魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫16)


  第72話  地獄で聞け、乙女の悲しき叫びを
原作者えのきさん

 ---シャアア〜ッ!!
 
 凄まじい怪気炎を発し、コブラ達は魔神に飛び掛かる。
 魔神はローネット姫ともども、姿が見えぬ程に無数の毒蛇達に覆い尽くされてしまう。
 ウジャウジャと蠢く毒蛇達。それを見てズィルクは勝ち誇って踏ん反り返った。
 「ふふん、偉そうな事をほざいたわりには呆気なかったわい。このわしを陥れようなど
愚の骨頂ぞ。」
 そんな鼻息荒いズィルクに、心配そうなナブールが声をかける。
 「ア、アノ〜。コレデハ壁カラ逃ゲル方法ガ判ラナクナリマシタデスケド〜(大汗)。」
 「あん?あのバケモノから脱出方法を聞き出せなくなったとゆー事か?」
 「ハ、ハイ〜。」
 「案ずるな、壁を操作する奴がいなくなれば壁も動かなくなるわい、さっさと逃げるぞ。
」
 ナブールと共に姫君楼を出ようとした、その時・・・
 2人の背後で毒蛇の塊が爆ぜた!!
 
 ---ヴワァッ!!
 
 コブラ達が部屋中に吹き飛ばされ、その中央に・・・不動たる姿勢の魔神が立っていた。
 「言ったはずですわ、地獄行きの片道切符を心して受け取れと。無様に足掻くのは止め
るのですわね。」
 魔神とローネット姫に、微塵もダメージはない。不可視のバリアでコブラの毒牙を退け
ていたのだ。立場を逆転されたズィルクは呻いた。
 「うぬぬ〜っ、このバケモノめ〜。よくも可愛い家来どもを・・・をおっ?」
 ギョッとするズィルク。横にいたナブールの頭に、飛ばされたコブラが噛みついていた
のだ。
 「ゴ、ゴ、ゴ主人サマ〜。ワ、ワ、私ノ頭ニ、コ、コ、こぶら君ガ、ソ、ソノ〜。毒ガ
脳みそニ〜、ウ〜ン。」(バタン、キュ〜)
 口から泡を吹いて卒倒するナブール。
 ますます追い詰められたズィルクに、復讐の魔神は歩み寄る。悪党はたじろいだ。
 「ま、まてっ。降参だ、わしの負けを認めよう。どんな条件も呑む。だ、だから許して
くれっ。」
 懸命に頭を下げるズィルクだったが、平伏しながらチラリと魔神の背後を見て薄笑う。
 魔神の後ろに、巨大トカゲとニシキヘビが音もなく近寄っているのだ。そしてズィルク
が目配せした途端、2匹の獣が魔神に襲いかかる。

 ---ずしゅるる〜っ!!
 ---グワオオオ〜ッ!!
 
 だが魔神の鉄拳が炸裂し、巨大トカゲが天井に叩きつけられた。
 余りの恐怖に、ニシキヘビは口を開けたまま動けなくなる。
 「どーしましたの?私を食べるんじゃなかったの?」
 眼光鋭い魔神が呟くと、怯えるニシキヘビの周囲に黒い影がまとわりつく。それはニシ
キヘビの自由を奪い、徐々に浸透した。
 呆然とするズィルクの前にも、黒い影がユラリと現れる。そして黒い影は・・・余りに
も可愛い美少女の裸身へと変貌した。
 儚くも初々しい美少女の全裸に、ズィルクは目を丸くする。
 「おお〜っ、こ、これわカワユ〜イッ、って・・・なにいっ!?」
 歓喜は絶叫に変わる。美少女達は・・・かつてズィルクの手で闇に堕とされた美少女達
だったのだっ!!
 己が悪行を突き付けられ、ズィルクは小便を漏らして腰を抜かした。
 「あ、あわわ・・・く、くるな・・・こないでえええ〜っ!!」
 ジタバタ足掻くズィルクの前に、魔神が立ち塞がる。
 「この黒い影は全て、女の子達の怨念が実体化したものですわ。覚悟を決めて美少女虐
待の罪を償う事ですわね。」
 そして黒い影に乗っ取られたニシキヘビが起きあがる。その頭部には、美少女の・・・
ローネット姫の上半身があった!!
 『・・・ズィルクゥゥ・・・よくも私達をイジメましたわねぇぇ・・・恨みを晴らして
やりますわぁぁぁ〜っ。』
 毒々しい呪詛の声をあげるローネット姫の怨念。さらに、ニシキヘビだけでなく床に伸
びていたコブラ達までが黒い影に乗っ取られる。美少女達の怨念が、凶悪なバケモノとな
って迫った。
 『・・・どうやってイジメましょうか?』
 『・・・泣いても許してあげないわ・・・絶対にっ!!』
 美少女達の口に鋭い毒牙が光った。そしてズィルクに飛び掛かり、怒りを込めて噛みつ
いた。
 「あぎゃああ〜っ!!い、いたいい〜っ。」
 『・・・痛いの?あなたにイジメられた時は、もっと痛かったわよお〜。』
 積年の恨みと言う猛毒を注ぎ込まれ、ズィルクの身体がドス黒く変色する。
 「お、おおお〜。か、からだが・・・あひひ・・・し、しびれる〜。」
 ヒクヒク痙攣するズィルクだったが、まだ罪を許されるには程遠かった。
 ローネット姫の怨念に操られたニシキヘビが、巨体をズィルクに巻きつける。
 『・・・思い知りなさいっ、乙女の怒りをぉぉぉ〜っ!!』
 「ひいいっ、や、やめ・・・ぐおおお〜っ!?」
 万力のようにズィルクの身体が締め上げられ、バキバキと骨の粉砕される音が響く。
 ズィルクの悲鳴、そして美少女達の怨念の笑いを、静かに見続ける魔神。
 「さあ、女の子達に謝りなさい。私が悪かったと・・・まあ、それで許してもらえるな
ら、ですがね。」
 無論、イジメ尽くされた美少女達の怨念が、そう簡単に晴れるわけではない。
 トドメの刑がズィルクに課せられる。ニシキヘビが、ズィルクを足から飲み込み始めた
のだ。
 
 ---ずるっ、ずるる〜っ・・・
 
 「うああ〜、い、いやだあ〜。たすけてくれ〜。たべられるのイヤだ〜っ。」
 いくら泣いても美少女の怨念はズィルクを許さない。彼が(その言葉)を言わぬ限り・・
・
 「ゆ、ゆ、ゆるしてええ〜。わ、わしがわるかったあああ・・・あ・・・」
 
 ---ごきゅ・・・っ。
 
 ついにズィルクは、邪悪な頭脳もろともニシキヘビの腹に飲み込まれた・・・
 ズィルクの最後を見た美少女達は、喜びの声を上げ、次々消滅していった。
 そして、全てを見届けた魔神ことアンジェラも、ローネット姫を抱えて、その場から瞬
間移動で消え去った・・・


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