魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜
白い少女 第46話
Simon
――みんな――みんな挽肉にされちまった!
――髪の毛から足の先まで――深紅に染めた――ディアブロ(悪魔)――
――一人ずつ――順番に――執拗に――嬉々として――ワライながら――
――乳首を尖らせて――秘裂から小便みたいに淫蜜を垂れ流して――
――脳を劈く狂笑――
「――ア…ア…アアッ――ば…ばけものぉ!!」
「――例え、そうであっても――」
返ってくるはずのない応えに――
「――あなたたちに、そう呼ばれる筋合いはありません」
反射的に、振り向いた瞬間――――女!
――――ドシュッ!!!
途切れて行く意識の片隅で――美しすぎる死天使の影を見た
最期に何を思ったのか――左右に分かれていく顔には、微かな笑みが浮かんでい
た
たった今、手刀の一閃で真っ二つにした男を、一瞥すらせず――
――ゴ…ギッ
顔色一つ変えずに、外れた手首の関節を嵌め直した
手足や髪に泥と乾いた血がこびり付き、どこで調達したのか、あまり似合ってい
ない扇情的なドレスは膝下で布を切り裂いてある
よく見れば、肩や二の腕の、まだ治りきっていない傷が、薄くピンク色の肉を盛
り上がらせている
そして――
「――ナンデ、アタシノオモチャヲトッチャウノ?」
ドロリと濁った目を女に向ける少女
――最後の一つだから、いっぱい遊ぼうと思ってたのに――でも、代わりのオモ
チャが来てくれたなら、それでもいいか――
思っていることが、素直に表情に出る
そんなところは元のまま、だからこそ――
――本当は、もっと耐えるつもりだった
ユウナの目に、苦い悔恨の色が浮かぶ
豚扱いされようが便器と呼ばれようが――それこそ手足の1.2本は覚悟してい
たのだから
だが、あのラムズとかいう男が、リンス様へ囁いた瞬間――理性が弾け飛んでし
まった
その後の記憶は、はっきりしない
これはいつもの事だ
意識を取り戻したのは郊外の無縁墓地――血を失いすぎたこの身体は、再生に半
日もの時を要した
その間もリンス様は……こんな奴等に――!
――――ベキャッ!!
ユウナは足元の男の顔面を、素足で踏み砕いた
脳漿が脛に飛び散り、いっそう苛立ちが募る
――全ては主を護ることのできなかった、不甲斐ない己の所為
怒りに任せて、踏みにじってやる
――だが、こいつらさえいなければ!
「ア〜! ソレ、アタシガヤロウトオモッテタノニ〜!」
悔しそうに口を尖らせる
可愛らしいとさえ言えるその仕草――だがその凶眼が、全てを裏切っている
――許せるわけがない
同じ顔で――同じ声で――同じ仕草で――
――最早それ以上、リンス様を冒涜することは許さない!!
「私の――ユウナの名に掛けて――おまえを認めるわけには参りません!」
「ミトメナイ? キャハハハハハハ!! ミトメナキヤドウスルノ?」
――ヘェェ? アソンデクレルンダァ!!
「いいでしょう、遊んで差し上げます――」
――ミキ…ミキミキビキ!
「――命に代えても――――いえ――」
――ドクドクドクドクッ!!
筋肉が、腱が、心臓が――全身の細胞が燃え上がる
――――――ドクンッ!!!
最後の枷を、意志の力で捻じ伏せる!
「――殺してでも――――リンス様を返して頂きます!!」
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