魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜


 序章.5
Simon


……

…………

「――……ン」

「おはようございます リンス様」
「ユウナぁ おはよう」

ベッドを覗きこんでいたユウナの首に、リンスが腕を絡める

壊れ物を扱うように、ユウナがリンスを抱き上げると、リンスは薄桃の寝間着の
まま、ユウナにぶら下がった
足をぶらぶらさせるのが面白いらしい
頬を摺り寄せて笑う

「いいにおい おなかがすいたな」
「ミートパイと春野菜のスープですよ」
「ユウナがつくってくれたの? うれしい! あたし、ユウナのパイがいちばん
すき」

「リンス様 姫御前から、昨夜使いが参りました」
「……また…なの?」
「…お辛いようでしたら………帰られますか?」


「――…ない…」

「…は?」

「ユウナといっしょなら…いやじゃない」
「リンス様」

胸をうたれたユウナが、リンスを抱き寄せる
素直に身体を預けて、瞳をとじる

「……ん…」

啄むような――くちづけ

「参りましょう リンス様……ユウナは どこまでもお供いたします――たとえ
それが――」

――たとえそれが……呪われた道であっても……

――リンス様が…選ばれた道だから……

――リンス様……が……

……………

……………

……………

……………

――ごめんなさいユウナ…

――怒らないでユウナ…

――泣かないでユウナ…

――悲しまないでユウナ…

……………

……………

――ありがとう……ユウナ……

……………

…………

………


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