魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜
白い少女 第47話
Simon
――ドジュキュルルルルルルルルッ!!――――バゴォッ!!
唐突にぶっ飛んできた小柄な影が、さっきまでユウナが立っていた地面を打ち砕
いた
――ゴリュリュッ!!
薙ぎ払った邪腕から衝撃波が放たれ、下がるユウナに喰らいつき――
地を蹴って宙に逃れたユウナに、再びリンスが飛び掛る
「――キャハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハ!!!」
――――ズドンッ!!
ユウナの手刀とリンスの邪腕が激突し、二人を20メートルも弾き飛ばした
――――ドンッ!!
今度はユウナが先を取った――一蹴りで一気に間合いを詰め、至近距離から――
「――バ〜カァ!」
――ブシュルルルッ!!!
――!!
邪腕から噴き出した無数の血槍が、空を絡め取り――
残像を残して飛びずさったユウナの全身が、血の糸を引く
――――ゴッ!!
一文字に振り下ろした腕――衝撃波が大地を噛み裂きながら――
「アハハハハハハハハハハハ!!」
邪腕の一撃が、音の牙を打ち砕いた
「――モットモットアソンデヨォォ!!」
――シュドドドドドッ!!
突き出した腕の先から、どす黒い飛沫が降り注ぎ――避け損ねたユウナの肩が、
白煙を噴き上げる
――シゥゥ…――ザシュ!!
ユウナは腐食を続ける肩の肉を抉り捨てた
「イタイデショ――モットイタクシテアゲル!!」
――ギョギョギョギョギョ!!
邪腕の回転が――音が変わった
――ジャァァァァァ……ン
掠めただけで、何もかもが粉砕されていく
――ドンッ――ドンッ――ドンッ!
――ギジャァァァァァァァァ!!
ユウナの空牙も、邪腕の一閃で引き裂かれ――その余波がユウナの肉を切り裂く
「――キャハハハハハハハハハハハ!!!」
――ドゴォォォォ!!!
衝撃がユウナを弾き飛ばした
「――アハハハハハハハ!!――キャハハハハハ!!」
無造作な一振りが、嵐となってユウナを切り刻む
全身から血を撒き散らし、空牙の連撃で腕の筋肉が弾けながらも、しなやかな脚
が美しい軌跡を描きながら――虚空を咬み裂いた!
――ドシュォォォ!!
「――キャアァァ!?」
渾身の一撃が、瘴気の壁を突き破り――
――ギャリリッ!
邪腕の表面を抉り取っていく
辛うじて弾いたとは言え、数メートルも吹き飛ばされた
「オモチャノ――オモチャノクセニィィィ!!」
一瞬とはいえ、悲鳴を上げた己を恥じたのか――凶眼が剣呑な光を放つ
オモチャは、逃げ惑い、這い蹲い、命乞いをしていればいいのだ!
「言ったはずです 『殺してでも』――と」
凛と立つその姿――
全身を朱に染めながら、その瞳――研ぎ澄まされた気迫は、一点の曇りもなく―
―
だからこそ――
「――オモチャノクセニィィィィッ!!!」
刹那!
――ビシュ――ドシュッ!!!
間合いを無視して、いきなりユウナの肩を貫いたのは――一条の黒鞭
――グシュッ――ブヂュ――ビチグチュミヂッ!
瞬く間に根を生やし――筋肉に、腱に、骨に絡みつき、締め上げ――ビキビキ!
――骨が軋み、ユウナの右手が――――――――――(ガシッ!)
「――キャハハハハハハハハ――――……ッ!?」
――――ギ…チ…――ムチミチ…ビチ――ビヂヂ…ヂヂュボ…ズボォッ!!
眉一筋動かさず――片手で引き抜いた
「――ウ…ソ――ドウシテ?」
肩の肉が大きく爆ぜ、砕けた骨片を覗かせている
尋常でない出血――左腕は最早用を足さない……はず――それなのに
――イタクナイノ?
「――愚かな…」
握りつぶされた鞭が、塵に返る
「この程度で、私を止められるとでも?」
――所詮、紛い物は紛い物……か
――――――!!!!
「――ウアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
完全にぶち切れた!
――シンジャエシンジャエシンジャエシンジャエェェェェェェ!!!!
――シュドドブシュドドドシュドドッ!!!!
数十条の黒鞭が、一瞬でユウナの全身を刺し貫き――
――グジュ!グブヂブヂブヂブヂビシュブヂィィ!!!
――ザマアミロオモチャノオモチャノクセニシネシネシネシネキャハハハハハハ!
!!
肉を骨を内臓を――内側から食い破った!!
「――キャハハハハハハハザマミロザマミロザマミロハハハハハハハハハザマミ
ロザマミロザマミロザマミロハハハシネシネシネシネシネシネハハシネシネシ!!
!!!!!!」
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