魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜
白い少女 第4話 パート1
Simon
理由はない
強いてあげるなら、見開かれた瞳があまりにも綺麗だったから
力を込めれば簡単に突き破ってしまえそうで
なのにそれをためらわせる、微妙な弾力
━━くりゅっ……くちゅ……
「
…………!! ……!!!」
滑らかな感触を楽しむように、舌先を滑らせる
声にならない悲鳴が、少女の喉を振るわせる
思い立って、ヴィンは喉にいっぱいにためた唾液を、舌を伝わせて少女の瞳に垂らしこん
だ
━━グチュ……チュ…………ドロリ…
見えなくても、感覚で分かったのだろう
少女の目から涙が溢れ出した
穢れを祓う聖水のように
嬉々としてすすりこむと
━━甘い!?
錯覚なのか、本当に甘いのか
もはやどうでもいいことだった
今まで味わったことのない甘露に、脳髄がとろけていく
ヴィンはただひたすら、心ゆくまで少女の瞳を汚し続けた
「……っ!」
━━カクンッ
突然少女の身体から力が抜けた
呼吸器系がパニックを起こしていたのだろう
うずくまってふるえながら、浅い呼吸を繰り返す
ふわふわのプラチナブロンドから覗く細い首筋と華奢な肩
━━負け犬が勝者に成り上がるために必要なのは、力でも知略でもな
いのよ
息苦しいほどの濃密な空気
額を拭うその腕もまた脂汗に塗れ
どくどくと心臓が早鐘を打つ
━━必要なのはただ
ひとつ
まとわりつく温い風が耳元で囁く
━━あなたに蹂躙され
━━嬲られ
━━貪られる為の え、も、の、よ
俺が、この化け物を……?
━━ちがうわ かわいいウサギ
ちゃんよ
できるのだろうか
━━簡単よ
もしこの弱さが擬態なら
コイツの肩に手を置いた途端に……腕を食いちぎられるかも
━━あらあら
無意識煮に右手が腰の後ろを探る
指先に触れる鞣革の感触
これが俺の牙
血錆の微かに浮いた、両刃のナイ……
━━だめよヴィン
━━クスクスクス
━━とんだ臆病者
「ぅ……ウルセェッ! お、俺はコイツを狩るんだぁ!」
絶叫とともに抜き放たれたナイフが鈍く光る
━━まぁ、大変
━━もう壊れかけてるじゃない
━━大丈夫よ ほら
バンッ!!!
「ヴィン! てめえそこで何してやがる!!!」
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