魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜


 序章.2
Simon


――バキバキバキィィー!

「ぐはぁぁぁっー!?」


とてつもない横殴りの衝撃が男を少女の上から弾き飛ばし、勢いを殆ど殺さず木の幹に叩きつけた

そのまま途切れそうになる意識を、誰かの声が繋ぎとめた


「――ごめんなさいユウナ やっぱりとめられなかった」

「もうこんなことはおやめください リンス様がこのようなことで傷つかれては…」

「だいじょうぶ ユウナがきてくれたから、もういたくない」


翳む視界の先――薙倒された草の向こうに、今一番遭いたくないモノの姿があった

「や、やめろ…来ないでくれ」

二対の視線が男に向けられる

――俺は馬鹿だ 今のうちに逃げるとか 死んだふりとか

そんなことは無理だとわかってい。
相手は正真正銘のバケモノなのだ

「リンス様、なぜこの男だけを?」

「うん……このひとだけ、わたしのあたまをなでてくれたの」

絶句する気配が伝わってくるが、それ以上に男は混乱していた

「でも、もういいの やっぱりほかのひとといっしょだったから」

――じゃあ、俺は…見逃してもらえるはずだったのか あの程度のことで…

その後自分たちがした行為を思えば…馬鹿馬鹿しくて、笑うこともできない


「じゃあね なまえもしらないけど、あのときうれしかったよ」


少女の右手が、ゆっくりと上がり――


――……リ――

――ギュ…リ――


――許してくれ悪かった 来るなくるなくるな――


――ギュリギュリギュリ……リリ……リリリリ――


――リリリリ…リ…イ…イ…イイ…イイイイィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!


――でんせつみみばけものばけものばけものおうおうおうおんなばけものぉぉ!!!!





「ばいばい♪」





――グジュルルルギュッろろごぼぼぉガリッ!ガリガリリきぃぃ……ひ…ぁ……!!!!
――ぶごごぎゃぁぁぁぐギュウガガッぉがばが…ぁぁおぶリュリュリュリリリュ!!!!





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