荒ぶる欲望の果てに

第五話: 神光寺雅
「なんだ逃がしちゃったじゃないか?」
鼠がぼろ布のをもまとわず、部屋から出てきた。
「ひひひ!やっぱり生娘はいいな!もう二人もやっちまったぜ!ひひひ」
「そうか・・まだあの侍女がいるぞ。あいつもたんまりかわいがっていいんだぜ」
鼠はミルの顔を思い出した、細身だがなかなかの美形だ。
「うひひひひ・・そうかそうか?だけど?逃がしちまったじゃないか」
俺はにやりと笑った。
「大丈夫さこの奥は出口がないだろう?追いつめていけばやがて」
そういうと俺はミルの逃げ去った方向に歩き始める。それほど広い屋敷とも思えない。
奥にきっと・・・
「あいつも俺にくれるって?じゃあお前はどうするんだ?」
俺は歩きながらふふっとわらった。
鼠は不思議そうに俺の顔をのぞいたが
「・・まだ他の女がいるのか?そうだろう?それに違いねえ!それも一番上等なのが・・・」
俺はふたたび、にやりと笑った。
まもなく扉に行き当たる。鍵がかかっている。
「鍵を掛やがった」
俺はちっと舌打ちをする。
鼠は覗き込んで
「これか?・・・わけもないさ」
まさに鼠のようにききっと笑うと、ドアノブをがちゃがちゃやっている。
まだ着ないで持っていたぼろ布から、細い棒を取り出すと鍵穴に差し込んだ。
やがて・・・・
「ほら開いた・・」
「ほお器用なもんだな」
この鼠なかなか使えるな。俺はそう思ってにやりと笑った。
がちゃ
ドアが開く。
「だれもいねえぞ?ここに入ったのは間違いないのか?」
「ああ・・まっすぐ走っていったから間違いはない」
俺は辺りを見回した。さほど広い部屋ではない。
だが、部屋の調度品、絨毯などはここの部屋の主が、あの声の主だと確信させた。
「おい?・・・・こいつは・・・」
鼠が何かを見つけたようだ。部屋の奥にまたドアがあったのだ。
「この奥に隠れたのか?・・・・・」
そこは鍵はかかっていない。俺たちはドアの中に入っていく。
「まさか?・・・ここから外に出れるんじゃないだろうな?」
「だとしたら・・逃げられたかもしれない」
明かりもない狭い部屋だ、ようやく目が慣れてくる。
ぴちゃ・・・何か音がする・・水音のようだが。
奥からうっすらと明かりが見える。この奥になにがあるんだ。
「おい!相棒こいつ見て見ろよ・・・」
鼠がききっといやらしく笑った。
壁に豪華なドレスが掛かっていた。その下には、白い布きれがたたまれていた。
「こいつは・・まだ暖かいぜ・・・・いいにおいがするぜ・・きき」
「下着か?・・・・」
「ちがいない・・・見ろよ・・フリルやらリボンやらいっぱい付いて・・・こいつの中身がお前の目当てか?」
鼠は手に取ったドロワーズを広げて俺に見せた。
「ああ・・」
俺の言葉も震えていた。
「みろよ・・こいつの大事なところも穴あきだ・・少し汚れてるみたいだな・・・」
鼠は鼻を押しつけて、くんくんと嗅いでいる。
いつのまにかたたまれていた下着は床に広げられた。まるで花が咲いたような白いペチコートあちこちにリボンが縫いつけられ、裾にたっぷりとレース飾りの付いた豪華な物だ。
その上に浅黒い鼠が座り込んでセンズリを始めていた。
「おい・・・まだ・・見つけたわけじゃねえんだ・・なにをしてるんだ」
鼠はききっとわらって上機嫌だ。
「いいことを教えてやろう・・・この奥はたぶん泉だ。国のお偉い姫様が使うという清めの泉という場所だ・・・・お前の目当ては姫様なんだろ?」
「清めの泉?キャテイの言っていた清めの儀式をする場所なのか?」
俺は鼠に聞き返した。
「たぶんな・・・いま姫様は・・・すっぽんぽんで清めの儀式の最中だ・・・・そいつをいただけるって訳だ・・・きっきっ」
「清めの泉・・姫がこの奥に・・裸で・・」
俺の声はうわずっていた。壁に掛かっているドレスは山小屋の時とは違うが、散らかった下着はあのときのセレナを思い出させる。
「ちょっとまってな・・・じゃまなさっきのむすめっこは俺があてをするんだろ?・・それに姫様には手をださねえから・・そのかわりこいつで・・抜いてからだ」
鼠はききっと叫ぶと純白のドロワーズを股間に当ててはげしくしごきはじめた。

俺は鼠をそのままにして差し込む光の方向に歩いた。
肌着とは言えさっきまで姫が身につけていた物だ、それがあのおぞましい鼠に汚されるのは、見ていて気持ちのいい物ではない。
だが俺の目的はただ一つだ。手段を選んではいられない。
俺は先に進んだ。その先にはセレナがいるはずだ。


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