につけている。その中でも、武勇の名高いエドワード国王
直々に武術を伝授されていた次女エスメラルダ姫は、ネイロス公国随一の戦士でもある。
エスメラルダは華奢な外見からは想像もつかないほどの豪快な荒技の使い手で、パワー
重視の技は屈強な兵士を一撃でねじ伏せるほどであった。
今日はネイロスで武勇を上げた兵士が集い、エスメラルダ姫と対戦試合を行っていたの
である。
腕に自信のある兵士相手に10人抜きを宣言したエスメラルダは、10人の兵士と順次
一騎討ちをして全て快勝したのであった。
「わーいっ、姉様最高ーっ!!」
先程、黄色い歓声を上げていた少女が闘技場に駆け上がりエスメラルダに抱き付いて頬
にキスをした。可愛いリボンを頭に擁き、天使の様に微笑むその少女は第三王女のルナだ。
「あンもう・・・ルナったら。」
照れた顔のエスメラルダ。
「だってぇ、姉様カッコイイもん。アルバートもそう思うでしょ?」
ルナはそう言うと、傍らに鎮座する白い狼アルバートに声をかけた。
「ワォン。」
もちろんと吼える白い狼。
「あなたと対戦したのは皆腕に自信のある剣豪ばかりよ。父上に鍛えられたあなたの腕
が最高だって証明されたわけだわ。」
長女エリアスは妹にそう言った。
「ええー、ボクはまだ戦えるよぉ。10人抜きじゃなくて、20人抜きにすれば良かっ
たかなー。」
自身の一人称をボクと言うエスメラルダは、そう言いながら姉の顔を見た。
ネイロスの剣豪を相手に10人抜きを果たしながら息1つ上げていないエスメラルダ。
この調子でいけば、20人抜きも不可能ではなかった。
「そうね、じゃあ11人目に戦ってくれる人はいないかしら?」
エリアスはそう言いながら兵士達を見た。
「11人目・・・ですかぁ?」
兵士達は互いの顔を見合わせながら呟いた。エスメラルダと対戦した兵士は皆、頭にタ
ンコブや目の周囲に青アザを作って戦闘不能状態になっている。それ以外の兵士は腕前で
エスメラルダの足元にも及ばない。
「すみません・・・もう姫様の御相手を勤める者がおりません。」
兵士達は申し訳なさそうにペコペコと頭を下げる。
「しかたないなー。じゃあ、姉様、11人目を御願い。」
エスメラルダはそう言うと姉のエリアスに向き直った。
「えっ、私が?」
妹の申し出に目を丸くするエリアス。
「おお、エリアス姫とエスメラルダ姫の一騎討ちだっ・・・」
兵士達はざわめいた。
「でも・・・私はあなたに叶わないわよ。」
「そんな事ないよ。ネイロスでボクと同等に戦えるのは姉様だけだもん。」
エリアスの手を取り、そう言うエスメラルダ。
20歳のエリアスは、類まれなる英知と美貌の持ち主であり、時期王位継承者として相
応しいカリスマ性を称えた賢女であった。
美しい顔に慈愛溢れる瞳を湛えたエリアスは、ネイロス公国を守護する女神として、民
から絶大な支持を受けている。
父であるエドワード国王から武術を伝授されているのはエスメラルダだけではない。エ
リアスも同様に剣術を習っているのだ。その腕前はエリアス本人は表沙汰にしていないが、
エスメラルダには無い技とスピードがある。
そして、その技から繰り出される剣技は、名だたる剣豪達を唸らせるほどのものであっ
た。
技のエリアス、力のエスメラルダ。2人のどちらが強いのか、それは兵士達全員の興味
の的でもあった。そして今、最強を誇る姫君同士の夢の競演が実現しようとしていた。
「お願い致します、エリアス姫っ。我等一同、エスメラルダ姫との勝負を見届けとうご
ざいます。」
「しょうがないわね。」
兵士達に言われて、エリアスは笑いながら羽織っていた上着を脱いだ。
「誰か木剣を貸してくれない?」
「ははっ、これを。」
恭しく木剣と防具を差し出す兵士。
木剣を手にし、防具を身に纏ったエリアスが闘技場に立った。
「姉様と試合をするのは初めてだね。手加減無しでいいよ姉様。」
「あら、10人抜きしたあなたと戦うのよ。ハンデをもらってるのに手なんか抜けない
わ。」
口元に笑みを浮かべ、エスメラルダと向き合うエリアス。10人抜きを果たしたとはい
え、エスメラルダにはハンデにもならない事であった。
2人の服装は袖なしの稽古着にホットパンツという姿で、身体の前を覆う薄い鉄製の防
具に篭手、そして頭部を守る防具を被っている。
闘技場に立つ2人の戦姫。
兵士達の歓声と声援が2人を包んだ。
「がんばれーっ、姉様ーっ、どちらも負けるなー!!」
「ウオーン!!」
ルナと白狼アルバートが2人に声援を送る。
「応援頼むわよ。」
2人はルナとアルバートを見て微笑んだ。
「では、エリアス姫とエスメラルダ姫の試合を行います。両者中央へ。」
審判が2人を促す。身構えるエリアスとエスメラルダ・・・
「始めっ!!」
審判が両手を交差させ、試合の開始を告げた。
「はああーっ!!」
「えぇいっ!!」
カキーンと音が響き、エリアスの木剣とエスメラルダの棒が激しくぶつかった。
木剣と棒が交差し2人の動きが一瞬止まった。そして次の瞬間、両者同時に後方へ飛び
退くと、再び身構えた。
「やるね、姉様。」
「フフ、あなたこそ。」
2人の技量は全くの同格であった。ジリジリと横に移動しながら互いの動きを見計らう
エリアスとエスメラルダ。
だが、互いに攻撃の隙が全く無い為、次打を繰り出せないまま膠着した。
「先に仕掛けるのはどっちだ・・・?」
闘技場に緊張感が張り詰める。兵士達は瞬きもせず2人に視線を向けている。
2人の額から汗が伝い、顔を離れ同時に地面へと落ちた。その瞬間、2人の美しい目が
カッと見開かれた。
「いぇやあああーっ!!」
試合が静から動に移行した。そしてエスメラルダが掛け声を響かせ、棒を頭上で回転さ
せながらエリアス目掛け突進して行った。
「いくよ姉様っ、トルネード・クラッシャー!!」
「さあ来なさいっ、サウザンド・ファングッ!!」
両者、最強の技を繰り出した。
唸りを上げて回転する棒は、全てを粉砕する竜巻の如くエリアスに迫る。そして、エリ
アスが繰り出す凄まじい突きの連打が幾千もの牙と化して迎え撃つ。
「う、わあっ!!」
激しくぶつかり合う2人に圧倒される兵士達。
両者の攻防は一進一退していたが、やがてエリアスがエスメラルダの力に押され、次第
に闘技場の端に追い詰められて行く。
「やはりエスメラルダ姫の方が上か?」
「いや・・・よく見ろっ、エリアス姫は攻撃を全て交わしておられる。」
兵士がそう言ったように一見、力で押すエスメラルダがエリアスを追い詰めているよう
に見えるが、エリアスは激しい攻撃の全てを紙一重で交わし、繰り出される棒を木剣で打
ち払っているのだ。
プラチナブロンドのロングヘアーと、真紅のショートヘアーが激しく舞う。
それは、試合という次元を遥かに超越した戦いであった。
「すげえ・・・こんな戦い見た事無い・・・」
固唾を飲む兵士達。
バシーンという音と共に、2人の木剣と棒が弾かれた。そして次の瞬間、2人は渾身の
一撃を放った。
「ああっ!?」
見守っていた兵士一同が声を失った。
エスメラルダの棒がエリアスの頭部に、そしてエリアスの木剣がエスメラルダの胸に僅
かの所で寸止めされていた。
「し・・・勝者・・・エスメラルダ姫!!」
審判は審議に迷った末、僅かの差でエリアスの頭を先に捕らえたエスメラルダに軍配を
上げた。
うおーっ、と言う兵士達の歓声が辺りを揺るがす。
「エスメラルダ姫の勝利だ!!」
壮絶な試合の結末はエスメラルダの勝利で幕を下ろした。2人の力闘に惜しみない拍手
を送る兵士達。
2人は、ふう、と大きく息をつき、互いを見詰め合った。
「あーあ、負けちゃった。やっぱりあなたには叶わないなー。」
軽く両手を上げておどけるエリアス。だが、そんな姉を見たエスメラルダは、しおらし
く首を横に振った。
「ううん、負けたのはボクの方だよ。だって、ボクの一撃は急所を外されてたし、姉様
の木剣は正確にボクの心臓を突いてたんだ。これが試合じゃなくて決闘だったら間違いな
くボクはあの世行きだったよ。」
確かにそうだった。エスメラルダの一撃は僅かに外されており、エリアスの木剣は正確
に心臓を捉えていたのだ。
「なーに言ってるの、まぐれよ、まぐれ。」
笑うエリアスは、妹の肩を抱き抱擁した。少し顔を赤くするエスメラルダ。
「は、はずかしいよぉ、姉様・・・」
再び兵士達が歓声を上げる。
「姉さまー。」
妹のルナが、姉達の力闘を称えるべく2人の元に駆け寄った。
「すごかった今の試合っ、もう、すっごく興奮しちゃった。」
2人の姉に抱き付いて喜ぶルナ。傍らのアルバートもエリアスとエスメラルダの足に擦
り寄って尾っぽを振っている。
「・・・み、見事ですっ・・・姫様っ。」
喜びに満ちている闘技場の離れた場所で、感涙に咽びながらエスメラルダ達を見ている
1人の若い男がいた。
上品な細面の顔にビン底眼鏡をかけたその男は、エドワード国王直属の軍事参謀、ライ
オネット男爵であった。
「ああ、なんて強いんだ・・・そして美しいんだ・・・エスメラルダ姫、あなたの笑顔
の為なら、このライオネット、一命を捧げる覚悟でありますっ!!」
握り締めた手をプルプル振るわせながら、そう呟くライオネット。
いかにも勉強一筋のガリ勉くんと言った風貌のライオネットの家系は、古くから王族ラ・
バーズ家の側近として共に栄えてきた一族であった。そのため、ライオネット自身も誇り
高きラ・バーズ家を守るという忠誠心に燃えていた
だが昨年、父親であるレオ男爵から爵位を継承したばかりの彼は、頭は良いのだが体力
的な事に関しては、からっきしダメな男である。
腕力は無い、持久力も無い、ついでに運動神経はゼロと、頼り無さにかけては天下一品
なのだ。
それ故か、幼い頃からお転婆だったエスメラルダに淡い恋心を擁きつづけていた。
「姫様を守りたい・・・でも、でも・・・」
がっくりとうなだれるライオネット。
「どっちかと言えば守るじゃなくて、守ってもらう方なんだよね。僕は・・・」
体力の無さを痛感し、座り込んで地面に(の)の字を書いてイジケているライオネット。
「あーあ・・・せめて剣を使えたらなぁ。姫様と試合をして腕前を誉めてもらいたいな
ぁ・・・腕を上げたねライオネット。いえ、姫様こそ・・・なーんちゃって、ね。」
「へえ、姫様と試合をなされたいんですか?」
「うん、そうなんだ、って・・・うわァおッ!?」
突然声をかけられたライオネットは飛び上がって驚いた。彼の背後に数人の兵士達が立
っていたのだ。
「ななっ、なんだねキミ達はぁ!?」
「それはこっちが聞きたいですよ。何してるんですか。」
「あの、その・・・ぼ、僕も剣の練習をしようかなーって思ってさあ。まあ、邪魔だっ
たみたいだね。それじゃあ僕はこれで・・・」
逃げようとするライオネットの肩を兵士達がガッシリと掴んだ。
「男爵、あなた今・・・姫様と試合をしたいとか言ってましたねぇ。そうですよね?」
兵士達は皆、意地悪そうにニヤーと笑っている。
「あ、あれ?そ、そんなこと言ったかなー。」
「まーた、とぼけないでくださいよ。遠慮は要りませんって、ほら行きましょうっ。」
強引に闘技場へと引っ張って行く兵士達。
「わわっ!?ちょっと何を・・・」
無論、彼等はライオネットが剣など使えないのを知っている。要するにささやかな(?)
イジメなのだ。
「だから違うってーっ!!ちーがーうーっ!!」
ライオネットの声に、振りかえる3人の姫達。
「どーしたの?」
「姫様、ライオネット男爵が姫様方と御手合わせ願いたいそうですぅ。」
兵士達は、うれしそうな顔でライオネットをエスメラルダ達の前に引きずってきた。
「へえ、キミがボクと試合?すごいね、剣を使えるようになったんだ。」
「まあ、ぜひとも腕前を見せてもらいたいわ。」
ライオネットの事情を知ってか知らずしてか、ライオネットとの試合を受け入れるエス
メラルダとエリアス。
「ほら、剣を持って。」
兵士に木剣を握らされたライオネットは、2人の前に無理やり立たされてしまう。
「ワーオ、かっこいいじゃないライオネットっ。がんばってねー。」
無責任に声援を送るルナ。
「いやだから、その・・・あわわ・・・」
「じゃあ、いっくよー、それーっ!!」
2人はオロオロしているライオネットに問答無用で飛びかかった。
ドカッ、バキッ!!
「どひ〜っ。」
ライオネットは2人の猛攻によって闘技場の場外に吹っ飛ばされ、あっけなく撃沈する
「なーんだ、全然ダメじゃん。」
エスメラルダは、頭に2段重ねのタンコブを作って伸びているライオネットに呆れたよ
うな視線を向けた。
「ごめんなさいね、大丈夫?」
「ライオネット生きてるー?」
一応、心配そうな目をしているエリアスとルナだが、その顔は笑っている。
「ひーん、ひどいですぅ、シクシク・・・」
ライオネットは兵士達の爆笑が響く中、情けない顔で泣いている。
「ほら、もう泣かないで。これぐらいでメゲてちゃダメだよ。」
優しく微笑みながら手を差し伸べるエスメラルダ。
「ひ、姫さま〜、こんな僕を気遣ってくれるのですかぁ・・・うれしいです〜。」
ライオネットが感激しながらエスメラルダの手を取ろうとしたその時である。
「姫様方っ、一大事ですっ!!国王陛下が・・・」
「えっ?」
城から現れた家臣の声に、エスメラルダは手を引いて振りかえる。
「うわった。」
突然手を引かれてその場に転ぶライオネット。
「どうしたの、父上に何か・・・」
一同、血相を変えて現れた家臣に視線を投げかけた。
「陛下のご容態が・・・急変いたしましたっ、大至急、姫様方に御越し下さるようとの
事でありますっ。」
「な、なんですって!?」
家臣の言葉に、3人の王女は驚愕した。
「ライオネット、あなたも来なさいっ。」
「は、はい。」
エリアスに促されたライオネットは、地面に落ちた眼鏡を拾い上げて3姉妹の後に続い
た。