魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫8)
第26話 裏切り者、その名はアントニウス
原作者えのきさん
アリエルが連れてこられた場所は、寂れた農村地帯であった。多くの農奴隷がここで
働かされており、広い農地は(のどかな田園地帯)とは言い難い場所でもあった。
疲れ切った奴隷達が足枷を嵌められて酷使されており、酷く殺伐とした雰囲気が漂ってい
る。
そんな農地の中央に連れてこられたアリエルは、悪夢の陵辱ショーの舞台に立たされる
事になる筈。しかし・・・この日はいつもと違っていた。
いつもなら、あられもない姿を観衆の前に晒し者にされるのだが、今日は小さな小屋に
連れ込まれ、磔にされたまま置かれる。
小屋で1人にされたアリエルは、自分がこれから何をされるのかと言う不安にかられる。
「・・・ガルア達、一体何を企んでいるの・・・?」
その企みが判る筈もなく、また囚われの身では何もできない。
しばらくして、小屋の外から話し声が聞えてきた。
ガルアと話す声の主は、妙に小心な口調の男であった。
「ようこそガルア将軍〜、僕にも陵辱をやらせてもらえるとは嬉しい限りです〜。」
「なにせ帝様直々の御達しだからな。それに、お前はアリエルに借りがあるそうだな。
アリエルをとことん苦しめる良い手を考えてくれや。」
何やら悪巧みを話しているらしく、アリエルは悪寒を感じずにはいられなかった。
そして・・・この小心な声に、アリエルは覚えがあった・・・
「この声は・・・まさかっ!?」
もしアリエルの(悪い予感)が当っていれば・・・それは最も驚愕すべき事であった・・
・
そして、小屋の扉が開けられた時、(悪い予感)が現実になった。
「よ〜う、姫様。ご機嫌は如何ですか?」
嘲笑うような声で話しかける小心な声の男を見て、アリエルは驚愕と怒りの表情になっ
た・・・
「あ、あなたは・・・アントニウスッ!!なぜこんな所にっ。」
現れた男の正体は、ノクターンの振り付け師であったアントニウスだったのだ!!
ヘラヘラと笑いながらアントニウスは、磔にされた全裸のアリエルを、いやらしい視線
で撫で回している。
「うひょひょ〜♪夢にまで見た姫様の裸♪♪直に見られるなんて、僕ってシアワセ〜♪
♪♪」
その下品な声に、アリエルは嫌悪を露にする。
「何がシアワセですか無礼者っ!!それ以上私を見るなら痛い目にあわせますわよっ!?
」
思わず声を荒げてしまったアリエル。そして罵声を浴びせられたアントニウスは目を吊
り上げた。
「・・・無礼者だって?ふん、なんだい負け犬のくせにさ・・・いつもいつも僕をバカ
にして・・・この前だってそうさ、僕を大勢の前で恥かかせて笑いやがって・・・こんど
は僕があんたに恥をかかせる番だっ、思い知らせてやるっ!!」
ネチネチと陰険な文句を並べ立て、アリエルを睨む。
アリエルは舞踏会の夜、ほんの少しアントニウスをからかっただけだったが、この小心
な男は、卑屈なまでに恨み辛みをアリエルに抱いていたのだった。
この小心者の思惑を知ったアリエルは、アントニウスが行った重大な裏切り行為を察し
た。
「アントニウス・・・あなたですね、ノクターン軍の動きを全てガルダーン軍に漏らし
たのは・・・」
怒りの形相でアントニウスに尋ねるアリエル。すると、アントニウスは悪びれた表情も
なく、平然と答えた。
「あ〜、そうだよ。僕がガルダーンに情報を漏らしたのさ。警戒厳重な会議だとか言っ
てたけど、チョロイもんだったね、作戦の詳細を盗み聞きするなんてね。僕の実力をもっ
てすれば、あんな事は朝飯前さ☆」
ガルダーンの諜報員に手助けしてもらったというのに、まるで自分1人の手柄であるか
のようにペラペラと喋るアントニウス。
その横柄な態度にアリエルはキレた。
「あなたと言う人は・・・自分がどれだけ恐ろしい事をしたかわかってるのですかっ!!
ノクターンを窮地に陥れたのですよっ!?大勢の人が殺されたのですわっ!!わかってる
のっ!?」
いくら叫んでも、この小心者は嘲笑うばかり。
そして矮小な怨みを晴らすべく、とんでもない悪巧みをアリエルに話す。
「ふふん、ノクターンの連中がどうなろうと知った事じゃないね。今の僕はグリードル
帝様に忠誠を誓うガルダーンの貴族様さ。でもって、親愛なる帝様は僕に(アリエル姫を
陵辱せよ)って御命令なされたンだ。それもノクターンの者にヤラせろって命令をね。ム
フフ・・・」
そう言うと、変装用のマスクとかつらを持ち出してアリエルの顔に被せた。
動けないアリエルは、されるがまま別人に変装させられてしまった。
「あっ、何をするのっ!?」
薄いマスクを被せられたアリエルは、誰が見てもアリエルとはわからない。
そしてアントニウスは、小さな香炉を手にしてアリエルに迫った。
香炉からは怪しげな煙が出ており、アントニウスは自慢げに香炉の説明をする。
「これが何かわかるかい?わっかんないだろーね〜。こいつはズィルクとか言う参謀か
らもらった(自在香)って言う御香さ。この煙を吸った者は、持ち主の命令でしか身体を
動かせなくなるんだ。アリエル姫を変装させて自由を奪って・・・でもって、あんたが心
から信頼していたノクターン兵士達にあんたを嬲らせてやるのさ〜っ。」
驚愕の企みに、アリエルは顔面蒼白になる。
「ば、バカな事を言わないでっ!!ノクターン兵士は誠実な者達ばかりですわっ、あな
たの企みにのるものですかっ!!」
しかしアントニウスの嘲笑が、ハッタリでない事を物語っている。
「本当にそうかな〜?男は誰だってスケベなものさ、あんたが綺麗な裸を見せてイヤら
しく踊ったら、真面目なノクターン兵士でもトチ狂う事は間違いなしだね♪」
そういいながら、アントニウスは香炉の煙を無理やりアリエルに嗅がせた。
「ほーれほれ、無駄な抵抗は止めて煙を吸うンだ。」
「な、なにを・・・この・・・ぶれい・・・もの・・・」
アリエルの鼻腔を、刺激臭が襲う。吸いこんでしまった煙が肺の中を満たし、やがて全
身に煙の成分が周る・・・
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