『魔戦姫伝説』


 魔戦姫伝説「殺害の妖精リザイラ」1
山智

薄暗い室内に男の荒い息使いが満ちていた。
筋骨の隆々とした男が外見上年端も行かぬ少
女の体に覆い被さり、しきりと腰を動かして
いる。
室内に漂う性臭のきつさが、二人の行為の長
さを示しているようだ。
「へへへ、すげえマンコしてやがるぜ。いく
ら突っ込んでもしまりやがる。いや、犯され
るごとによくなって来てるぜ。まさに、男に
犯されるために生まれてきた淫乱だぜ、姫様
はよ」
男は下卑た笑いを浮かべ、己の快楽のためだ
けに少女の膣に肉棒を打ち込みつづける。
「……」
しかし、少女は男の侮蔑など意にも介さず、
平坦で冷めた瞳をしていた。義務以上のもの
のないおなざりな腰の動きで男を快楽に追い
込んでいく。
「くっ、うおっ……」
男は呻きとともに、今日何度目かの精液を少
女の奥にぶちまけた。
少女はそれを感じたが、さしたる感銘もない。
男は少女から体を離すと、どかっとあぐらを
かいた。
この後の作業があるのだ。
そう。くだらぬ作業だ。
少女は気だるげに身を起こすと、男の股座に
可憐な顔を埋め、少女と男の体液に塗れた肉
棒を咥えた。
「ふへへへ、あの何も知らなかったお姫様が
淫売みてえに何も言われずに咥えてやがる」
男は蔑むように言ったが、これも不発に終わ
った。
男の肉棒の始末を終えた少女は男の存在など
気にかけた風もなくベッドに横たわった。
少女の動作には以前と変わらぬ気品が漂って
いる。それが男の肉棒を咥えていようともだ。
下衆な男の陵辱では、少女の魂は微塵も汚す
ことができないのだ。

少女の名はリザイラ。
この国の王女だ。
まだ婚礼には早い時期ながら、その美しさは
遠くの国々まで響いている。
年よりも幼く見える可憐で愛くるしい容貌、
静かな湖面を思わせる深く澄んだ青い瞳、花
弁のような薄紅色の唇、長く扇のような睫毛、
腰まで届く金の髪は繊細で、どのアクセサリ
ーよりも豪奢であった。肌は雪白花のように
白く、絹のように滑らかで光沢があった。リ
ザイラを作るすべての部分が美しいのだ。そ
して、小柄で小作りだが、丸みを帯びた体は
リザイラの愛らしさを助長させるものだった。
気品と高貴さをを持ち、毅然とした態度をし
ていたが、それだけでなく、浮世離れした、
この世のものとは思えない可憐な雰囲気を漂
わせていたのだ。
そのため、リザイラは、『妖精王女』と称さ
れていた。
身分に拘らず人と接し、虫一匹にさえ慈愛を
与える彼女を、万人が愛し、また、彼女も万
人を愛した。
世界中のすべてに祝福さらた人生を、リザイ
ラは過ごすはずだった。
だが、ある日、そんな彼女に不幸がおそいか
かってきた。



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