アルセイク神伝


第4話その2.フィオーネ奪回

 「ここで間違い無いな?」
 「んだ。ここだべ。」
 2人は窓からそっと中を見た。
 「うっ・・・これは・・・」
 カルロスは声を失った。黒い壁に囲まれたその部屋には、おぞましい造形のオブジェが
並び、そのオブジェに大勢のうら若い女達が全裸で拘束されていた。
 「なんてことをっ。」
 あまりの凄惨な有様にカルロスは我が目を疑った。
 女達は手足を広げた状態でオブジェに塗り込められ、気を失っていた。生きてはいるの
だろうが、半ば開いた生気のない目は死人の目であった。
 彼女等はいずれも劣らぬ美しい容姿をしている。皆、穢れない身体をラスに汚され、貞
操を奪われた果てにオブジェの一部にされていた。
 哀れなる女達を塗り込めた禍禍しいオブジェ。それは正に悪魔の芸術品と呼ぶに相応し
かった。
 「この中にフィオーネも・・・」
 薄暗い部屋の中にはおびただしい数のオブジェがある。その中のどれかに、愛しい妻フ
ィオーネが囚われているのは間違い無かった。
 2人がどうやってフィオーネを助け様かと思い込んでいた時である。部屋の入り口から
女を抱えたリザードマンが入ってきた。
 「アニキ〜、新しい女連れてきたギャ〜。アニキどこだギャ〜?」
 トカゲの頭に付いた大きな目をギョロギョロさせて辺りをうかがうリザードマン。
 「ギギ、遅かったじゃねーか、こっちに持って来い。」
 部屋の中から別のリザードマンの声が聞こえてきた。部屋の広くなった場所に2匹のリ
ザードマンがオブジェ造りに勤しんでいる。
 担がれてきた女、いや・・・まだ少女と言うべきか、その娘もラスの餌食にされた1人
であった。フィオーネ同様、狂おしいラスの責め苦を受けてしまった娘は、生気の無くな
った目をしている。そして哀れな娘は他の女達同様、リザードマン達の手でオブジェに塗
りこめられてしまうのだ。
 「ゲロゲロ〜、こいつスッゴクかわゆいゲロ〜。オレの好みだゲロ〜。」
 幼さが残る娘を見た弟分のリザードマンが嬉々とした声ではしゃいだ。
 「おいゲロスケ。新しいセメントの用意はしてるか?」
 「だぁいじょうぶだゲロ。ちゃーんと用意してるゲロ。」
 セメントの袋を指差す弟分のリザードマン。
 「ギギ、じゃあ早速塗り込めるとしよーか。」
 「アニキ〜、その前にこの娘犯しちまおうギャ〜。ちょっとぐらいやったってラス様に
わかりっこねぇギャ〜。」
 娘を担いでいたリザードマンの声に、他の2匹がニヤリと笑う。
 「そりゃあいい。オレが最初だからな。」
 「ゲロゲロ〜アニキずるいゲロ。」
 「ギギ、速いもん勝ちだよ。」
 兄貴分のリザードマンが娘の両足を広げると、長い舌で股間を舐め始めた。
 「あ・・・い、ひ・・・」
 朦朧とした目の娘が、微かな喘ぎ声をだした。陸に上げられた魚の様に口をパクパクさ
せて痙攣している。
 「ギヘへ、このオ○○○汁最高に美味いぜ〜。」
 兄貴分のリザードマンは、舌を根元まで指し込み、グチャグチャと下品な音を立てて膣
内をこね回した。
 「じゃあ、オレはオッパイをいただくギャ〜。」
 弟分の2匹が娘の胸をしゃぶり始めた。
 「オレはもうちょっとオッパイのでかい女が好みだけどギャ〜。」
 「なーに言ってるゲロ。貧乳がいいんだゲロ。」
 下劣な事を口々に言いながら娘の上半身を汚す2匹。
 「さあ〜本番いこうか。」
 「いいぞアニキィ、やれやれ〜。」
 兄貴分が不気味に蠢くイチモツを反り立たせ、娘の中に挿入しようとしたその時である。
 「ギッ!?痛ってー!!」
 突然、兄貴分のリザードマンが悲鳴を上げて飛びあがった。その尻にはクロスボウの矢
が刺さっている。
 「だっ、誰だこんな事しやがる奴は!?」
 矢が飛んできたであろう方向を見るリザードマン達。そこにはクロスボウを構えたボー
エンと、聖剣を手にしたカルロスがいた。
 「ンギギッ、お前等か〜!?ふざけやがってっ!!」
 「だったらどうするだ?」
 「こうしてやるっ、必殺、波動ゲロ砲!!」
 並んだ3匹のリザードマンの喉笛がボコッと膨らみ、大きく開いた口から、大量の液体
が発射された。
 液体を交わすカルロス達。すると、液体を浴びた背後のオブジェが見る見るうちに溶け
てなくなった。
 「・・・溶解液だっ。」
 2人の顔が青ざめた。こんな物を食らったら一溜まりも無い。骨も残さず溶かされてし
まうだろう。
 「ギッヒヒ〜、波動ゲロ砲から逃げられた奴はいねーんだぜ。お前等2人ともあの世行
きだ〜!!」
 次々と溶解液を発射するリザードマン。カルロス達はオブジェに身を隠そうとしたが、
オブジェには女が塗りこめられているため、それは出来ない。手の打ち様が無い2人は部
屋を走り回って攻撃をかわした。
 「これで最後だ〜!!」
 3匹一斉の攻撃が2人を襲う。だがその時、2人の周囲に半円形の光が出現し、溶解液
の攻撃を跳ね返した。
 「これは・・・」
 驚く2人は御互い手にしている聖剣と首飾りが眩い光を放っているのに気付いた。聖剣
と首飾りの力が共鳴し、光のバリアを作っていたのだ。
 「すごいべ・・・」
 「感心している暇はないぞボーエン。」
 すぐさま攻撃態勢に移るカルロス達。光のバリアが消え、リザードマンが溶解液を発射
しようと口を開いた。
 「ボーエンっ、奴の上あごを狙え!!」
 「まかせるだっ。」
 ボーエンのクロスボウから矢が放たれ、大きく開いたリザードマンの上あごに刺さった。
 「ゲロ!?」
 リザードマンの上あごに刺さった矢は、後ろのオブジェにも突き刺さり、リザードマン
は口を上に向けたままオブジェに釘付けになった。
 「ゲロゲロゲ〜!!」
 口から溶解液が溢れ、釘付けにされたリザードマンは自分自身の溶解液を全身に浴びて
ドロドロに溶けてしまった。
 「あぁ、ゲロスケっ。」
 驚愕する残りのリザードマン。
 「ギッギイ〜、お前らぁっ!!よくもゲロスケをー!!」
 仲間を倒され怒り狂ったリザードマンが2人に襲いかかった。
 「今度はこっちの番だっ、空牙両斬波!!」
 カルロスは迫る兄貴分のリザードマン目掛けて真一文字に
剣撃を浴びせた。真空の刃がリザードマンを切り裂く。
 「ギィエッ!!」
 絶叫を残し、リザードマンの体が真っ二つになって宙に舞った。
 「あ、アニキっ、ゲッ!?」
 一刀両断された仲間を見て悲鳴を上げるリザードマン。その口にボーエンの放った矢が
突き刺さった。
 「い、痛てぇギャ〜っ。」
 上唇と下唇を矢で串刺しにされ、激痛で転げまわった。もはや溶解液での攻撃は出来な
くなっている。
 「参っただか、ゲロ攻撃できないリザードマンなんかチンカス同然だべ。」
 「ヒギャっ。」
 攻撃を封じられ、リザードマンはあたふたと逃げだした。その後を追うカルロス達。
 部屋の奥へと逃げて行ったリザードマンは、奥にあるひときわ巨大な十字架のオブジェ
の前で立ち止まった。
 「もうどこにも逃げられんぞ。観念しろ。」
 リザードマンに追いついたカルロスは、リザードマンに聖剣を突き付ける。だがその時、
十字架のオブジェを見たカルロスの表情が変わった。
 「フィオーネ・・・」
 呆然と呟くカルロス。その唇はブルブルと震えている。ハッとしたボーエンが十字架を
見た。
 「御后様だか?」
 そこには全裸の若い女性が両手足首をセメントで固められた状態で磔にされていた。 
栗毛色の長い髪で顔がよく見えないが、間違いはない。その女性こそ、カルロスの愛妻、
フィオーネ王妃その人であった。
 「フィオーネ・・・フィオーネエエっ!!」
 絶叫するカルロス。それを見たリザードマンが磔にされたフィオーネの前に立ち塞がっ
た。
 「ギッヒヒー、わかったギャ。この女お前の大事な女だギャ?それ以上近寄ったらこの
女、ヒドイ目にあわせるギャよ〜。」
 形勢逆転とばかりに喜ぶリザードマン。
 「あいつ、脳天ブチぬいてやるだっ。」
 クロスボウを構えるボーエンをカルロスが制した。
 「ボーエン、フィオーネを助けてくれ。」
 「え?」
 唖然としたボーエンにカルロスはそう呟いた。そしてリザードマンを睨んだまま歩み寄
った。
 「ギャギャ!?お、お前何考えてるギャっ。女がどーなってもいいだギャ!?」
 予想外の展開に、リザードマンは、カルロスを前にしてうろたえた。
 「やれるものならやってみろ、ゲロトカゲ。」
 「や、やめてギャギャ〜!!」
 頭を抱えて怯えるリザードマンの頭上を聖剣が貫いた。
 「ギャ?」
 カルロスは聖剣でリザードマンを刺したのではなかった。フィオーネを拘束している十
字架を刺したのだ。
 「崩れろ!!」
 カルロスが叫んだ。その途端、十字架にビシビシとヒビが入り、轟音と供に崩れ始めた。
 「アンギャアアーッ!!」
 十字架の真下にいたリザードマンは、崩れる十字架の下敷きになって潰れた。
 「ボーエン!!」
 瓦礫を交わすカルロスの声を受けて、ボーエンが駆け出した。そして瓦礫と供に落ちて
きたフィオーネの体を受けとめる。
 「うわったた・・・」
 辛うじて崩れ落ちる瓦礫からフィオーネを助け出したボーエンは、足元にフィオーネを
寝かせた。
 「もう安心だべ御后様。カルロス王が助けにきてくれただよ・・・あっ。」
 フィオーネの顔を見たボーエンが絶句した。





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