魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫)2


  第6話 古の伝説・・・それは夢の中・・・
原作者えのきさん

  ローネット姫の悲劇がおきているころ、アリエルは、大きなベッドの上で横になってい
た。
 しかし戦の心配があってか、眠れぬ夜を過ごすアリエルなのだった。
 シーツを掴んで寝返りをうつ。そこには、可愛い寝顔のマリエルがスヤスヤと眠ってい
る。
 フッと溜息をついたアリエルは、愛しそうに弟の頭を撫でて呟いた。
 「今度こそ最後の戦いにしたいわ・・・民や、この子が平和に暮らせる日々に・・・」
 切なる思いを胸に収め、マリエルを見つめていると・・・
 「う、ん・・・あねうえ・・・」
 寝惚けた顔でマリエルが目を覚ました。
 「あ、起こしちゃった?ごめんなさいね。」
 「うん・・・ねえ、姉上どーしたの。寝てないの?」
 姉の心労を察したマリエルは、心配そうにアリエルを見つめている。
 弟の気遣いがアリエルには嬉しかった。弟にキスをし、優しく微笑む。
 「うん・・・マリエルの顔見てたらね、あなたはきっと父上みたいに立派な王様になる
んだろうなって思ってたの。」
 その言葉に、マリエルは大きな目で姉を見つめた。
 「ぼくが王さまに?姉上が王さまになるんじゃないの?」
 マリエルは、姉アリエルが王になるんだと思っていた。するとアリエルは首を横に振っ
た。
 「ううん、私は王様にならないわ、マリエルが王様になるの。そして私はあなたを守る
の。それが私の使命だから・・・」
 父も母もそうしてきた・・・
 父は偉大なる王として民を導き、母は父を敵から守ってきた。それが姉弟に受け継がれ
ている。
 そう、私はマリエルを守る。可愛い弟を・・・それが使命・・・
 その心を受け取り、マリエルは笑顔で応えた。
 「うんっ、ぼくは父上みたいな王さまになる。みんなの王さまになるんだ。」
 「まあ、偉いわマリエル。何も心配はいらないわよ、あなたをイジメる悪い奴は、みー
んな私がやっつけてあげるから。」
 弟を胸に抱き、アリエルは頬摺りをする。
 嬉しそうに微笑むマリエルは、おねだりする顔で姉を見つめた。
 「ねえねえ、またアンジェラのお話してよ姉上。」
 弟の言葉に、アリエルは呆れた顔をする。
 「またぁ?アンジェラのお話は何回もしたじゃない。」
 「いいモン、お話してよぉ。」
 「はいはい。むかーし、むかし、我が国ノクターンで・・・」
 はしゃぐ弟に、昔話を聞かせるアリエル・・・
 ノクターンに古くから伝えられるその伝説とは・・・
 
 ――その昔、平和だったノクターンに恐ろしい敵が攻めて来ました。
 その敵の正体は、恐ろしい魔神だったのです。
 悪魔の軍隊を連れた魔神は、民を捕まえて奴隷にし、国王を地獄の牢屋に閉じ込めてし
まいました。
 ノクターンの人々は、毎日悪魔にイジメられ、泣いていましたが・・・そんな人々の姿
を見た神さまが、1人の女騎士をお遣わしになられました。
 美しい女騎士の名前は・・・(戦女神アンジェラ)。
 アンジェラは、虹色に輝く剣をかかげ、大勢の騎士を率いて悪魔の軍隊と戦いました。
 アンジェラは稲妻のように早く敵を倒し、風のように駆け巡って民を助けます。
 そして地獄の城に乗り込んだアンジェラは、激しい戦いの末、ついに魔神を倒したので
す。
 しかし、魔神に苦しめられていた国王さまは、すでに死んでしまっていました。
 悲しむ民達でしたが、アンジェラが国王さまにキスをすると・・・なんと、死んだはず
の国王さまが生き返ったのです。
 そしてノクターンに再び平和が訪れ、国王さまも民もアンジェラに残って欲しいと頼み
ましたが、アンジェラはそれを断りました。
 なぜなら、アンジェラは他の国を救うために旅に出なければならなかったのです。
 アンジェラは言いました。
 ――もし、ノクターン王国が再び危機になった時には、私は必ず戻ってきます。この国
を救うために――
 その言葉を残し、遠い国へと去って行きました・・・
 
 ノクターンの民なら誰もが知っている女騎士の伝説。
 その物語を聞きながら、マリエルは夢を見た。
 女騎士(アンジェラ)となって悪魔を倒す姉、アリエルの美しき勇姿を・・・
 マリエルにとって、姉アリエルこそが(アンジェラ)そのものだった・・・勇ましくて
美しく、誰よりも優しい戦女神だった・・・



 To・Be・Continued・・・


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