雨宿り-セレナ-の受難
第一話:
ノベル:神光寺雅
「まったくついてないぜ・・」
俺はそう呟いた。
せっかく悪徳商人から金をせしめたというのに、仲間と思っていた奴らに裏切られるとは思ってもいなかった。
なんとかここまで逃げてきて、この山小屋に入り込んだのが二日前だ。
猟の時にでも使うのだろう。燃料や非常用の食料があって、俺は飢えをしのげた。
当分はここで傷を癒やして、後はどうしたもんだろうか・・・。
金は奴らに持ち去られたしな・・。
このまま海にでも出て、いっそ海賊にでもなってやろうか。
ここから山を2つ越えたところに小さな港を持った国がある。
そこに行けば伝(つて)があると昔聞いたことがある。
海賊も悪くはないさ
「いまはそれどころじゃないか・・追っ手から逃げるのが先だ。ここにいてしばらくほとぼりを冷まそう・・」
奴らにおわれて着る物もボロボロになった。
誰も見ている訳じゃないから素っ裸になって、干し草をベッドに寝ころんでいる。
やがて、ぽつぽつと雨が降り出した。
「屋根があって良かったぜ、ずぶぬれになったらたまらない」
やけっぱちになって干し草をかぶって、やばてうとうとと眠ってしまった。
しばらく立って・・人の声に目を覚ました。
それも女の声。
「山小屋が近くでよかったです・・いまのうちにドレスを脱いでさもないと風邪をお召しになります・・・」
「・・そうね・・ここなら火をたけそうだし・・雨がやむまでここにいましょうか」
声は二人、どうやら追っ手ではないらしい。だが気づかれて面倒なことにあるのもこまる。
さいわい、干し草は小屋の一番奥にある。大人しくしていれば気づかれずにすむ。
俺は体を硬くして干し草に沈み込んだ。
火打ち石の音がして火がともった。
「ささ・・ぬれたドレスを脱ぎください」
「分かったわ手伝ってミル」
なにをしようと言うんだ?ドレスを脱ぐとかいったな?
俺は女達の会話に聞き耳を立てた。
やがて衣擦れの音がして女が服を脱いでいることが分かる。
誰もいないと思って・・どんな女と言うんだ。
俺は女達の姿を一目見ようと、干し草の間だから少し身を起こして覗き込んだ。
流れるような金髪が目に入った。青いドレスが身体をずり落ちてゆき。白い肌着が現れた。
肌着。そんな物をきた女を初めて見た。
俺の心臓は高鳴り、食い入るように見つめた。
「顔を見せろ・・・」
俺は思わず声が出そうになってあわてた。
「ささセレナ様。火のそばにお寄りください」
「古いですが椅子もございます、お座りになってくださいまし」
「あなたこそずぶぬれではないですか・・」
「姫様は、お輿入れの近い大事な身です、姫様こそ」
姫様?いま姫と言ったな?・・そこにいるのはお姫様なのか?
思わず干し草から飛び出して、確かめたい欲求にとらわれる。
だがいくら女とはいえ相手は二人。うかつなことをして捕まりでもしたら・・
俺は自分を押さえるのに必死だ。
心臓は雷のように高鳴り、欲望がムクムクと股間を膨らませているのだ。
「やみそうにありませんね・・・・」
「ミルあわてなくとも直にやみますよ」
ミルと呼ばれた女が立ち上がった。
「この山を越えれば守護兵の詰め所にも当ります。わたしそこまでいって人を呼んできます・・姫様はここでお待ちくださいすぐに帰って参りますから・・」
「こんな雨だというのに・・・」
「平気ですセレナ様のためなら。少しお待ちください」
やがて元気のいい女は山小屋の戸を開けて雨の中に走っていった。
「おてんばもすぎますねあの子は・・」
残った姫が呟いた。
一人になったのか?姫様が・・・・。
セレナといったな・・・一目見てみたい。
いくら姫様といっても一人ならなにもできまい。
うまくいけば・・・
俺は気づかれないように干し草の中からでた。セレナ姫はこちらに背中を向けている。
足音を忍ばせて姫に近づく。俺の肉棒は手を放しても腹に張り付き。だらだらと我慢汁を流していろ。
だが、小枝を踏んでしまった。ぱきっという音が
「だれ?」
姫が振り返った。
その美しさは例えようもなかった。
きらめく金髪の髪。白い肌、そして透き通るような青い目。
その目が俺に向けられている。
「お・・・殿方が・・・・」
白い肌が真っ青になり。そのまま気を失ってしまった。
「お・・おい」
俺はあわてて、椅子から転げ落ちそうになる身体を支えて抱き上げた。
「気を失ったのか・・・・」
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