魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫8)
第25話 アリエルの優しさと慈悲
原作者えのきさん
ガルアとガラシャに責められ、身も心も汚されたアリエル・・・
激しい陵辱のみならず、その辱められる姿をガルダーンの民に晒されて・・・尊厳を全
て壊されて・・・
だがそれは一時のものではない。連日連夜に渡って行われていたのだ。
ガルダーン帝国の各領内へと続く街道。その街道を、大きな荷車が進んでいる。
荷車はノクターンから奴隷として連行してきた民によって引かれており、ムチを持った
兵士が奴隷達を無理やり歩かせている。
その荷車には、拷問用のX型の拘束台が取りつけられており、そこに・・・全裸のアリ
エルが磔にされていた。
しかも、首には(ノクターンのおもらし姫)という屈辱の文字が書かれた札が下げられ
ている・・・
全ては、この辱めをグリードルから指示されていたガルアとガラシャが行っていた事だ。
最初の陵辱から早くも数日が過ぎていた。その間、彼女は領地内を全裸で引き回され、
悪夢の陵辱ショーに晒されていたのだった。
昼夜を問わず、休む間もなく拷問を受け続けるアリエル。
彼女の体力は完全に失われ、逃げる事も逆らう事もできない有様になっていた。
街道に集まったガルダーンの民達が、嘲りの言葉と石つぶてを投げてくる。
「いい恰好だぜアリエル姫っ、これでも食らえっ。」
「お前はガルダーンの敵よっ、地獄に堕ちるがいいわっ!!」
小石がアリエルの胸に当り、生卵が顔にぶつけられる。
白身で汚れたアリエルの美しい顔を、荷台に乗っている若い娘の奴隷が慌てて拭く。こ
の若い娘は、ノクターンから連れてこられた奴隷だった。
「姫様、大丈夫ですかっ。ああ・・・こんなに汚れて・・・あいつら、姫様をなんだと
思ってるのっ!?」
荷台に転がる小石を拾って投げ返そうとする若い娘を、アリエルは制した。
「・・・お止めなさいっ、彼等もグリードルの犠牲者なのですよ。ノクターンの事を良
くは思っていないでしょうけど、憎しみの返礼を憎しみで返せば、終わりのない修羅地獄
が待っているのです。憎むべきはグリードルただ1人、私がどんな目にあわされようとも
ガルダーンの民を憎んではなりませんよ。」
苦境にありながらも、アリエルは娘に優しく微笑み、憎しみの愚かさを説いた。
娘は、自身を憎む敵国の民にまで慈悲を訴えるアリエル姫に涙し、自らの身体を楯にし
て石つぶてからアリエルを守った。
「姫様の優しき御心を失う訳にはまいりませんわっ、私が姫様を御守りします。」
「ごめんなさい・・・ありがとう・・・」
アリエルは娘の健気な心に感謝した。
憎しみは憎しみしか生まない・・・
これは父アルタクス王の教えであった。それゆえ、アリエルは常に憎しみに身を委ねぬ
よう務めてきた。
優しさは不滅なり、心は永遠なり・・・
これは母マリシアの教えであった。何者も優しさと慈悲は汚す事はできず、それある限
り、心は永遠であると心得てきた。
人としての尊厳を奪われた今でも、彼女は優しさと慈悲を失っていなかった。
娘に守られながら、アリエルは民達に訴えた。
「ガルダーンの民達よっ、私を憎むなら憎みなさいっ。この私を辱める事で気が晴れる
なら、私は喜んで受け入れましょうっ。その代わり、全ての憎しみを忘れてください。あ
なた達に罪はないのですわ。」
アリエル姫の慈悲と、それを守る娘を見た民達は、自身の愚かさを悔いて引き下がり始
める。
彼等は心からアリエルを憎んでいる訳ではなかった。ただ・・・暴君の圧政に苦しみ怯
え、その捌け口を求めていただけなのだ。
帰り行く民達の後姿を見て、安堵の微笑を浮べるアリエル。
しかし、それは陵辱者達にとって唾棄すべき事であった。
忌々しそうに見ていたガルアとガラシャが、アリエルと娘の前に歩み寄って来た。
「大層な口上を聞かせてもらったぜ。だがよ、俺達に御託は通用しねえぞ。なあ、ガラ
シャよお。」
「ああ、その通りさ。私達も民どものように情けが通用するとは思わない事ね。」
ムチを翳し、アリエルを守る娘に迫るガラシャ。
「お退きっ!!」
鋭いムチが唸り、娘は悲鳴を上げて荷車から転げ落ちた。
「これであんたを守る奴はいなくなったわよ、無駄口が叩けないように痛めつけてやる
わ。」
全裸で磔られた動けないアリエルをムチ打とうと、ガラシャが構えたその時である。
ガルダーンの使者が馬に乗って街道を駆けて来た。
「ガルア将軍っ、ガラシャ将軍っ。帝様からの勅命でありますっ。」
その使者から勅命を聞いた両将軍は、意味ありげに邪笑いを浮べた。
「・・・フフン、帝様も面白い事を思いつかれる。確か、これから行く所は(あいつ)
のテリトリーだよな?」
「そうだったわね、(元ノクターン出身)のあいつのね。ウフフ・・・アリエルめ、祖
国の奴に陵辱されても憎しみなしでいられるかしら。」
アリエルの心の支えはノクターンへの愛国心である。
その深さを知るガルアとガラシャは、恐ろしい企みを思いついたのだった・・・
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