魔戦姫伝説(アンジェラ外伝) 初代アンジェラ編・ノクターンの伝説(5
第15話 魔界の支配者、その名はダーク
原作者えのきさん
私は、ジャローム親子の邪悪な拷問によって正気を失い、闇に堕ちてしまいました。
片方だけになった虚ろな目は何も見えておらず、涎の垂れている口は言葉を発する事ができません。
バール・ダイモンはジャローム親子に、私の外見を損なわぬように痛めつけろと命じていました。
そのため、私の外見(だけ)は元のままでありましたが・・・私の中は・・・無残なほど破壊されて
いました・・・
正気を失った私を酒浸けにし、極上の魔酒を造ろうと準備をしているジャロームが、私の秘部を舐
め続けている息子のゴモラを呼びました。
「おおいっ、いつまで遊んどるんじゃ。早く手伝ってくれ。」
「でへへ〜。だってお姫さまのオマ○コおいしいンだもんね〜♪もうちょっと待っててとうちゃ〜
ん。」
ドラ息子に呆れたジャロームは、ブツブツ文句を言いながら瓶に酒を注いでいます。
あの酒の中に浸けられ、骨の髄まで搾り取られるであろう私・・・
救いの手は永遠に差し伸べられないと絶望した私は、せめてミルミルとラムゼクスや残った人々だ
けでも助かってほしい・・・僅かな正気の中で、そう思っていました。
そんな時です。私の耳に、再び闇の靴音が響いてきたのは・・・
---カツーン・・・カツーン・・・
微かでありますが闇の靴音は、はっきりと私の耳に聞こえてきます。
その靴音の主は如何なる者か?
徐々に大きくなる靴音は、まるで牢獄に響く執行人の靴音のようであり、お姫さまを助けに来てく
れた正義の騎士の足音とは全く違いました。
闇の靴音には、身も凍る恐怖の響きがあったのです。
靴音が近づくたび、恐怖と緊張により私の心臓は激しく鼓動しました。
放心状態だった私の顔に(怯え)が宿り、それを見たゴモラは目をハート型にして悦びました。
「うほっ、お、おれがそんなに怖いのか〜☆その怖がってる顔かわいいのだ。もっと怖がるのだ、
ぐひひ〜♪」
何か勘違いしているゴモラの耳には、恐怖の足音はまったく聞こえていないようです。
靴音は徐々に、だが確実に・・・私の元へと近づき・・・ついに拷問室の前で止まったのです!!
---カツーン・・・カツーン・・・カツンッ。
規則的な音が止み、扉の向こうから恐怖の気配が漂ってきました。
姿は見えなくとも、扉の向こうに誰かが居るのがはっきりとわかります。ただそれを感じる事がで
きるのは私だけであり、鈍感なゴモラや、魔酒造りに勤しんでいるジャロームは、拷問室の前に誰か
が来ているなど気付いていません。
やがて・・・扉がゆっくりと開き、恐怖の人物が姿を現しました!!
---カツン、カツン・・・
歩み寄るその者は、まさに(暗闇の化身)と言うべき男でした。
黒一色の戦闘服に黒いマント。ロングソードを背負った長身の体躯は、幾多の戦いで鍛え抜かれた
鋼の如き逞しさに満ちています。
そして眼光鋭い瞳には、全ての悪人を焼き滅ぼす、地獄の業火が宿っていました。
彼のイメージを例えるなら、(悪を滅ぼす究極の最強悪)と言うべきでしょう。
先程から感じた恐怖の気配は、彼の絶対的強さがもたらす恐怖の気配だったのです。
地獄の業火が燃え盛る瞳は、ただ私だけを見つめていました。他の一切の事を彼は眼中にしていま
せん。
私は迫り来る恐怖に怯え、ゴモラに責められている事も忘れて全身を震わせました。
「あ・・・あう・・・こ、こないで・・・こわい・・・」
私の股間を舐めているゴモラは、真後ろに恐怖の人物が立っている事も知らず、卑しい笑いをあげ
ています。
「で〜っへっへ☆もっと悶えさせてやるんだな〜。もっと怖がらせて・・・んわっ!?」
いきなりゴモラの巨体が宙を舞い、魔酒造りに勤しむジャローム目掛けて飛んで行きました。
「ええ〜っと、魔界ニガヨモギの量はこれくらいで、美少女の愛液を・・・ぬおおっ!?」
振り返ったジャロームにゴモラの巨体がぶつかり、凶悪親子もろとも魔酒の瓶に叩きつけられまし
た。
粉々になって割れる瓶から大量の魔酒が撒き散らされ、床は一面、魔酒の大洪水となったのですが、
そんな騒動にも関わらず、男は燃える瞳で私を見つめています。
そして・・・荘厳にして力強い声で私に尋ねました。
「俺を呼んだのはお前か。」
威圧感の込められた声は、悪人から罪を問いただす地獄の裁判官の声のように響き渡ります。
でも恐怖で萎縮している私は、返答する事ができずガタガタ震えるのみ。
(・・・あ・・・あな・・・た・・・だれ・・・)
私は怯えながら、そう(思い)ました。すると、男は私の心を読み・・・応えたのです。
「俺はお前の求めている者だ。」
「・・・わた・・・もと・・・めている・・・も、もの?」
「俺に名はない、だが人は俺を(闇)・・・ダークと呼ぶ。」
闇・・・ダーク・・・
私はハッとしました。確かに私は呼んだのです、魔界最強の者を求め、闇の力を授けてほしいと祈
りを捧げた。
その呼びかけに応え、彼は・・・ダークは来たのです。
ダークは私のお腹に手を当て、素早く呪文を唱えました。すると・・・お腹の中で蠢いていたバケ
モノミミズが、一瞬のうちに消えてしまったのです。
あのバケモノミミズはどこへ行ったのか?戸惑う私が辺りを見回すと、部屋の隅に丸められたバケ
モノミミズが転がっています。なんとダークは、瞬間移動の術を使ってバケモノミミズを私のお腹の
中から取り出したのでした。
呆気にとられる私の顔を覗き込んだダークは、潰された片目を見て言いました。
「目をやられたか。片目では不自由だろう、代りに俺の目玉をくれてやる。」
そう言うなり、彼は自分の目に指を突っ込み、眼球を取り出して私の潰れた目に埋め込んだのです。
「なにを・・・あ・・・?」
埋め込まれた眼球は速やかに肉体と一体化し、私に視力をもたらしました。
気がつけば、私の手足に打ち付けられていた五寸釘も消滅し、私は拷問の苦しみから解放されてい
ました。私は礼も言えぬまま、失われたダークの片目を見つめます。
「・・・わたしの・・・ために・・・め・・・を・・・」
するとダークは、片目を閉じたまま平然と言いました。
「気にするな。俺の身体は特別製だ、目玉ぐらいすぐ元に戻る。」
最強たる闇の力を持ちながら、それに奢ることなく堂々と振る舞う姿・・・それは王者に相応しい
風格に満ちています。
しかし、突然現れたこのダ−クと名乗る男が如何なる者なのか、私は把握できぬままでした。
本当に最強の者なのか?私が求めていた人物なのか?
裏切りと虚偽に翻弄され、絶望の地獄を味わった私は、求めに応じてくれたダークが偽りなき最強
者なのかを直に確かめたいと思ったのです。
ダークは何も語ろうとしません。圧倒的な闇の存在感を漂わせて佇むのみです・・・
次のページへ
BACK
前のページへ