愛天使ブランシェ!〜魔法少女リーゼの活躍〜

作:神光寺雅

3
「きゃぁっ!!・・だめえ!!!」

ぬるぴちゃぴちゃぁ・・・・・

あやかしが、リーゼの足をはい上がってくる。暗闇の中で緑色に輝く液体が波のように盛り上がったと思えば、リーゼを包み込む。

「きゃああっ!宝珠!・・わたしを守って〜〜〜!!」

きらっ!ぱああ〜〜〜っ!

再び宝珠が光った。またもあやかしは飛び跳ねるように逃げていく。

「はあはあ・・・助かった」

やっとの思いで、危機を脱したリーゼ。だが迷ってしまって入り口がわからない。

「そうだ・・宝珠」

リーゼは宝珠を 首からはずして手に持った。ぽわっと暖かい光が 、リーゼの心を和ませてくれる。
リーゼは宝珠を握ると、呪文を呟いた。

「宝珠わたしをこの洞窟から出してください、出口へと導いてください・・」

宝珠はまたひときわ明るさを放った。そして、リーゼの手から離れて、先導し始めた。
ゆっくりと導くように飛んでゆく。宝珠が当たりを照らし、暗闇の中に道が見えてくる。

「ありがとう宝珠。なんとかなりそう!」

いままでのおどおどした態度は一変して 、まるでスキップを踏むかのように軽やかに、宝珠の後をついてゆくリーゼ。
でもここは、あやかしたちの洞窟、まだ安心するのは早いのでは?
だが、リーゼはすっかり気分は軽やかで、早くも城にかえって、国王に大冒険を報告しようと考えていたのだ・・。

「あ!なになに〜〜〜??」

突然、足下がなくなった。宝珠さえ気づかぬ、あやかしの罠。リーゼは落とし穴に堕ちてしまった。

「あたたた・・・なになんなの?」

落とし穴は思ったより深くはなかった。だが、リーゼの身長ではとても出られそうもない。
なにより、宝珠とはぐれてしまった。

「どうしよどうしよ・・・・」

リーゼは辺りを見回した。真っ暗でなにも見えない。先ほどまでの気分はどこへやら、またしても不安に駆られて、ぶるぶると震え出す。
いかな、ブランシェの巫女といっても、初陣でしかも頼みの宝珠はどこに行ったかもわからない。震えるのも当然だ。

ぴちゃ・・ぴちゃ・・

「えっ?え?ええええ〜〜」

聞き覚えのある音・・。まさか。そのまさかだった。
さっきまでしつこく迫ってきたあやかしの音?

「うそっ!?・・何でここにいるの?」

暗闇に目が慣れてくると、あの液体状のあやかしが脚をはい回っていた。
しかも、どんどんはい上がってくる。

「い、いやああ〜〜〜!!」

リーゼは再び窮地に堕ちた。今度は無事ではすまないかもしれない。
頼みの宝珠は、行方しれずなのだから。

ずりゅずりゅずりゅ・・・・・

「気持ち悪い〜〜やだやだぁ〜」

太股まである二ーソックスをはい上ってくる、リーゼはしかたなく手で追い払おうとする。
だが、あやかしの一部が縄のように変化して両手に絡みつき、頭上に縛り上げてしまう。

「なに!なにするの!はなして!」

『・・・これで抵抗できまい?・・ずいぶんと手こずらせてくれたもんだ』

「えっ!!・・しゃべった?」

しゃべると言うより、リーゼの頭に直接語りかけてくる。スライムの化け物に知能や発声器官があるとも思えない。・・・とすれば誰かが操っていて、そいつがしゃべっているのか。
リーゼにはそんなことどうでもよかった。何の抵抗もできずに、あやかしが足から太股にはい上がり、そしてそしてもっと危険な部分にまで迫っていたのだから。

「だめ〜!そんなことしちゃだめ!だめ〜〜!!」

巫女の衣装である白のニーソックスは、あやかしが這い回り、ずぶずぶに汚れてしまう。どころか、生地の中にまで入り込んでくる。
それでも生地があれば、魔よけとなって、おぞましい感触はある程度遮られる。
でもでも、もしこれ以上あがってきたら・・。

『おや?おやおや・・靴下はここで終わり?・・この先は・・けけけけっ』

「いやっ!だ〜め〜!」

ぬめぬめのあやかしが、リーゼの絶対領域に達しようとしていた。そこは守りの生地がない。そこにあやかしがふれたら、魔物の毒気にあたり、どうなってしまうのか見当もつかない。まして、まして、その上の・・リーゼの大事な部分を守る小さな下着にふれたら・・。
「だめ〜絶対だめ〜!!」

リーゼの悲鳴が洞窟の中にむなしく響いた。



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